築180年の土蔵は、昭和初期の世界へ行ける休憩所/ギャラリー吉川(愛媛県松山市)

土蔵の中は昭和の風情の憩いの空間

愛媛県松山市の三津地区は、風情ある町並みが今も残る港町。古くからの建築物がたくさん残り、使われず朽ちるに任せている建物も多かったのですが、近年、その景観を活かした町の活性化に、それらを再利用するケースが増えてきました。

『ギャラリー吉川(きっかわ)』も、そうした活動で蘇った建物の一つ。築180年を超える蔵が、休憩所やイベントスペースに使える場所として、息を吹き返したのです。

ここは和菓子などの製造会社『吉川製菓』が倉庫として使っていた蔵で、1834年に描かれた絵図の中に既に存在し、おそらく建てられたのはそれ以前と推測されています。
かつては豪商が所有していたり、文化人が集う場所であったりもしたそうですが、ここ数年傷みが激しくなり、現在の所有者の吉川さんは取り壊しも考えたそうです。でも江戸時代から続く歴史ある蔵なので、修復を決意、みんなが使える場所へと再生しました。

1階の広い土間スペースにはテーブルや椅子、ソファが置かれ、ちょっと立ち寄って休憩する場所として使うことができます。また、作品の展示や音楽の演奏会などを行うためのレンタルスペースとしても利用できるそうです。

太い大黒柱が真ん中に立ち、天井を見上げれば立派な梁が渡り、どっしりとした風格ある姿に歴史の重みを感じます。日の光が入る天窓も風情があります。

2階は畳敷きで、古いタンスや長火鉢、昔懐かしいブラウン管のテレビも展示されています。美しい柄の帯が衣桁に掛けられていたり、隅の方に昭和初期の商品ポスターが貼られていたり、珍しいものをたくさん目にすることができますよ。

製菓会社ならではの道具たちも

1階に置いてある道具にも、興味深いものがたくさんあります。

手前のガラス引き戸の棚にずらりと並んでいるのは、和菓子を作るときに使う木型です。
奥の木の扉の背の低い棚は、よく見ると『国庫課』というプレートが。銀行からの払い下げ品なのだそうですよ。レトロな姿は現代ではとてもおしゃれに見えます。

お菓子の木型を、棚から出して見せてくれました。すごく細かい細工に驚きです!お菓子作りのための道具ですが、まるで芸術作品を見ているよう。これで作られたお菓子ももちろん、芸術作品のようだったのでしょうね。

両手でも抱えきれないような大きなお鍋も置いてあります!小さな子どもなら中に入れるくらいの大きさです。
その奥にある四角い金庫のようないかつい箱は、昭和初期の頃の冷蔵庫。上の段に氷を入れて冷やしていたのです。昔の人の知恵から、現在の家電につながっていくのですね…。
歴史を重ねてきた道具たちは、どれもとても愛おしく感じられます。

棚からぼた餅ならぬ、タンスからお宝!

面白いものを紹介してくれました。

額に入れて飾られているのは『銀ぶら双六』。横書きのタイトルは、右から書かれています。時代を感じますね!昭和4年に作られた双六(すごろく)で、東京銀座の有名店が並び、用品店におもちゃ屋、天ぷら屋、蓄音器レコードなどという文字も見えますよ。

この双六、実は偶然見つかったのだそうです。古いタンスを片付けていたところ、敷いていた紙をふと見ると、この双六!ぜひ大勢の人に見てもらおうと、飾ることにしたのだとか。

裏を見ると、どうやらこれは、月刊『銀座』という雑誌の付録だったようです。雑誌のうたい文句は『世界的モダーン誌』。面白いですね!
隅々まで文字も絵もじっくり見たい双六です。

どっしりと落ち着いた雰囲気の蔵の中は、そこにいるだけでなんとなく気持ちも落ち着いてくるようです。ぜひその建物の様子や昔懐かしい品々を鑑賞して、タイムスリップしたような時間を過ごしてみてくださいね。


ギャラリー吉川
所在地/ 愛媛県松山市三津1丁目2-25
最寄駅/伊予鉄道高浜線 三津駅、または港山駅(港山駅からは『三津の渡し』に乗船)
三津駅へのアクセス
港山駅へのアクセス

開館時間/10:00〜17:00
休館日/不定
駐車場/有り(6台)
料金/休憩での利用は無料、1F貸切1日1,500円、2Fを含む全館貸切1日2,500円
電話/089-951-1236

瀬戸内Finderフォトライター 矢野智子

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矢野 智子

矢野 智子

1970年、愛媛県今治市生まれ。松山市在住。 大学時代を京都で過ごした後愛媛に戻り、システムエンジニアとして年の半分以上は県外出張という旅人のような生活を20年近く続けました。 退職後、愛媛を紹介する本を友人と作ったことをきっかけに、自分の「夢」と愛媛の魅力を再発見。地元出版社で編集のイロハを学び、現在は自らを「ことばのデザイナー」と称しフリーで活動中。書く、作る、伝えることに力をそそいでいます。

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