潮待ちの港、上弓削港
愛媛県弓削島、上弓削地区。地元の人々に育てられた花が揺れる、人口約600人のこの静かな集落は、江戸時代( 1600~1867)は参勤交代の潮待ちの港として、明治時代( 1868~1912)以降は多くの航海士や機関士を輩出した船乗りの町として栄えてきたという豊かな歴史があります。
手作りベーグルと自家焙煎珈琲
『Kitchen 313 Kamiyuge(キッチンサンイチサンカミユゲ)』があるのは、そんな上弓削地区の路地裏。築約100年におよぶ蔵をリノベーションした、パンと焼き菓子、珈琲のちいさなお店です。
店内ではご主人の宮畑周平さんが焙煎する珈琲と、奥さまの真紀さんが作る手ごね食パンやベーグル、マフィン、焼き菓子を楽しむことができます。まるで隠れ家をたずねるように、地元はもちろん近隣の島々からも、常連さんたちが訪れます。
古民家が並ぶ、上弓削の路地を散策
「313に着くまでの上弓削の町並みごと楽しんでいただきたい」
そんな周平さんの言葉に誘われて路地をゆっくり歩いてみました。明治時代に建てられたとされる古民家には、今では貴重な、四方約30cmの『平瓦』が張られた外壁を見ることもできます。
もし少し迷ってしまっても、古き時代を旅するようで楽しいかも知れません。足元のちいさな目印を見落とさないように行けば、路地の向こうに『Kitchen 313 Kamiyuge』の看板が見えてきますよ。
一番人気はベーグル
「いらっしゃいませ」、真紀さんのやわらかな声が響きます。一番人気のベーグルは11時の開店と同時に、お客さんが買っていくことも。
「あんまりがんばりすぎないペースで」と、真紀さんはにっこり微笑みパンを焼き上げていきます。
眠っている宝物を探し出すリノベーション
店内はソファ席がひとつ。珈琲とベーグルをいただきながらソファにもたれて見上げた天井の、やわらかな漆黒は実は煤(すす)。周平さんが丁寧に埃を取り除き磨き上げました。もとは台所だったという蔵の、100年に渡る暮らしの中で染め上げられてきた、天然の色です。
味わいあるテクスチャの荒壁も、薄緑色の漆喰を丹念にはがしていったら姿を現したもの。1年かけた改築は「元に戻すリノベーションでした」と語る周平さんと真紀さん。それは眠っていた宝物をそっと掘り起こすような作業だったのかもしれません。
もとは真紀さんのお父様が生まれ育った家だったという『Kitchen 313 Kamiyuge』。
上弓削港から路地裏を訪ねていけば、大切に受け継がれ生まれ変わった古民家で、ドリップ珈琲とベーグルがあなたを待っていますよ。
Kitchen 313 Kamiyuge/キッチンサンイチサンカミユゲ
所在地/愛媛県越智郡上島町弓削上弓削313
営業時間/11:00~15:30
営業日/火、木、土曜
電話/0897-72-9075
P/近隣に無料駐車場有り(4台占有)
※ベーグル160円~、食パン1斤450円、マフィン200円、ブラウニーなどの焼き菓子各種。
※ドリップ珈琲Hot 350円、季節限定ホットチョコレート450円、季節のジュース450円他
http://313.strikingly.com/
https://www.facebook.com/kitchen313Kamiyuge/
■フェリーでのアクセス/因島・家老渡港 ⇄ 上島町・上弓削港
https://www.town.kamijima.lg.jp/site/access/1620.html
■参考文献:
『弓削町誌』
『弓削古民家調査プロジェクト アーカイブス|2012.4-12』
※文中の人口は2016年11月末時点のもの。
■参勤交代:
https://ja.wikipedia.org/wiki/参勤交代
瀬戸内Finder フォトライター
増田 薫
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この記事を取材したフォトライター
増田 薫
愛知県岡崎市出身。ライター/詩人。 詩とエッセイのワークショップ『ほし紡ぎ/https://hoshitsumugi.wordpress.com/』運営。 東京、神奈川での学生/社会人生活を経て、夫と息子、家族3人で四国へ引っ越し10年目になりました。愛媛県の島々を中心に、地元に息づくとっておきのスポットをひとつひとつ丁寧にレポートさせていただきます。 愛媛、素敵なところです。どうぞいらしてくださいね。
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