徳島のカレー好きが注目する『白草社』
2005年の市町村合併で美馬市の一角となるまで、全国で唯一の郵便番号が「777」で始まる町(!)として知られていた穴吹町。その中心部に徳島のカレー好きから熱い注目を集めるお店ができたという耳寄りな情報をキャッチ!「いったい、どんなカレーだろう?」とワクワクしながらやってきたのが、美しいデザインの看板が目印の『白草社(しらくさしゃ)』です。
『白草社』を営んでいるのは、大阪から移住してきた乾さん夫妻。ファッション誌の編集者をしていたご主人の亮太さんは「いろいろなお店を回って週に3回は食べていました」という無類のカレー好き。何年もカレーのコーナーを担当しているうち、自分でも家で本格的なカレーをつくるようになったそう。徳島の出版社へ転職した後も「いつかはカレーのお店をやってみたい」という夢を捨てきれず、2018年の6月に奥さまの歩希さんと一緒に『白草社』をオープンしました。
個性的な『白草社』の内装は、二人が約1ヵ月かけたDIYの賜物。「とても大変だったので、もう二度とやりたくない」と亮太さんは苦笑いしますが、ずっと放置されていた古いお好み焼き屋さんとは思えない出来栄えです。リノベーションの最中も徳島県内のイベントなどに出店しており、2018年3月には徳島市の『totto79』で1日限りのポップアップショップを展開。何と事前予約だけで完売するほどの人気ぶりでした。
カレーとZINEの組み合わせにも注目
各テーブルには小さなブックスタンドが置かれており、その中には全国各地のZINEが収められています。「昔から“カレーと本”という組み合わせが好きなんです」と亮太さん。ショップカードには“カレーとマガジン”と書かれており、いずれは『白草社』からもZINEを出してみたいと教えてくれました。テーブルごとに異なるZINEの中から好みの一冊を発見する楽しみも、この店の特徴の一つといえそうです。
店内の一番目立つところに貼り出されたメニューを眺めてみます。季節によって使う具材が変わっていく『白草社』のカレー。辛さと具材の異なる2種類のカレーが一度に食べられる“あいがけ”で提供されるため、それぞれの組み合わせから自由に選ぶことができます。今回は秋にぴったりの「チキン×いりこ出汁の豆と鳴門金時」をお願いしました。
『白草社』のカレーに使われているスパイスの一部を特別に出してきてもらいました。左奥からマスタードシード、カルダモン、シナモン。手前の二つは左からフェンネルとクローブ。「全体のベースはトマト、唐辛子、大蒜ですが、よく使うスパイスはこのあたりですね」と亮太さん。そもそも『白草社』をここで開店した理由の一つは、美馬市の特産である青唐辛子の辛さに惚れ込んだからだと言います。
ここでしか食べられない特別なカレー
火を入れたスパイスの美味しそうな香りが漂った後、まもなく運ばれてきたのが、こちらの「チキン×いりこ出汁の豆と鳴門金時」です。ライスを中心にして左側がいりこ出汁の豆と鳴門金時、右側がチキン。奥には紫玉葱のピクルス、蓮根のスパイス炒め、林檎のライタ(ヨーグルトを使ったサラダ)など、3種類の副菜が乗せられています。フォトジェニックな色彩の美しさもさることながら、ただ「辛い」だけではなく「酸っぱい」「苦い」「甘い」など、一皿でいろいろな味を楽しめる点も魅力です。
早く食べたい気持ちを抑えて横から見てみると、大きなパパド(豆粉でつくった薄焼煎餅)の立てられたライスが、カレーの海をゆく帆掛け船のようにも見えます。ワンプレートに盛りつけるスタイルは、スリランカのカレーに似ていますが、あくまでも源流は関西で独自の進化を遂げた“大阪スパイスカレー”だと亮太さん。別々に食べても良し、少しずつ混ぜながら食べても良し。自分の好みで味を組み立てられるのは“あいがけ”ならではの楽しさでしょう。
まずはホロホロに軟らかく煮込まれたチキンから。上から振りかけられたカスリメティの風味と一緒に、それぞれの具材が溶け出したカレーの旨味が口の中いっぱいに広がります。いつまでも辛さが舌に残らず、すっと消えていくため、どんどん次の一口が食べたくなるカレーです。「自分が食べたいものをつくっているだけなので、それほど凝ったことはしていないんですよ。たかがカレーですから」と笑う亮太さん。とはいえ、ここでしか食べることができない“徳島の大阪スパイスカレー”、わざわざ足を伸ばして食べる価値は十分にあります! 徳島を旅するときにはぜひ。
白草社
住所/徳島県美馬市穴吹町穴吹字大平33-1
電話/0883-53-2505
営業時間/11:30~14:00、18:00〜20:30(月曜日はランチのみ、土日祝は11:30〜17:00)※完売次第閉店
定休日/水曜日
駐車場/5台
Instagram @shirakusasha
JR穴吹駅までのアクセスはコチラ
瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志
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この記事を取材したフォトライター
重藤 貴志
徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq
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