コーヒーがつなぐ縁を大切に、人が集まる場を優しい味わいでつくっていく/豆ちよ焙煎所(徳島県名西郡神山町)

神山町に新しくできた『豆ちよ焙煎所』

先進的な取り組みの数々で徳島県の内外から注目を集める神山町。その中心部ともいえる寄井商店街の一角にコーヒー豆の焙煎所がオープンしました。昔ながらの四軒長屋の東隣に位置する店舗は、神山町の地方創生戦略の一つ『民家改修プロジェクト』で改修されたもの。屋根の上に突き出ているのはロシア式の暖房設備「ペチカ」の煙突です。遠くからでもこれが目印になりそうですね。

軒先に取りつけられたアイアンの看板には「豆ちよ焙煎所」という店名が書かれています。よく見ると、周囲にはコーヒー豆や煙突から立ち上る煙が散りばめられており、コーヒー好きにはたまらないデザイン。お店を訪れたときには、看板も忘れずにチェックしてみてください。

看板の下には小さなカウンターがあり、ここから店内の様子を見ることができました。こっそりガラス越しに覗いてみると、大きな瓶に入ったコーヒー豆とコーヒーを淹れるための器具がズラリ。この角度からは見えませんが、入り口の側には“試飲できます。enjoy COFFEE Time”と書かれたボードもあり、初めて来たお客さんでも入りやすい雰囲気が感じられます。

コーヒーから生まれた人の縁を大切に

引き戸を開けて出迎えてくれたのが『豆ちよ焙煎所』の千代田孝子さん。千葉県のいすみ市で自然に寄り添う生活をしていましたが、2011年に徳島へ移住。最初は徳島市内で暮らしていたそうですが、友人の紹介があって神山町の家を借りることに。「当時は神山がそんなに注目されている地域だとは知らなかったんです。とにかく景色が良くて、人が温かいところだなと思っていました」。

千代田さんが自家焙煎をするようになったのは、中古のハンドロースターとの出会いから。いすみ市で友人の引っ越しを手伝ったときに「自由にお持ちください」コーナーで見つけたもの。ずっと家族のためだけに焙煎していましたが、徳島へ移住してから『豆ちよ』の屋号で自家焙煎のコーヒーの提供をスタート。

「試しにマルシェや手作り市に出店してみたら、いろいろな人とのつながりが生まれて。暮らしが大きく変わりました」と千代田さん。しかし、人気が出れば出るほど負担は増大。イベントの前日には一晩中かかって焙煎するなど、小さなハンドロースターで頑張るには限界がきていました。

実際にお店を構えるまでは、いろいろ悩んだという千代田さん。しかし、背中を押してくれたのも、やはり神山の人々でした。町の会合で一度に大きな機械を使って約80杯のコーヒーを淹れた経験が決め手に。「みんな、とても喜んでくれたんですよ。その一杯でリラックスして、また次に向かおうと気持ちが新たになる。あらためてコーヒーっていいなと感じました。そこからお店について真剣に考えるようになったんです」。

念願のお店がオープンしてからは多くの人が訪れます。この日も徳島市の『totto79』店主の小烏真友紀さんをはじめ、いろいろなお客さんが入れ替わり立ち替わり。入り口のベンチで試飲しながらコーヒー豆を選ぶ様子は、神山町の新たな風物詩になりつつあります。

毎日でも飲みたくなる優しい味わい

千代田さんのコーヒー豆とも相性抜群で人気を集めているのが、毎週火曜日に入荷する美味しそうな焼き菓子の数々。こちらは神山で知り合った年上の友人がイギリスから取り寄せた小麦粉でつくっている『Elisabeth』のもの。特に千代田さんのお気に入りは「さっくり田舎のスコーン」。常時6種類ほどが店頭に並びますが、これだけは必ず定番で焼いてもらっているとのことです。

一息ついたところで、千代田さんがコーヒーを淹れてくれました。『豆ちよ焙煎所』のコーヒー豆は5種類。産地も東ティモール、ブラジル、グァテマラ、エチオピアとバラエティーに富んでいます。どれでも試飲させてもらえるため、実際に味わってから購入できるのも嬉しいポイント。それぞれのコーヒー豆が1杯分ずつ小分けになった「飲み比べセット」も人気だとか。

神山工房で特注した粉引のカップに注がれたのは『豆ちよ焙煎所』でもっとも浅煎りのエチオピアのイルガチェフェ・ナチュラル。「毎日飲みたいので、まろやかな味わいになるように焙煎しています」。飲む人のことを第一に考える千代田さんのコーヒーはとても優しく、その人柄を感じさせる温かいものでした。町内では『Yusan Pizza』で飲むことができるほか『かまパン&ストア』でも、コーヒーを練り込んだパンやコーヒー豆の販売が行われています。神山町にオープンした『豆ちよ焙煎所』。徳島を旅するときにはぜひ。


豆ちよ焙煎所
住所/徳島県名西郡神山町神領字北85-3
電話/080-8863-9090
営業時間/12:00~17:00
定休日/月曜日
https://mamechiyo.com

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

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重藤 貴志

重藤 貴志

徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

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