神戸には様々な顔があります。
そのひとつが『ジャズの街神戸』です。
1923年(大正12年)プロのジャズバンドが港町・神戸で結成され、ホテルで演奏したのが、日本のジャズ発祥と言われます。
戦後には、外国人の多く居住した北野町界隈にジャズクラブが生まれ、1981年(昭和56年)からは『神戸ジャズストリート』が開催されてライブをはしごする楽しみ方も定着しました。
街なかで音楽に触れて、もっとジャズを知りたくなったら、ジャズ喫茶を訪れてみてはいかがでしょう。
注意すべきなのは、通常、ジャズ喫茶で提供されるのは生の演奏ではないこと。もっぱら、レコード(またはCD)という二次媒体を通じて録音されたジャズを聞くところなのです。
高価な輸入盤レコードが手に入りにくかった1960年代から70年代始めに隆盛を迎えた日本独特の”文化”とも言われるジャズ喫茶を神戸で探しました。
喫茶店+レコード:茶房Voice
神戸・三宮の繁華街の中心。アニメや鉄道模型、クレーンゲームのお店が集まるビルの2階に、1軒の喫茶店があります。
扉を開けると珈琲の香りと、心地よいジャズのリズム、マスターの笑顔に迎えられる『茶房Voice』。
よかった、怒られなくて。
初心者の私には、ジャズ喫茶って、入りにくいイメージがあったんです。
「普通の喫茶店やからね」とマスターの村田さん。
「レコードが増えていったからジャズ喫茶って呼ばれるだけで」とは言うものの、レーベルなどで分類された約6000枚あるレコードを計画的に、端から順番にかけているそう。
通い続ければ満遍なく名盤を聞けることになりそうです。
オーディオのこだわりを伺うと、
「再現性の高いオーディオを選びたい。スピーカーはアルテックの604B、JBLじゃなくてね。パワーアンプは300Bシングル、プリアンプはサウンドパーツのLIVE1、プレーヤーはトーレンスのTD-126Mark3」とご自慢が尽きません。
えっと…ちょっとマニアック(汗)。
難しいことはよく分からないという人も、スピーカーの前に腰を下ろして、スタッフさんがレコードを替え、そこに針を落とすのを見てみてください。
Voiceには耳の肥えた常連さんも、おいしいミックスジュースを飲みたい観光客も、友達にジャズを紹介したい学生も温かく包んでくれる音が流れています。
音を感じる:ジャズ喫茶jamjam
対照的に、昔ながらの大音量を響かせるスタイルを貫くのが、『ジャズ喫茶jamjam』です。
元町駅にほど近いビルの地下1階にあり、平日の午後にもかかわらず、階段を降りる前に、ジャズが足元から上がってきます。
LP盤で飾られた扉の向こうの店内は、地下とは思えないほど、とにかく広い。
そして、スピーカーから流れる音が爆音に近い。
しかし、耳が痛くなるような所謂クラブの音とは違い、ストレスを一緒に飛ばしてくれるようなすっきりとした大音量です。
jamjamは、私語厳禁の『リスニング席』と、オーディオから少し離れた『会話席』に分けられているので、1人で、または誰かと、気分に合わせて各人の楽しみ方ができます。
実は手作りの『神戸まさよシフォン』ケーキも絶品なんです。
「かぶりつきで、音楽を体で感じてほしい」という池之上マスターは、大音量だからこそ、何度も聞いたことがあるはずのレコードでも新しい発見があると言います。
たしかに、奏者が息を吸う音に気付き、演奏風景が目に浮かぶと、一気に想像力がかきたてられて踊り出したくなりますね。
ハンバーガーショップでも餃子専門店でもBGMにジャズが流れる時代に、それはそれでいいけれど、ちょっと敷居のあるお店もあってもいいとマスターは考えます。
「敷居をまたいだあとが、おもしろいでしょ」
社交場+ジャズ:Mokuba’s Tavern
同様に「勇気をもって、ドアを開けるのがいい。嗜好品に投資して、失敗したっていいじゃない」と語るのは『Mokuba’s Tavern』のマスター、小西さん。
Tavernは英語で居酒屋や軽食堂を指します。
軽食も注文できるレトロなカフェの装いの店内には、午後のひとときをジャズとおしゃべりで彩ろうと、神戸っこが集まってきます。
jamjamに負けずMokubaも、数種類のシフォンケーキを始め、手作りケーキのレベルが本当に高い。
長年神戸でジャズ喫茶を営む小西さんは、ジャズ喫茶の需要が高く、各店が枚数を競うようにレコードを集め、独自色を出していた時をよく知っています。
「今はそんな時代ではない」
その変化を嘆くのではなく、”Provides Jazz Since 1977”(1977年からジャズを提供しています)の言葉通り、決して押し付けることなく良い音楽をかけ続けています。
窓際に座り、表のトアロードをハイヒールで歩く人、ペットカートに乗せられてお散歩するトイプードル、老舗のデリを眺めながら、店内のおしゃべりの向こうに聞こえるジャズに耳を傾けると、豊かに時間が流れていくのが感じられます。
「まあ、好きに聞いていってよ」
ジャズ喫茶を巡り、名店の扉を開けると、大げさに言えば世界が広がります。
神戸でそんな体験をするのもいいものですよ。
JAZZ TOWN KOBE
http://jazztownkobe.jp/
茶房Voice
住所/兵庫県神戸市中央区三宮町2-11センタープラザ西館2F
電話/078-334-3668
最寄駅/JR三ノ宮駅、阪急電鉄神戸三宮駅、阪神電車神戸三宮駅
営業時間/11:00~19:00
定休日/水曜日
http://www.jazz-voice.biz/
ジャズ喫茶jamjam
住所/兵庫県神戸市中央区元町通1-7-2ニューもとビルB1
電話/078-331-0876
最寄駅/JR元町駅、阪神電車元町駅、神戸市営地下鉄旧居留地・大丸前駅
営業時間/12:00~23:00
定休日/第1・第3月曜日
https://www.facebook.com/jamjam.jazz.kobe/
Mokuba’s Tavern(木馬)
住所/兵庫県神戸市中央区北長狭通3-12-14 ザ・ベガ・トアロード1F
電話/078-391-2505
最寄駅/JR元町駅、阪神電車元町駅、阪急電鉄神戸三宮駅
営業時間/12:00~22:00
定休日/水曜日
http://mokuba-kobe.com/
瀬戸内Finderフォトライター 堀まどか
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この記事を取材したフォトライター
堀 まどか
堀 まどか/フォトライター 兵庫県生まれ、在住。実務翻訳、外国人起業家支援、通訳案内士(英語)、そしてフォトライター。 ネットマーケティングの外資系スタートアップで進行管理や顧客サポートを担当。 2011年から、フジサンケイビジネスアイ掲載の週刊コラム『ITビジネス最前線』を英日翻訳しています。 日常の風景や旅先で出会った人の表情など、心に触れるものを写真におさめています。瀬戸内のスポット、暮らしぶり、季節感、食を私目線で切り取ります。 写真ブログ http://riderv328.tumblr.com ツイッター https://twitter.com/Riderv328
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