サテライトオフィス誘致やアーティスト・イン・レジデンスなどの活動で知られる徳島県の神山町。
独自のまちづくりに定評がある地域ですが、この町にある大人気のピッツァ専門店をご存じですか?
それが地元に住む方々はもちろん、県内外から多くの人々が足しげく通う『Yusan Pizza』です。
店名の由来は徳島の古い風習から
『Yusan Pizza』という店名は、徳島に伝わる古い風習である『遊山』から名づけられました。
昭和中期まで行われていた『遊山』は、子どもたちが野山へ遊びに出掛ける風習で、その際に使われる『遊山箱』という木製のお弁当箱(重箱)は、美しい意匠が施されていたことでも知られています。
そして、ここ『Yusan Pizza』がある丘は、かつて子どもたちが集まる『遊山場』だったそうです。
そんな昔の『遊山場』に建つ『Yusan Pizza』は、ざっと築100年は経っているという本物の古民家。
「立地といい、佇まいといい、とても気に入りました」と関西から移住してきた塩田さん一家が一目惚れした物件ですが、長年放置されていたため、最初はとても人が住める状態ではなかったとのこと。
神山のNPO法人をはじめ、さまざまな協力者の方のおかげで、現在の素敵な雰囲気が実現したそうです。
「小高い丘の上にありますから、石窯でピッツァを焼いたときに出る煙も近所の迷惑になりません」と『Yusan Pizza』のピッツァイオーロ(ピッツァ職人)である塩田ルカさんが教えてくれました。
野菜の味が堪能できる『遊山セット』
ピッツァは定番が5種類、日替わりが3~4種類ですが、店内の黒板にはその日のおすすめのみが登場。
取材した日は『徳島産ちりめんとオーガニックオリーブのピッツァ』『神山産無農薬レモンと木次モッツァレラの塩ピッツァ』『徳島産無添加サルシッチャとオーガニックトマト・木次モッツァレラのピッツァ』そして『干しりんごと玄米甘酒ソースのデザートピッツァ』という4種類の名前が書かれていました。
どのピッツァを焼いていただくのかは、ルカさんにお任せすることにして、とりあえずランチセットの中から、ドリンクと前菜、デザートがついてくる一番ゴージャスな『遊山セット』をお願いすることに。
ルカさんの奥さまである舞さんの手で運ばれてきたのが、オリーブオイルの香り高いこちらの一皿です。
野菜はすべて塩田さんたちが信頼する徳島の農家が、丹精込めて育てたものだけを厳選しているそう。
神山に自然農の農家が増えたこともあり、ほとんどの野菜は地元で賄えるようになったとのことです。
アンチョビーと豆腐のペーストを乗せたパンも、この日は神山の『かまパン&ストア』のものでした。
奥にある水が入っているコップも、神山の杉からつくられた『SHIZQ』という名前の美しい木の器です。
おいしい前菜を夢中で食べている間に、ルカさんからピッツァを焼く準備ができたとのお知らせが!
『Yusan Pizza』のピッツァ生地は、何といっても『スペルト小麦』が使われている点が特長です。
別名『古代小麦』ともいわれる『スペルト小麦』は、広く流通している普通小麦の原種にあたるもの。
最近の研究では、およそ9000年以上も前からヨーロッパで栽培されていたことが証明されています。
「小麦アレルギーも発症しにくいですし、うちのピッツァにはぴったりだと思いました」とルカさん。
手で生地を伸ばして具を乗せた後、420度まで温度を上げた石窯の炉床へピッツァを入れていきます。
ちなみに、この薪も徳島のクヌギやナラといった広葉樹で、よく乾燥した質の良いものだそうです。
時間にして1分と少しで石窯から引き出されたピッツァが、熱々の状態で運ばれてきました!
今回、ルカさんが焼いてくれたのは、この時期ならではの『神山自然農法大根のピッツァ』。
間引き菜と呼ばれる未成熟な大根を余すところなく使った野菜好きにはたまらない一品です。
葉は浅漬けに、根はオリーブオイルと水でじっくりウォーターソテーするというこだわりよう。
それらの具を木次乳業のモッツァレラとプロヴォローネという2種類のチーズでまとめています。
まるで緑の草原の上に真っ白な雪が積もったような美しいピッツァだと思いませんか?
なかなかのサイズでしたが、あっという間に平らげてしまったのは、おいしいピッツァの証拠。
『スペルト小麦』のお米のような香りと、もっちりした食感が、まだ余韻として残っています。
そして、食後に運ばれてきた綺麗なデザートは、舞さんのお手製だという『安納芋のプリン』。
こちらは神山の無農薬レモンを削って入れてあるほか、卵の代わりに寒天と葛粉を使用しています。
神山で自家焙煎に取り組む『豆ちよ』から仕入れるという優しいコーヒーとの相性もぴったりでした。
優しい味の『Yusan Pizza』へ!
前日から手捏ねで生地を仕込む必要があるため、枚数に限りがある『Yusan Pizza』の絶品ピッツァ。
ふらりと足を運んでも食べられない可能性があるため、基本的には数日前からの予約がおすすめです。
「たくさんお届けすることができない分、一つひとつの素材にはこだわっています」とルカさん。
たとえば、日替わりのピッツァは「手に入った具によって当日の朝に決める」というから驚きです。
四季の移り変わりとともに、食べられるピッツァの内容が変わるのも、人気の理由の一つでしょう。
徳島を訪れた際には、ぜひ『Yusan Pizza』に予約を入れ、さまざまなピッツァを堪能してください。
きっとあなたも、いつも笑顔の塩田さん一家がつくりだす豊かな味わいのファンになるはずです。
Yusan Pizza
住所/徳島県名西郡神山町神領字西青井夫359-1
営業時間/11:30〜14:00LO(予約制)
定休日/日曜日、年末年始(その他、不定休あり)
電話/050-2024-4927
https://www.facebook.com/yusan247
瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志
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この記事を取材したフォトライター
重藤 貴志
徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq
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