素材と真っ直ぐに向き合って生まれる藍染めの美しさ/一草/ISSO(徳島県徳島市)

交番だった建物を改装したショールーム

徳島市の吉野本町にある八幡神社と徳島市消防団渭北分団の間に、ちょっと不思議な建物があります。
普通の住宅とは異なる真四角のデザイン、白い壁にガラスのサッシ。この形はどこかで見たような…。
看板や暖簾が出ているため、何かのお店だとは思うのですが、どんなものを売っているのでしょうか。

ガラスのサッシを開けて中へ入ってみると、そこは目の覚めるような美しい藍染の製品でいっぱい!
こちらは徳島の伝統産品である『阿波藍』を周知するためにつくられたショールーム『阿波藍 あお』。
「いらっしゃいませ」と迎えてくれたのは、株式会社あおしの代表取締役を務める梶本雄大さんです。
2017年6月のオープン以来、少しずつ『阿波藍』を使った藍染作家の作品を増やしているところとか。
ちなみに、この不思議な建物について質問してみると、もともとは交番(!)だったということです。

徳島の風土に育まれたものだけで染める

現在、ショールーム『阿波藍 あお』にある製品は、藍染工房『一草/ISSO』のものが多いとのこと。
このブランドを主宰しているのは、工房へ案内してくれた梶本雄大さんの母親でもある梶本登基子さん。
藍染絞の第一人者として知られる片野元彦のタペストリーに一目惚れし、藍染作家を目指した方です。
「手織りの良い素材に藍と白のコントラスト。とにかく本当に素晴らしくて、藍染めに憧れましたね」
ご主人の故郷である徳島に移住してすぐに『古庄染工場』の門を叩き、本格的に藍染めの世界に入門。
工房ができるまでは、キッチンに大きなポリバケツを置き、藍甕(あいがめ)の代わりにしていたそう。
晴れて藍染工房『一草/ISSO』を立ち上げたのは、それから6年後の1997年のことだったといいます。

梶本さんがこだわっているのは、自然界の材料のみで藍液をつくる『木灰汁(もくあく)発酵建て』。
徳島県上板町の藍師が昔ながらの方法で仕込む希少な天然青色染料『阿波藍(すくも)』はもちろん、
木灰汁に必要となる灰はカフェ『TOKUSHIMA COFFEE WORKS』のピザを焼く薪窯から出たものを使用。
また『阿波藍(すくも)』の還元酵素を活性化させる栄養には、徳島県那賀町にある那賀酒造がつくる
無加水の熟成純米酒『旭若松』を入れるなど、安心して使うことができる徳島産を選び抜いています。
「国内外から集めた布を徳島の風土で育まれた『阿波藍』で染める。そのやり方で仕事をしています」

藍染めの魅力を伝える『一草/ISSO』

工房の床に置いてあった藍甕の蓋を開けると、そこには独特の香りを放つ『阿波藍』の姿が。
表面に見える藍色の泡は『藍の花』と呼ばれるもので、染めることができる状態のサインでもあります。
「こうしている間にも発酵が進んでいるんですよ」と梶本さん。
自然界の材料のみ、徳島で手に入るものだけの『木灰汁発酵建て』で、試し染めをしていただきました。

小さなテストピースを藍甕に沈めて引き上げると、最初は独特の茶色がかった黒っぽい色に染まります。
その後、見る見るうちに蓼藍の葉を思わせる深い緑色が目立つ藍色へと色合いが変化していきました。
これは化学変化の一種である酸化によるもの。空気に触れることで初めて美しいブルーが生まれるそう。

驚くほどの変化が起こったのは、梶本さんがテストピースを水で洗った瞬間。
あっという間に目の前で魔法のように鮮やかな藍色の布に生まれ変わりました。
「染めては洗い、洗っては染める…。この工程を繰り返すことで色が深くなっていきます」
一面的な青ではなく、どこか複雑な色味を感じるのは、天然染料ならではの力かもしれません。

じっくり時間と手間をかけて生み出される梶本さんの藍染めは、ため息が出るような美しいものばかり。
国内における展示や販売を行っていた『一草/ISSO』ですが、近年では海外での活動も注目されています。
写真はミャンマー東部にあるシャン州の職業訓練校で織られた布地を梶本さんが染めたハンカチーフ。
一般社団法人日亜文化経済交流協会(JAACEE)が実施するプロジェクトに藍染めで参加しているそう。
2015年にはイタリアのミラノで開催された国際博覧会、2016年からはフランスはパリで開催されている
大規模なデザイン見本市『メゾン・エ・オブジェ・パリ』へ作品を出展しているということです。

国や地域、性別や年齢に関係なく、藍染めの美しさは人々の心を魅了すると梶本さんは考えています。
「空や海のように広くて深い藍の魅力は、素材と真っ直ぐに向き合うことで引き出されるものです」
しかし、藍染めの良さが見直される一方で、昔ながらの『阿波藍』の生産量は決して多くはありません。
「藍染めへの注目が集まれば、それだけ『阿波藍』のつくり手も増えるのではないかと期待しています」
『一草/ISSO』では昨年から希望者を対象にした『藍染めワークショップ』を毎週日曜日に開催中です。
梶本さんの指導のもと、自分自身の手で本物の藍染めを体験できるそう。徳島を旅するときにはぜひ。


ISSO/一草
所在地/徳島市下助任町4-18-7 NPOビレッジ吉野本町1階 ホワイトベースとくしま内(※ショールーム)
営業時間/金曜日・土曜日・日曜日・祝日 13:00~17:00
定休日/月曜日~木曜日
(※『藍染めワークショップ』は5名限定で毎週日曜日に開催。申込方法などはウェブサイトを参照してください)
電話/088-656-3155
http://awa-ai.com/

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

大きな地図を見る>

この記事が役に立ったらいいね!してね

関連キーワード

関連記事

この記事を取材したフォトライター

重藤 貴志

重藤 貴志

徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

「アート」のランキング

「アート」の記事はまだまだあります

アート一覧

Features

特集

特集一覧
PAGE TOP