ノスタルジーとアートが交錯する町。三津の見方、歩き方/三津(愛媛県松山市)

電車を降りたら駅舎も見逃さないで!

愛媛県松山市の西側、三津地区は江戸時代から海上貿易や漁業で栄えた小さな港町。ノスタルジックな町並みの中に新しいショップも増えてきている、今注目のスポットです。
今回は三津の町歩きコースを案内しながら、ここも見逃さないで!というスポットをご紹介します。
まずは伊予鉄道高浜線で三津駅まで行きましょう。松山市駅からなら14分で到着です。

降りた三津駅は、白壁にペパーミントグリーンの板壁という可愛らしい建物。正面エントランスはアーチを描くアールヌーボー風のデザインにステンドグラスも嵌め込まれ、とても凝った造りです。
この駅舎は2009年に完成した3代目。先代駅舎のデザインを継承しています。老朽化による2代目駅舎の取り壊しが決まった際に存続を望む声が多く、それを受けてデザインを継承、木材も一部再利用するなど、再生の対応が取られたそうです。
地域住民の愛で後世にも残された姿を、じっくり鑑賞してくださいね。

新旧がしっくり馴染んで同居する商店街

駅を出て正面の川に架かる橋を渡ると、三津浜商店街の入り口です。入り口周辺にはイタリアンから三津のご当地グルメまで、飲食店が色々ありますので、まずは腹ごしらえをするのもいいですよ。

商店街には昔ながらの洋品店や金物屋さんなど味のある佇まいの店が並ぶ中、新しいカフェ雑貨店なども、町の雰囲気に溶け込みながらオープンしています。

買い物をしたり、ちょっとお茶を飲んだりしながら進みましょう。

かつての『三津のウォール街』?!

商店街を抜けると入り組んだ路地が続きます。気の向くまま、足の向くまま、迷子にならないように路地裏散策へ!
町のところどころに案内看板があり、様々にネーミングされた通り名が書かれています。

こちらは『土壁の残る路地』の一角です。まるで映画のセットか絵の中の世界へ飛び込んでしまったかのよう。和服を着てそぞろ歩きをしたくなるような景色です。
この通り以外にも、白壁の蔵や板壁、格子戸の古民家など、静かに佇む風情ある建物が点在するので、見逃さないで。

一方『旧問屋街』から港の方へ抜けた海のそばにある『旧石崎汽船本社ビル』は、レトロモダンが目を引く建物。服装も和装から洋装へ着替えたくなる雰囲気です。大正13年に竣工し、当時としては画期的な鉄筋コンクリート造りで、外壁はタイル貼り、玄関上部にはバルコニーもあります。
とても素敵なこの建物、登録有形文化財ですが、平成25年に本社が移転するまで現役の石崎汽船本社ビルとして使われていたというから驚きです。

他にも『旧銀行通り』『旧医者町通り』などという通りがあり、江戸から昭和にかけての魅力ある建築も見られます。
かつては銀行が建ち並んでいたり商家や問屋がひしめき合っていたり、松山の『海の玄関口』の三津地区は、地域経済の中心であり文化の最先端を行くような活気あふれる場所だったのです。

『旧医者町通り』の角にある『三津浜図書館』の銘板にも注目!本を開いた形になっています。さりげない遊び心を感じてなんだか嬉しくなります。
カメラを向けるとどこからともなく黒猫が現れました。三津は、町のあちこちで猫に出会います。ポーズをとるかのようにじっとカメラを見つめる猫が多いですよ。

壁が鏡に?壁画の見方を指南

海の近くまで来たので、『三津の渡し』にも乗ることにしましょう。
船乗り場に近いエリアは、実は隠れたアートスポット。まず船乗り場の少し手前の路地の角に、壁画を見ることができます。

この先にある風景が抑えた色使いで描かれ、壁の中から滲み出してきたような不思議な印象です。

そしてさらに、船乗り場まで着いたら一旦通り過ぎて海沿いを西へ進むと、左手にもう一枚、壁画が現れます。

トタンの壁に描かれた、墨絵のような絵。この絵には、実は仕掛けがあります。そのまま海の方を振り向いてください。

そう、描かれているのは、対岸の風景。でも左右が逆です。キャンバスとなっている壁を『鏡』に見立て、正面の風景を映しているという様相なのです。
木々が生い茂る港山、その奥にうっすら見える三角形は興居島、そして右手には小さく赤い灯台も。白黒の絵の中で灯台だけが赤く映えています。静かな景色ですね。

船乗り場から東側へ目をやると、先ほどとはまた正反対とも思えるような、海と空の青に明るい黄色の船が加わった、カラフルで元気な港町の景色が。絵心があればキャンバスに描きたい…と、ふとそんなことを思いました。

三津の渡しで絵の中にあった対岸へ渡り、帰りは伊予鉄道港山駅から電車に乗りましょう。

三津駅から三津の渡しまで、寄り道しなければ1.5キロにも満たない距離です。小さな町ですが、こうして実に様々な表情を見せてくれます。
ぜひゆっくりと、町の景色や建物を観たり、古い店や新しい店、アートな場所にも立ち寄ったり、たくさん歩いてたくさん発見をしてくださいね。


伊予鉄道高浜線 三津駅
三津駅へのアクセス
所在地/ 愛媛県松山市三杉町8-19
電話/089-951-0071
受付時間/6:00〜22:00
http://www.iyotetsu.co.jp/information/station/station.html?t=mitsu

瀬戸内Finderフォトライター 矢野智子

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矢野 智子

矢野 智子

1970年、愛媛県今治市生まれ。松山市在住。 大学時代を京都で過ごした後愛媛に戻り、システムエンジニアとして年の半分以上は県外出張という旅人のような生活を20年近く続けました。 退職後、愛媛を紹介する本を友人と作ったことをきっかけに、自分の「夢」と愛媛の魅力を再発見。地元出版社で編集のイロハを学び、現在は自らを「ことばのデザイナー」と称しフリーで活動中。書く、作る、伝えることに力をそそいでいます。

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