和三盆とは、香川県と徳島県などの四国東部でのみ生産され、昔ながらの製法で作られる高級砂糖。
この貴重な和三盆を使って作る干菓子に欠かせないものといえば、菓子木型です。
『香川讃岐に名人あり』と讃えられる熟練の菓子木型職人・市原吉博さんの木型を使って、和三盆干菓子作りの体験ができる教室が高松市にあります。
その名は『豆花』。教室を訪ねると、代表兼講師の上原あゆみさんが、とびっきりの笑顔で出迎えてくれました。実は上原さんは、菓子木型職人である市原吉博さんの娘さん。
花鳥風月をはじめとした日本の四季や文化がかたどられた美しい和菓子、その和菓子作りの裏方として、江戸時代より伝統を紡いできた菓子木型の素晴らしさを、たくさんの人に知ってもらいたいとの思いから、この教室を誕生させました。
一軒家を改装して作られた教室は、中に入ってみると、伝統工芸と現代アートが調和した印象的な空間です。手掛けたのは、地元香川県出身の美術家・カミイケタクヤさん。部屋全体がキャンバスであり、造形作品でもある見事な空間作品となっています。
ここで、和三盆干菓子や練りきりの体験ができます。
では早速、和三盆干菓子作りに挑戦してみましょう。一見難しそうに見えますが、上原さんの説明を聞くと作り方は驚くほどシンプル。
まずはボウルに入れた和三盆糖に軽く霧吹きで水分を含ませ、ぎゅっと握るようにしながら混ぜ合わせます。
適度な硬さになったら、和三盆をふるいに掛け、上板と下板を重ねた木型に詰めます。和三盆糖はすぐに乾燥してしまうので、乾かないうちに急いで作業するのがコツ。へらで余分な砂糖をそぎ落とします。
へらで軽くたたいてからそっと上板をはずすと、精巧に描かれた干菓子があらわれます。意外と簡単!お子様から大人まで、誰でも手軽に楽しめるのが魅力です。
菓子木型は、四季を表現したものや、キャラクターや動物など、常時10種類程度が用意されおり、好きなものを選んで抜くことができます。1回の体験でできあがる干菓子は12~14個。見目麗しいパステルカラーの和三盆干菓子は、まさに『食べる工芸品』。口に入れるのがもったいないほど!
作った干菓子はその場で、お抹茶と一緒にいただきます。できたての干菓子は、口の中でほろっと崩れ、舌の上ですっと溶けたかと思うと、まろやかな甘さが口の中に広がり、まさに至福の味わい。残りは箱詰めにしてお持ち帰りもできます。こうしたお菓子を目でも舌でも楽しめるのは、精巧に作られた菓子木型あってこそのものなのです。
和三盆体験をした後、希望すれば、すぐそばにある市原吉博さんの工房『木型工房市原』を見学することもできます。『現代の名工』にも選ばれ、黄綬褒章を授与された市原さんの匠の技や手掛けた作品が見られる、またとないチャンスです。
現在、こうした菓子木型を制作する職人は全国でも数人しかおらず、四国では唯一の職人である市原さんの元には、全国各地から問合せがあるほか、遠方から足を運んで木型を買い求めていくお客さんも珍しくありません。
テレビや新聞にも頻繁に出演されるほどの熟練技を持つ職人さんでありながら、ユーモアのセンスも抜群の市原さん。色々な質問にも楽しく答えてくれるので、菓子木型の世界がどんどん身近なものになっていくようです。
樹齢100年ほどの山桜を、約2年ほどかけてしっかり乾燥させてから、ひとつひとつ手彫りされた木型。ショールームには、伝統的なものから現代風のもの、季節の行事にちなんだもの、芸術作品のようなものまで、さまざまな種類が並んでいます。
自宅で和三盆の干菓子を作ってみたい方には、菓子木型、木べら、和三盆、作り方の説明書がセットになった『菓子木型 和三盆セット』も販売しています。
和三盆体験を通じて、和菓子作りの舞台裏で活躍する菓子木型の世界にも、ぜひ注目してみてください。
■豆花
住所/香川県高松市花園町1-9-13
TEL/087-831-3712
開催時間/10:00~17:00
定休日/木曜
駐車場/4台
アクセス/ことでん長尾線花園駅から徒歩5分、JR高徳線栗林駅から徒歩10分
HP/http://www.mamehana-kasikigata.com/
【和三盆型抜き体験・練りきり体験】
人数/10人まで
体験料/各1,000円(材料費込み、抹茶付き)
両方の場合2,000円
所要時間/1時間
予約制(練りきり体験は2日前までに要予約)
瀬戸内Finder編集部
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地元の皆さんからの写真や、在住ライターの記事で発信する、瀬戸内地域の観光情報サイト、「瀬戸内ファインダー」を作る編集部です。 瀬戸内海を囲む兵庫県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県、香川県、徳島県の7県に関わる旬な情報を日々更新しています。 お問い合わせは下記まで Email : staff@setouchifinder.com
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