画風にこだわらず自由自在に描く画家、香月泰男の世界/香月泰男美術館(山口県長門市)

香月泰男の原点、三隅

山口県長門市の三隅。豊かな自然に恵まれたこの場所が、戦後日本美術史を代表する洋画家、香月泰男の故郷です。「ここが<私の>地球だ」と言って、生涯この地で創作活動を行いました。

黒や黄土色の鈍い色使いが特徴的な『シベリヤ・シリーズ』は、香月の代表作です。第二次世界大戦後に抑留されたシベリヤでの体験がもとになり、生まれました。香月泰男美術館には常設展はなく、毎年3,4回のペースで入れ替わる企画展が開催されています。

自然光の入る展示室

中へ入ると、普通美術館では考えられない光景に驚きました!展示室には窓が並び、ほんのりと外光が入っています。この建物は、建築士である香月の二人の息子さんが、生前耳にした父の思いをかなえたものなのだそう。この日は『画家の食卓』と題し、1950年代以降に描かれた食材を題材にした作品が展示されていました。

香月が復員後、シベリヤ・シリーズを描くまでには10年間の空白があったといいます。その間、野菜や魚、肉など日々の食卓に上る食材を数多く描きました。それは、飢えに苦しんだシベリヤ抑留生活の反動からだったのかもしれません。50年代後半に差し掛かると、そんな食材の絵に徐々に黒や黄土色が混ざるようになります。この二枚の牡蠣の絵からは、その後のシベリヤ・シリーズへと結びついていく画風の変遷が見てとれます。

香月泰男の『おもちゃ』

絵画以外に、香月が創作に没頭していたのが、この『おもちゃ』と呼ばれるオブジェです。60年代に自宅を改装した際の廃材などを利用して作り始めたのだそう。時には散歩途中に拾ったクギやワインの栓なども使いました。「だれからも見捨て去られたものにもう一度生命を与える」そんな言葉を残しています。

とっても楽しそうに演奏中の楽隊!香月は生前、「油絵が片手間で、こちらが本業と言われるようになるかもね」と冗談交じりに話していました。彼が残した100体を超えるおもちゃを見ることが出来るのは、香月泰男美術館だけです。

香月泰男の再現アトリエ

美術館の奥には、アトリエを細部まで再現した部屋があります。壁には自身の絵や写真が貼られ、手前のテーブルには葡萄酒とウイスキー。好きなものに囲まれた空間で創作活動を行う香月の姿が目に浮かぶようですね。

中庭にあるのは、サン・ジュアンの豆の木。シベリヤ抑留中に食べさせられていた豆を持ち帰り、自宅の庭に植えた木の子孫だそう。それを取り囲むように佇む平和な母子の姿やオットセイの親子が印象的でした。

ミュージアムショップでお土産を

今回の企画展に合わせ、食材の絵のポストカードがたくさん並んでいました。もちろん、この他にも香月が手がけた作品やおもちゃをプリントしたポストカードも揃っているので、お気に入りの作品を手元に飾っておけますよ。

美術館へ続く香月ロード

美術館の外には大きな『おもちゃ』が五体あります。画風にこだわらず、三隅で自由な創作を続けた香月泰男の世界に、あなたも触れに来てくださいね。


【おいでませ!山口】
●香月泰男美術館
戦後日本美術史を代表する洋画家。「ここが<私の>地球だ」と言って、生涯故郷三隅を離れることなく人間愛と平和をテーマに創作活動を続けた。
所在地/山口県長門市三隅中226
開館時間/9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日/火曜日(祝日の場合は翌平日が休館)、展示替え期間
入館料/大人500円、小中高生200円、未就学児無料
電話/0837-43-2500
FAX/0837-43-2577
最寄駅/JR美祢線長門市駅より防長バス乗り換え『湯免温泉』バス停下車徒歩2分
湯免温泉駅へのアクセス
ホームページ/https://www.city.nagato.yamaguchi.jp/kazukiyasuo/index.html

瀬戸内Finderフォトライター 武井奈々

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武井 奈々

武井 奈々

武井奈々/フォトライター
大阪生まれ大阪育ち。
大阪、東京、バンクーバーを経て、祖母の家がある山口県へたどり着きました。
どこへ行っても「大阪っぽくない」と言われます。
今は山口の東側、瀬戸内海の小さな町におばあちゃんと二人暮らし。
写真を撮ったり記事を書いたり、種をまいたり海に浮かんだりする毎日。
周防大島に小さな宿を開くつもりで準備中です。
瀬戸内海ってほんとう気持ちのよいところです。

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