今回は、周防大島の日常風景にまぎれ込む2つの石をご紹介します。いっぷう変わった石とは何なのか?はたまた、この地味な記事を観光メディアに掲載していいのか?おそるおそるスタートです。
道ばたにあるドーム状に組まれた石
はじまりはココ。我が家からほど近い『安下庄(あげのしょう)』のなんてことない道ばたです。
あるのは、集落で大切に管理されているお大師堂です。通常、南向きに置かれるはずのお堂が北を向いており、『北向きさん』とも呼ばれています。たいそうなご利益があると言われ、近隣からの参拝者が多く、いつも誰かが手を合わせています。
『北向きさん』のすぐ隣に、ドーム状に石が組まれているのが分かりますでしょうか。ニョキニョキと立派な木が生えていますね。これ何だと思われますか? 大きな苔玉ではありませんよ。
これは石風呂と言われ、じつは瀬戸内地方に広く伝わっていた古式サウナです。周防大島だけでもかつて40以上あり、いまだ現役のものもあります。
仕組みはこうです。石風呂の内部に薪を組み、火をつけ熱します。十分に熱くなったら、炭とともに薪をかき出し、海藻や薬草を敷き詰めます。適温になったら、中に人間が入り、筵(むしろ)の上で温まります。
一度に入れる人数は限られますので、どうしても入れ替わり立ち替わりになります。湯気をまとって出てきた人はお堂の前でお茶を飲んだり、話をしたり、火照った体を冷まします。そして、また順番がきたら石風呂の中へ。これが島の日常風景でした。
『北向きさん』の本当の名は『石風呂大師』と言います。使われなくなって久しい石風呂ですが、今も地元の人が草を払い、お堂とともに大切に管理されています。
次は、防波堤の端っこに転がっている不思議な石をご紹介します。
防波堤の端っこに転がる丸い石
『神浦(こうのうら)』集落の東の端にあるこちらの岩。岩の手前には弁天様が祀られており、地元の人は『弁天島』と呼び親しんでいます。よく見ると、丸い石が岩の上にぽつんと乗っています。
小さな石に見えますが、弁天島自体が周囲30メートル近くありますので、そこそこの大きさです。それが岩のきわっきわにあり、いつ見てもよく落ちないなと感心すると同時に、何でこんなところにあるんだろう?と考えてしまいます。
人がわざわざ運んだのか、それとも山が噴火した際に降ってきたのか、答えのない禅問答。民話では近くの島にいる天狗が飛ばした鼻くそだと伝わっていたり、現世代には願い事を叶え終わったドラゴンボールだと言われたり、いろんな憶測が飛ぶ石です。
さて、弁天宮の祭神は安産の神で、伝説によれば稀に見る美人だったそうです。神浦に美男美女が多いのはこの弁天宮のおかげだと言われています。
島にはこうした石や岩がたくさんあります。以前ご紹介した4つの岩しかり、どれも地味ながら島の暮らしがそこはかとなく感じられる、味わい深い岩石ばかりです。
いっぷう変わった島の楽しみ方として、たまにはこんな岩石巡りもいいのではないでしょうか?おそるおそるオススメさせていただきます。
●石風呂大師
所在地/山口県大島郡周防大島町西安下庄
●弁天島
所在地/山口県大島郡周防大島町神浦
瀬戸内Finderフォトライター 藤本雅史
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