瀬戸内海の島々は良質な花崗岩などに恵まれ、古くから石の産業が盛んな地域でした。
とりわけ、大坂夏の陣にて灰塵に帰した大坂城の再築に際しては、世界最大級の石垣を築くために瀬戸内海の島々から大量の石が切り出され大坂城へ運ばれました。
岡山県南東部にある離島『前島(まえじま)』も、そうした石垣用の石を産出した島の一つ。
今回は、『大坂城築城残石群』を中心に『前島』の見所をご紹介します!
日本のエーゲ海とも称される『牛窓(うしまど)』の海。
その『牛窓』のすぐ沖合いに位置し、フェリーに乗ってわずか5分で行けるのが『前島』です。
東西に細長い面積約2.4k㎡、周囲10.8kmの離島で、人口は183人です。
『前島』のほぼ中央部にある山の中には、香川県の小豆島と同様にかつて江戸時代初期に大坂城へ運ぶ石を切り出した採石場の跡地が残されています。
途中の山腹までは車道が通じていて、駐車場から約5分ほど坂道を歩いて登ります。
山の中に突如として現れる巨石・巨岩群。これが『大坂城築城残石群』です!
残石群の周囲には遊歩道が整備され、歩いて見学できるようになっています。
巨岩の上に登ると瀬戸内海やそこに浮かぶ島々も望めます。
面積の小さな島とはいえ、海岸から離れたこんな山の中に、大坂城の石垣を切り出した跡が見られるのは驚きです!
岩の上に残る採石場の痕跡。一列に並んだ穴は石を割るために開けた『矢穴』の跡で、何らかの理由で作業が中止され石が切り出されることなく残っています。
大坂城に運ばれず、現地に取り残された残石群も多数見られます。
この採石場は松江藩が管理していた区域で、松江藩主の堀尾家の刻印が彫られた石も残っています。
残石群は山腹の広範囲にわたって点在していますが、標高130mの山頂付近には3階建ての『前島展望台』が設置されています。
ここからは、対岸の牛窓の町並みや瀬戸内海に浮かぶ島々を一望できます!
この展望台は夕陽名所としても知られていて『日本の夕陽百選』にも選定されています。
こちらは前島の西部にある『荒崎』から望むキャベツ畑と『黒島』。先ほどの『前島展望台』からも先端に見えていました。
前島の西部は傾斜の緩い場所を中心に耕作地となっていて、冬季はキャベツ・白菜、夏季にはカボチャなどが栽培されています。
『黒島』の沖には『中ノ小島』などの小さな島々が点々と浮かびますが、干潮のときには砂洲が現れて陸続きになり小豆島の『エンジェルロード』とよく似た『黒島ヴィーナスロード』が見られます!
『黒島ヴィーナスロード』へは、牛窓にあるホテルリマーニの桟橋から干潮の時刻に合わせて送迎ボートが出ていて、実際に砂の道を歩くことができます。
(3月中旬~10月まで運航 大人1名1,944円)
こちらは『前島』の南に浮かぶ『黄島』。やや霞んでいますが奥には『小豆島』も見えています。
『大坂城築城残石群』へ通じる車道の途中に展望広場があり、そこからの眺めです。
ここは冬季には小豆島の島影から朝日が昇り、絶好の朝日名所でもあります!
島内には多くの民宿やペンションがあり、夏場を中心にリゾートや釣り、海水浴や潮干狩りに多くの人が訪れます。
『前島』は別名『緑島』とも呼ばれ、美しい松林や自然林が残り、島全体が『瀬戸内海国立公園』に属します。
牛窓港からわずか5分と気軽に渡れ、大自然や歴史のロマンも体感できる『前島』へ、ぜひ訪れてみてください!
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◇前島フェリー
所在地/岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓5662-4(前島フェリー発着所)
旅客運賃/大人:240円 小人:120円 (※往復料金)
自動車航送運賃/4m以上5m未満:1,360円 など (※往復料金、車種によって料金に変動があります)
http://www.maejima-island.info/
瀬戸内Finderフォトライター 松岡広宣
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松岡 広宣
松岡 広宣/フォトライター 1974年生まれ、兵庫県西宮市出身、西宮市在住。メディアポリス株式会社 代表取締役。 ソーラー発電付きエコキャンピングカー【ソーラーキング号】で全国各地を訪れながら、日本の美しい風景をハイビジョン映像で撮影しています。 できうる限り全国くまなく歩き回って、貴重な日本の自然や風景を映像として後世に残していきたいと考えています。 日本全国を旅していますが、もちろん、地元の瀬戸内も大好きです! 「癒しの国 日本.TV」 ~ 日本全国を「癒しの映像」でバーチャル旅行 http://www.healing-japan.tv/
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