瀬戸内海に浮かぶ人口わずか230人ほどの島、香川県・粟島。
ここに、国内外のひとが目指す『郵便局』(注:日本郵便とは無関係)があります。
もともとはホンモノの粟島郵便局だった
香川県三豊市の須田港からフェリーで約10分、粟島港に到着。民家がならぶ小道を歩くと、5分ほどでそれらしい建物が見えてきました。
行き先が分からない手紙が各地から届く『漂流郵便局』。入り口にある受付の小窓が、本物の郵便局っぽいですよね。それもそのはず。ここは1991年まで、実際に使われていた元・粟島郵便局なんです。
海岸沿いに移設したのち、空き家になっていた場所がふたたびよみがえったきっかけは2013年の『瀬戸内国際芸術祭』でした。
瀬戸芸の限定アートが常設になった理由
アーティストの久保田沙耶さんが島に滞在し、海岸にある無数の漂流物、この建物と出会い、ひらめいた作品は当初、1カ月間だけ『開局』するはずでした。
ところが、全国から次々に届く手紙に目を通し、ここが必要だと痛感した漂流郵便局局長の中田勝久さんが続けることを決断します。
中田さんは45年間、本物の『粟島郵便局』局長を務め、この建物の所有者でもありました。
建物を無償で提供し、自腹で床などを修繕しながら丸4年。ここに『漂流』してきた手紙は2万8千通(2018年3月現在)を超えます。
「亡くなったひと、昔の恋人、堕胎してしまった子どもへといろんな想いがつづられています。ときにはわたし自身、深い悲しみに引っ張られてしまうこともあります。でも、どこにも落としどころのない気持ちがある限り、ここは必要な場所なんです」と中田さん。
筆者も、声を届けたいけどかなわない天国の祖母に1枚、ハガキ(5枚100円)を書きました。
実際に手紙を書いて投函もできる
手紙を書くテーブルにはティッシュペーパーが。これ、必需品です。行為そのものと、空間のチカラも手伝って書いているうちに涙がこみあげてくるんです。
書いたら、局内の専用ポストに投函。中田さんが印を押したのち、ここに積み上げられている手紙の1枚になります。
閉局時間が近づいても手紙を無言で読み続ける来館者の姿はまるで、巡礼者のようでした。
鳥の鳴き声と、木の葉のこすれる音だけが耳にとどき、淡く光る瀬戸内海のロケーションがあいまって、漂流する気配もなく心の底に沈んでいく圧倒的余韻。
訪れたら忘れられない場所になるはず。笑顔を絶やさない中田さんの、この郵便局への想いにもぜひふれてみてくださいね。
漂流郵便局
住所/香川県三豊市詫間町粟島1317-2
開局時間/13:00〜16:00
開局日/瀬戸芸期間以外は毎月第2、第4土曜日に開局
粟島のご紹介はこちら(三豊市観光交流局)
瀬戸内Finderフォトライター ハタノエリ
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この記事を取材したフォトライター
ハタノ エリ
1978年宮崎県生まれ。愛媛県松山市在住。 新聞記者のちフリーライター。 日常にも、おもてなしの心があふれる愛媛。2年前、この地を離れても忘れられず、2017年春、戻ってきました!訪れたらきっと、大好きになる。そんな確信があるからこそ、誰かの「愛媛行き」を、グッと後押しする記事を書いていきたい。
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