昭和46年。現在の倉敷市美観地区がまだ観光地ではなく、町の人々の生活の場だったころ、ここ『倉敷珈琲館』は誕生しました。
元砂糖問屋だったという建物は19世紀に建てられたもの。
蔵の内壁に赤レンガを張り、カウンターを作って、1971年に喫茶店として新たな時を歩み始めました。
珈琲の淹れ方には、ペーパードリップやサイフォン、フレンチプレス……とさまざまありますが、ここ『倉敷珈琲館』のホットコーヒーは、豆のふくよかな香味を引き出すネルドリップ。
仕入れた生豆を一つずつ選り分け、精密に焙煎し、一杯ずつ丁寧に抽出されています。
めくるめく魅惑の香味。唯一無二の一杯を
開店と同時に、観光客や常連さんが次々と入店するなか、多くの人がオーダーしたのがこちら。
珈琲にホイップクリームをのせる定番のウインナーコーヒーですが、一味も二味も違います。
まず冷んやりとしたクリーム。アイスか!というくらい単体でおいしい。パクパク食べられます。
そして下の珈琲。この一杯のために焙煎された専用の深煎りブレンドは、ガツンと強く濃厚。
更に一番底には大粒のシュガーが沈んでおり、飲み進めるごとに味わいが変化するのです。
「混ぜないでお召し上がりください」ってそういうことか! 珈琲のミラクルを体感しました。
そしてもう一つの名物が、10月から6月の期間限定で現れる『琥珀の女王』。
リキュールと蜂蜜を加えた水出しコーヒーに、まろやかな生クリームをたっぷり注いだ一杯。
ひと欠片だけ浮かべられた氷は、まるで魔界への窓のよう……。一口でトリコになりますよ。
これら類いまれなき魅惑の珈琲を生み出すのが、創業当初から使用されている焙煎機。
長年使い込まれたが故の色合いが堂々たる風格を醸します。
カウンターの片隅には、創立者に焙煎を伝授したという襟立先生の写真が。
その背景には同じアーチ型のレンガが写っており、店の歴史がそこに宿るかのよう。
往時の倉敷の町を想いながら、静かに珈琲に浸る時間……。なんとも贅沢です。
そうそう、セピア色の店内のどこかに、当時の建築家が残した『DOING NOTHING IS DOING ALL』という言葉が刻まれているんですよ。その解釈はあなた次第。ぜひ探してくださいね。
JR倉敷駅までのアクセスはコチラ倉敷珈琲館
住所/岡山県倉敷市本町4-1
電話/086-424-5516
営業時間/10:00〜17:00
定休日/なし
駐車場/なし
https://www.kurashiki-coffeekan.com
瀬戸内Finder 編集部
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この記事を取材したフォトライター
塚本 明日香
広島県尾道市生まれ。 地元誌の編集を10年間経験したのち、現在は瀬戸内エリアの編集者・ライター・Webディレクターとして活動中。愛用カメラはNikon D610。 大人になってからの趣味は演劇と舞。外が好きでどこでもバイクで行きたがる。夢は犬に囲まれて暮らすこと。
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