世界的建築家の平和への揺るぎない意志が生み出した平和を創出する公園/平和記念公園(広島県広島市)

世界最大の旅行口コミサイトで2017年『旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の観光スポット』の3位に選ばれた広島平和記念資料館(博物館)を有する公園が広島にあります。

世界で初めて投下された原子爆弾がもたらした惨禍を今に伝え、核兵器廃絶と世界恒久平和を求めて開設された平和記念公園です。
この平和記念公園は、世界的建築家・丹下健三氏によって設計されました。

原爆死没者慰霊碑の先に見えるもの

平和記念公園の中にある『原爆死没者慰霊碑』も彼の作品です。
2016年、アメリカの現職大統領としてオバマ氏が初めて献花した場所でもあります。
このアーチが作る空間の先に見えるのは『原爆ドーム』です。

これは偶然の産物ではありません。
1949年に行われたコンペで、丹下健三氏は、原爆ドームから平和記念公園に対面する道路に向かって一本引いた軸を中心軸に、慰霊碑と広島平和記念資料館を配置するという提案をしました。

一つの平和記念塔を造ることで完結するような提案がほとんどを占める中、計画の想定外だった原爆ドームを中心に据えて公園を設計したのは丹下健三氏だけでした。

当時は撤去するべきという意見が多数だった原爆ドームを、原子爆弾の悲惨さを伝えるため、人類が二度と原子爆弾を使用しないためにシンボルとして残すべきだと必死に訴え、どんなに反対されてもその信念を曲げなかったといいます。

数十年の時を経て、原爆ドームは世界遺産に認定され、平和記念公園は世界中から最も注目される場所の一つになりました。

資料を読み返すほどに、丹下健三氏の構想力とその先見性、そして平和への執念にただただ感服するばかりです。

この写真は『平和の灯』。
これも丹下健三氏の設計で、これも原爆ドームと広島平和記念資料館を結ぶ軸上にあります。
特徴的なこの形は、手首を合わせ、手のひらを大空に広げた形が表現されているそうです。

平和記念公園にある平和を祈る場所

公園内には原爆ドーム、広島平和記念資料館、原爆死没者慰霊碑のほかにも、平和の願いが込められた碑や記念碑が合わせて35基あります。

こちらはその一つ、『原爆の子の像』です。
別名『千羽鶴の塔』と呼ばれているのは、被曝が原因と思われる白血病にかかり「鶴を千羽折ると病気が治る」と信じて1,300羽以上の鶴を折り続けた末、亡くなった佐々木禎子さん(当時10歳)に由来します。

『原爆の子の像』の周辺には、折り鶴を捧げる折り鶴ブースも設置され、今も全国から寄せられた折り鶴がたむけられています。

こちらは『平和の鐘』。
鐘の表面には『世界は一つ』ということを象徴する、国境のない世界地図がレリーフされています。

鐘を取り囲む池に浮かぶハスは、被爆者たちがハスの葉で火傷の痛みをしのいだという話があり、被爆者たちの霊を慰める意味もあるとか。
この池のハスは毎年、原爆が投下された8月6日頃に美しい花を咲かせるそうです。
私が取材をしている間も、様々な国の人たちが慰霊の気持ちを込めてこの鐘を鳴らしていました。

写真の建物は平和記念公園内にある『国立広島原爆死没者追悼平和祈念館』で、この建物も丹下健三氏の設計によるものです。
ここも平和記念公園に来たら、ぜひ訪れてほしい場所の一つです。
この建物のモニュメントは、原爆投下時刻の8時15分を示し、爆心地の方角に向けられています。

入り口はB1Fにあり、B2Fへはらせん状のスロープを時計と反対の左回りに降りていく造りになっています。
スロープは、原子爆弾が投下された1945年8月6日へと、時を遡ることをイメージしています。

降りた先に現れるのは、こちらの円柱状の部屋。
ここでは爆心地から撮影された焼け野原となった広島市の街が360度のタイル画で表現されています。

B2Fには、被爆者の遺影コーナーもあります。
亡くなった人の数を表す数字だけではわからない、亡くなった人それぞれに人生があったのだという、当たり前の事実に胸がしめつけられる思いになります。

平和記念公園の広さの理由

この写真は広島平和記念資料館側から原爆死没者慰霊碑を撮影したものです。
初めて平和記念公園を訪れた人は、想像以上の広さにきっと驚くのではないでしょうか。

当時は無駄遣いと批判されたともいうこの空間は、遠くない将来、ここに数万人もの人が集まり追悼式が開かれることを想定したためだといいます。

平和記念公園を「平和を創りだす工場にしたい」と願った丹下健三氏の壮大な構想が、この広さに込められていたのでした。

今回、平和記念公園の記事を書こうと思った時に、どういうコンセプトで書こうか、取材するまで迷っていました。

でも久しぶりに公園内をゆっくり歩き、施設を見学し、訪れている人々の様子を観察した時に、やはり平和記念公園の存在意義をしっかりと伝える記事にしなくては強く思いました。

一人の聡明な建築家の平和への強い信念と、たくさんの人々の平和への願いが込められたこの場所は、誰もが一度は訪れておくべき場所の一つであることに違いありません。


平和記念公園
所在地/広島市中区中島町1及び大手町1-10
アクセス/広島電鉄(路面電車)『原爆ドーム前』下車すぐ
原爆ドーム前駅へのアクセス
https://www.hiroshima-navi.or.jp/post/006127.html

瀬戸内Finderフォトライター イソナガアキコ

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イソナガ アキコ

イソナガ アキコ

生まれも育ちも広島という生粋の広島人。母の故郷は瀬戸内に浮かぶ愛媛の小島。子どもの頃、みかん倉庫の屋上に登って眺めた瀬戸の多島美は本当に美しかったなあ。いい歳のオトナになった今、瀬戸内の魅力を発信するフォトライターとして活動できることに喜びを感じる日々。現在は世界遺産宮島から徒歩圏内の自宅でライター業の傍ら、色彩心理学を勉強し、講師としても活動中。 URL/http://isonaga.wixsite.com/ikka

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