そっと静かに流れる時間が愛おしい。お寺の境内にある小さな喫茶店/ろうそく夜(徳島県鳴門市)

奈良時代の733年(天平5年)、行基によって開基されたという高野山真言宗の古刹『八葉山 東林院』。
ここは弘法大師が滞在時に自ら米麦の種を蒔いたという故事から『種蒔大師』とも称されており、その来歴を大切にするお遍路さんが、四国八十八ヶ所霊場の巡礼前に立ち寄る『一番奥之院』としても知られています。

店主が『大切にしていること』を形に

この『八葉山 東林院』の境内に、隠れ家のような小さな喫茶店があると聞き、訪れてみることにしました。
大きなクスノキの下に建てられた木造の小屋とデッキテラスが、不思議なほどお寺の雰囲気に合っています。
『ろうそく夜』と書かれた看板を見ながら扉を開けると、出迎えてくれたのは店主の元木ともよさんでした。

自宅の一部で営業していた『ろうそく夜』が『八葉山 東林院』の境内へ移転したのは2016年3月のこと。
お子さんたちの成長に従い「家族の暮らしがそのままお店」だった日々を変える必要があったといいます。
そこで移転先を探していたところ、旧知の間柄である『八葉山 東林院』の東屋だった場所に決まりました。
縁があったとはいえ、由緒ある寺院の境内で喫茶店を営むとは、それだけで一篇の物語になりそうですね。

「夏至の夜のキャンドルナイトみたいに、ろうそくを囲んだ温もりや距離感が好きなんです」と元木さん。
『ろうそく夜』という少し不思議な屋号は、ふと心に浮かんだイメージが原点にあると教えてくれました。

ここではワークショップや映画の上映のほか、ミュージシャンを招いてイベントをすることもあるそう。
元木さんが大切だと感じることが、そのまま形になっているからこそ、とても居心地がいいのでしょう。

心を込めて手づくりする食事とおやつ

『ろうそく夜』でいただくことができるのは、季節の野菜を中心とした食事とおやつ、お茶とコーヒー。
『今日のお昼ごはん』と『今日のおやつ』は、元木さんが素材を吟味し、心を込めてつくっています。
ランチメニューは基本的に週替りですが、月に一度は『月いちカレーの日』と『月いちパンの日』に。
どちらも人気を呼んでおり、SNSを使ったお知らせを心待ちにしているファンも少なくありません。

「小さなお子さんでも安心して食べられる素朴なおやつを提供したい」という思いを持っている元木さん。
できるだけ卵や牛乳、白砂糖などを使わずに手づくりしているため、ほっとするような優しい味わいです。
この日は『りんごとさつまいものタルト』と『ホットジンジャー』を注文し、ゆっくりといただきました。
子育てをはじめ、いろいろと周囲に助けられた経験から「少しずつでも恩返しをしていきたい、忙しい日常を離れてリラックスしてほしい」という願いが、元木さんの料理やお菓子には込められているといいます。

ちょこんと壁際に据え付けられているのは、落ち着いたワインレッドが美しい四本足の薪ストーブ。
本格的に冷え込みが厳しくなる秋頃から、寒い日には薪を燃やして店内全体を暖めているそうです。
薪ストーブの火が燃える様子を眺めながら考え事をしていると、あっという間に時間が過ぎていきます。

旅の途中、静かに流れる時間を楽しんで

2人掛けの席が4テーブル、つまり、8人のお客さんが入れば満席になってしまう『ろうそく夜』。
居心地の良さを感じるには、一人旅や大切なパートナーや友人との二人旅で訪れるのがぴったり。
手づくりの食事やおやつ、香り高いお茶やコーヒーで、きっと温かくもてなしてもらえるはずです。


ろうそく夜
所在地/徳島県鳴門市大麻町大谷字山田59 東林院内
最寄り駅/JR阿波大谷駅
阿波大谷駅へのアクセス
営業時間/11:00~17:00 火・水・金・土のみ営業
定休日/日曜日、月曜日、木曜日、年末年始
電話/090-2894-6271(※営業時間内のみ通話可能)
https://www.rousokuyo.org/

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

大きな地図を見る>

この記事が役に立ったらいいね!してね

関連キーワード

この記事を取材したフォトライター

重藤 貴志

重藤 貴志

徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

「グルメ」のランキング

「グルメ」の記事はまだまだあります

グルメ一覧

Features

特集

特集一覧
PAGE TOP