愛媛県松山市の道後温泉は、三千年の歴史を持つ日本最古の温泉と言われています。『道後温泉本館』『椿の湯』に続く3番目の湯屋『道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)』が、2017年9月に誕生。12月26日には中庭も完成し、グランドオープンを迎えました。
飛鳥時代をイメージした個性的な建築
聖徳太子も訪れたと伝わる道後温泉。そんな歴史を背景に、湯屋は飛鳥時代の建築様式を取り入れています。白壁に朱色の柱が鮮やか。塔屋のてっぺんには道後温泉のシンボルである白鷺の姿も見えますね。
向かいにある『椿の湯』とは中庭を囲む回廊でつながっています。
中庭の植栽は、聖徳太子が来浴時にその美しさを讃えたといわれる『椿の森』を再現したもの。手前に温泉を使った湯の川が流れ、広場の石畳は噴水の演出もあります。憩い、楽しめる中庭は、オープンから数日で早くも市民や観光客の人気の場所になっています。
愛媛の伝統工芸をアートな装いで表現
中へ入ると、愛媛県産ヒノキを基調とした広いエントランス。ここには愛媛の伝統工芸を使った数々のしつらえがあるので、じっくりと見渡してみてくださいね。
まず天井を彩る白いシェードは、手漉き和紙の産地、内子町五十崎(いかざき)出身の作家によるもので、『ゼオライト和紙』という素材でできており、空気を浄化する鉱物が使われているのだそう。
そして正面奥の壁には千年の耐久性があるといわれる和釘を使った木版壁画、左右の浴室入り口には伊予絣の暖簾が掛かっています。
伝統の技を守りながらアートの要素を取り入れた作品たち。見逃せません!
お湯だけではなく、浴室も楽しもう
脱衣所のロッカーも木でできていて、なんだか懐かしい雰囲気です。扉に描かれているのは湯玉。湯が落ちる雫や湧き上がる湯の泡がモチーフといわれる道後温泉のシンボルの一つです。
先ほどのエントランスの木版壁画も、この湯玉を描いているのですよ。
廊下などあちこちの釘隠しも湯玉の形です。探してみてくださいね。
道後温泉の泉質は、無色透明のアルカリ性単純泉。湯治や美容に効果があるといわれます。温度が異なる18 本の源泉を混ぜ合わせて適温にする、全国でも珍しい、加温も加水もしない源泉100%かけ流しです。
浴室の陶板壁画は砥部焼でできています。男子浴室は愛媛の霊峰石鎚山、女子浴室は熟田津(にきたつ)の海。雄大な大自然の風景に気持ちもゆったりします。
洗い場には昔ながらの木の桶と木の腰掛け。温泉の雰囲気をグッと高める素敵なアイテムです。肌触りも温かいのが嬉しいですね。
2階で休憩できるコースもおすすめ!
2階にはお茶とお茶菓子をいただきながら休憩ができる大広間や個室があります。
1階の入浴だけか、2階も使うコースにするかは、入館の際に選びましょう。
60畳もある大広間は、天井の美しいランプシェードと天吊りシェードが目を引きます。大州和紙にギルディング(金属箔)加工を加えた『ギルディング和紙』で、華やかで雅な光を演出します。
大広間の床の間に飾ってある大きな絵図にも注目!
『新・道後温泉界隈之繪圖』と名付けられた絵は、空を舞う白鷺の目線のような道後の風景が描かれています。
実はこの絵の中の道行く人々の中に、愛媛県のイメージアップキャラクター『みきゃん』など10種のキャラクターが隠れているそうです!聖徳太子もいるそうですよ。
個室は全部で5部屋あり、それぞれ異なるテーマの道後温泉にまつわる伝説を、愛媛の伝統工芸と最先端のアートをコラボレーションした作品で表現しています。
例えば写真の彫刻は西条だんじり彫刻で、数が多いことの例えとして源氏物語にも出てくる『伊予の湯桁』をテーマにしています。
他の4部屋も、今治タオル、伊予水引、桜井漆器、筒描染(つつがきぞめ)で、様々な伝説や物語を描いています。
個室はこれ以外に、道後温泉本館にある皇室の専用浴室『又新殿(ゆうしんでん)』を再現した特別浴室もあり、こちらは部屋内に石造りの浴槽があります。家族で過ごすのにいいかもしれませんね。
いかがでしたか?
日本最古の道後温泉の、最新の施設『道後温泉別館 飛鳥乃湯泉』。素晴らしい伝統工芸やアートの素晴らしさに加えて、あちこちに小さな『素敵』や『可愛い』も見つけられますよ。ぜひ足を運んでみてくださいね。
道後温泉別館 飛鳥乃湯泉
住所/ 愛媛県松山市道後湯之町19-22
最寄駅/伊予鉄道市内電車 道後温泉駅
道後温泉駅へのアクセス
休館日/なし(年に1日臨時休館あり)
電話/089-932-1126(道後温泉コンソーシアム)
https://dogo.jp/onsen/asuka
瀬戸内Finderフォトライター 矢野智子
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この記事を取材したフォトライター
矢野 智子
1970年、愛媛県今治市生まれ。松山市在住。 大学時代を京都で過ごした後愛媛に戻り、システムエンジニアとして年の半分以上は県外出張という旅人のような生活を20年近く続けました。 退職後、愛媛を紹介する本を友人と作ったことをきっかけに、自分の「夢」と愛媛の魅力を再発見。地元出版社で編集のイロハを学び、現在は自らを「ことばのデザイナー」と称しフリーで活動中。書く、作る、伝えることに力をそそいでいます。
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