本州と橋でつながる、周防大島。
今回ご紹介するのは、その架け橋(大島大橋)を見下ろす高台に誕生した『KASAHARA HONEY』。島の養蜂家がひらいた、ハチミツ専門のスイーツ&カフェです。先に申し上げておきます。取材していて、何度も目頭が熱くなりました。
周防大島に『ハチミツカフェ』が誕生!
こちらがその『KASAHARA HONEY』。瀬戸内海と橋を見下ろす高台に2016年にオープンしました。
木製の扉をあけると、ハチの巣を彷彿とさせるディスプレイがお出迎え。周防大島産100%の純粋ハチミツがずらっと並びます。
さっそく珈琲を注文すると、店員さんから「ハチミツはお入れしますか?」と、聞き慣れない返答…
「ハチミツですか?」
「はい、1スプーンは無料ですので、ぜひお試しいただければと思います」
濃い目の珈琲にハチミツをひとさじ。砂糖と違って甘さも気にならず、味がまろやかに。ちょっと恥ずかしいですが、気分でいうと幸せがトッピングされた感じです。
蜜蜂一匹が生涯かけて集めた『ひとさじ』
「このひとさじ(=約4g)が、一匹の蜜蜂が生涯かけて集めるハチミツの量なんです」
そう話すのが、お店のオーナーであり、周防大島で養蜂を営む笠原隆史さん。
笠原さんは2010年に周防大島に移住。養蜂家の道を歩みはじめました。聞きたいことは山のようにあります。
Q どうして周防大島だったの?
「自然のサイクルが感じられる場所がいいなと思ったんです。養蜂は豊かな自然があって、その循環の中に入ってお裾分けしてもらう仕事です。周防大島は山と海が近く、人と自然の距離も近い。すべてが手に届く範囲にあって、それらがつながっていることも意識しやすい。養蜂家になると決意したとき、そうした環境の中でやりたいと思い、周防大島を選びました」
いきなりの壮大な世界観に頭が追いついていきません。もうちょっと詳しく!
「例えば、巣箱を置く場所は山を見て半径2kmに何があるのかを見ます。蜜蜂の活動範囲が巣箱から2kmだからなんですが、山が荒れていたり、人工的に植えられた針葉樹林が多いところは不向きです。また蜜蜂に悪影響を及ぼす農薬を撒く畑の近くも。僕の養蜂は『定置養蜂』といって一度巣箱を置いたら、よっぽどのことがない限り動かしません。なので、毎年毎年、同じ場所で花が咲く環境が大切で、蜜蜂がそのサイクルの中に入ることでそうした環境を維持できたらなと思っているんです」
なるほど!
4gから始まったKASAHARA HONEY
Q やっぱり、蜜蜂は可愛いものですか?
「そこまで感情移入することはないんですが(笑)、ちゃんと生涯をまっとうさせてあげたいと思っています。一つの巣箱のなかには1匹の女王蜂と約3万匹の蜜蜂が暮らしています。女王蜂の寿命は5〜7年くらいで、歳をとると産卵力が落ち採蜜量は減っていきますが、自然なことなので最後まで見届けるようにしています。蜜蜂の一生は驚かれるかもしれませんが、約30日です。その間に集める蜜は4gで、ちょうどティースプーン一杯分です。この4gを大切にしたいと思って、このお店をオープンさせました」
カフェで提供されるものにはすべてハチミツを使用。どうしたらハチミツを美味しく味わってもらえるかをスタッフと試行錯誤する毎日。
「あ、これ、一口舐めてみませんか?」
と取り出したのは、世界のハチミツ。産地はネパール、キルギス、タイ……。
山に木を植える養蜂家がひらいたカフェ
「これらは世界中で自然を守りながら養蜂をしている人のハチミツです。一口食べて感動してしまって、あるだけ買ってきました(笑)。この場所からこうしたハチミツも紹介できたらなと考えているんです。ハチミツを通して、島の環境だったり、世界に思いを馳せられるような場所にしたいんです」
笠原さんは2012年ごろから、荒れた野山を間伐し、島に自生していた木を植える活動を続けています。それも「地域に何か還元したい」と思ったから。取材中、何度込み上げたことか……。
周防大島を訪れたら、ぜひお立ち寄りください。ハチミツの優しい甘さが心に身体に沁みてきます。
KASAHARA HONEY(カサハラハニー)
住所/山口県大島郡周防大島町東三蒲473-1
TEL/0820-74-5283
営業日/Shop:水・木・金曜日、Cafe&Shop:土・日・月曜日
営業時間/10:00〜17:00(L.O.16:30)
定休日/火曜日(祝日は営業)
URL/https://kasahara-honey.net
FB/www.facebook.com/kasaharahoney
瀬戸内Finderフォトライター 藤本雅史
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