お城下の街、愛媛・松山には、江戸時代の頃から桃の節句に親しまれた2大名菓があります。
それが、『りんまん』(写真左)と『醤油餅』(右)。
昭和初期まで家庭ごとに作られた素朴な餅菓子は現在、老舗和菓子店やスーパーなどで売られています。
今回、そんな節句菓子の取材をさせていただいたのは『いち万堂』さん。
『いち万堂』は、松山城に通じる『ロープウェイ街』の少し先にあります。
丁寧にこしらえた絶品和菓子がほぼ100円とあって、地元ファンが多い老舗です。
こちらが『りんまん』。名前も容姿も、愛らしいでしょ?
その名から、江戸時代に朝鮮の林(りん)さんが伝えたと語り草になっています。
上新粉の餅に包まれているのはこし餡。『いち万堂』の餡は、裏ごしなど手間暇を掛けているので、口溶けなめらか。
ほどよい甘さの餡、上新粉の粘り、色付けしたもち米のツブツブ食感が三位一体となって絶妙なハーモニー。
松山地方では、月遅れの4月3日を桃の節句とする風習があり、『りんまん」は3月中旬から4月中旬のシーズン限定。
これは、どの和菓子店も同じなんですよ。
『醤油餅』はこちら。
松山藩主の松平定勝公が桃の節句のころ、家臣に振舞い、節句菓子になったのだとか。上新粉の餅に醤油と生姜をほんのり感じる名菓は、一年を通して店舗に並び、土産の品にも重宝されています。
見た目も作り方もシンプルなだけに、職人技が際立つ『醤油餅』。
歯ごたえを残したまま、歯にくっつかないのが『いち万堂』の売り。砂糖を入れるタイミングなど研究を重ねた賜物です。
醤油も生姜もほんのりと感じる上品な甘さ。今まで食べたことのない餅菓子の食感が癖になる!
店主の上田武夫さんは大阪で修行を積み、48歳のとき、地元松山でお店を構えました。
変わらず26年間、 毎朝4時に出勤し、日課のウォーキングを終えてから作業に入ります。
「儲けんでも地道にコツコツやっていれば生活はできる。お客さんと話すのがぼくの生きがいなんよ」と上田さん。
『りんまん』はちょうど、桜のシーズンに店頭へお目見えします。
素朴で心和む名菓とともに、お話の花も咲かせてみてくださいね。
いち万堂
所在地/松山市西一万町8-7
営業時間/9:00~17:00
定休日/日曜
電話番号/089-946-2260
Instagram @ichimandou
瀬戸内Finderフォトライター ハタノエリ
この記事が役に立ったらいいね!してね
関連キーワード
関連記事
この記事を取材したフォトライター
ハタノ エリ
1978年宮崎県生まれ。愛媛県松山市在住。 新聞記者のちフリーライター。 日常にも、おもてなしの心があふれる愛媛。2年前、この地を離れても忘れられず、2017年春、戻ってきました!訪れたらきっと、大好きになる。そんな確信があるからこそ、誰かの「愛媛行き」を、グッと後押しする記事を書いていきたい。
Hashtags
旬のキーワード