少子高齢化による人口減少が続くなか『持続可能なまちづくり』を大きなテーマとして掲げる神山町。
そこで行われている地域の農業と食文化を次世代へつなげていく取り組みが『Food Hub Project』です。
2017年の3月、神山町にオープンした食堂『かま屋』とパンと食品のお店『かまパン&ストア』は、
『育てる、つくる、食べる、つなぐ』という4つの要素を循環させるための拠点としてつくられました。
神山産の食材にこだわる『かま屋』
『かま屋』を特徵づける最大のポイントは、名実ともに神山町の『町の食堂』であることです。
地域の農業と食文化を『食べて支える』ため、野菜は『Food Hub Project』自社農園のものを中心に、神山町で無農薬・無化学肥料の農業に取り組んでいる『里山の会』から仕入れたものをできる限り使用。
朝・昼・晩それぞれの食事はもちろん、お茶の時間まで、ここ一軒で楽しむことが可能となっています。
居心地の良い店内は、中央に設置されたキッチンの周囲に、ぐるりと客席が配置されているレイアウト。
地元の特産の一つである神山杉でつくられたテーブルや椅子が、温かみのある雰囲気を感じさせます。
この形ならば、調理を担当しているスタッフの方々と、気軽に楽しく言葉を交わすことができますね。
昼ごはんと夜ごはんの提供時間には、このカウンターいっぱいにさまざまな料理が並べられていきます。
『かま屋』で提供される昼ごはんには、ほかでは聞き慣れない『産食率』という数値が存在しています。
「簡単に言えば『かま屋』で使われている食材のうち、どれくらいの割合が神山産なのかを算出した数値です」と教えてくれたのは『Food Hub Project』の食育係・管理栄養士を務める浅羽暁子さん。
その変化は天候や季節と連動しており、低下する時期には乾物を活用するなどの工夫が必要になるそう。
取材にお伺いした日の昼ごはんの主菜は、こっくりとした味わいがじんわり沁みる『すだち鶏の粕煮』。
副菜は『椎茸のフリット ごまマヨソース』や『農園サラダ』など、おいしい野菜を用いたものばかり。
料理長の細井恵子さんによれば「素材ありきでメニューが決まる」点が『かま屋』の特徵なんだとか。
季節ごとに移り変わる材料をどのように生かしていくか、いつもキッチンで試行錯誤しているそうです。
「どの野菜を使うにしても、先入観は持たないようにしています。いろいろ工夫するのも楽しいですよ」
品揃え豊富な『かまパン&ストア』
『かま屋』と同じ敷地内に建てられた『かまパン&ストア』は、神山町のパン屋であり、食料雑貨店。
神山杉をふんだんに使い、徳島の若手建築家が地元の大工さんと一緒につくった美しい木造のお店です。
ここでは『神山の食卓を素敵に楽しく』をテーマに、パンと食料品、各種調味料や加工品などを販売。
開店から1年近くが経過した現在、こちらもすっかり町になくてはならないお店へと成長しています。
海外でよく見かける『グロッサリー(食料雑貨店)』の神山版だけあり、なかなか個性的な品揃えです。
『かま屋』で使われている醤油や味噌などの各種調味料や器、国産小麦粉に『Food Hub Project』特別栽培米の米粉と米ぬかを混ぜて焼成したショートブレッド『カミヤマメイト』も手に入りますよ。
『かまパン&ストア』の名前のとおり、この店の目玉商品は、何といっても毎日でも飽きない自家培養発酵種を中心に使った食パンやあんパン、地粉を使ったカンパーニュや米粉入りのバゲットなどのパン。
そのほか、季節の野菜をふんだんに使った野菜パンや焼き菓子など、いろいろな種類が店頭に並びます。
おいしい『地産地食』を当たり前に
「生産者と直結している『かま屋』の献立は、本当に贅沢なものだと思います」と料理長の細井さん。
いつかは神山町だけではなく、そういう食事が日本中で当たり前になればという夢も教えてくれました。
食育係・管理栄養士の浅羽暁子さんも「ここの取り組みから次世代の農業者を増やしたい」と言います。
「おいしい『地産地食』が日常になれば、自然と地域の『産食率』も上がっていくと考えています」
神山町の食堂『かま屋』とパンと食品のお店『かまパン&ストア』。徳島を旅するときにはぜひ。
かま屋・かまパン&ストア
住所/徳島県名西郡神山町神領北190-1
営業時間/かま屋 【水~金】11:00〜16:00(LO15:00)、土日祝は〜18:00(LO17:00)
かまパン&ストア 9:00~18:00
定休日/月・火曜日(祝日の場合は営業)
電話/かま屋 050-2024-2211
かまパン&ストア 088-676-1077
http://foodhub.co.jp/
瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志
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この記事を取材したフォトライター
重藤 貴志
徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq
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