個性的な店主のトークも商品の一つ。『うだつの町並み』の隠れ家カフェ/ワタル珈琲(徳島県美馬市)

小さな看板の道案内でカフェを探して

かつて徳島で栄華を誇った藍商人たちの名残を今に残す『うだつの町並み』。通りを散策していると、その一角に大正時代に建てられたオシャレな洋館を発見しました。
入り口に置かれた黒い看板には“ワタル珈琲”と書かれています。横にあるメニュー表にも気になる品名がちらほら……。さっそく行ってみたいと思います!

通りから見えたモダンな洋館がカフェなのかなと思っていましたが、こちらは『のどけやゲストハウス』のオーナー、柴田義帆さんが代表理事を務める『一般社団法人ハンモサーフィン』が運営するコワーキングスペース。現在は『U.N.S (Udatsu Networkers Studio)』と名づけられ、さまざまな用途に活用されているそうです。
さらに歩みを進め、突き当りの足下に置かれた小さな黒板の矢印の方角へ目を向けると……。

プロパンガスのボンベの横に、またまた小さな黒板を発見。こちらの隠れ家のような木造一軒家が、どうやら目当ての『ワタル珈琲』のようです。この様子では純和風の古民家カフェなのでしょうか。昔ながらの引き戸の向こう側は、いったいどんな空間になっているのか……。いろいろと想像が膨らみます。

店主自身も『ワタル珈琲』の商品の一つ

引き戸を開けると、そこは小さな三和土(たたき)でした。靴を脱いで店内へ入ります。大きなカウンターの向こう側から「いらっしゃいませ」と声をかけてくれたのが、以前は和菓子職人だったという異色の経歴を持つ店主の大北 亘さん。
純和風の古民家カフェという予想に反して、とても良い雰囲気の店内は手づくりのぬくもりにあふれています。ここの内装は大北さん自らDIYでリノベーションされたとのこと。

通りから奥まった一軒家でひっそりと営業しているため、場所がわからない人も出てくるそう。でも、大北さんは「それでいいんです」ときっぱり。「わざわざお店を探し出して、ここまで来てくれるのが嬉しいじゃないですか」とコーヒーを淹れながら話します。
「せっかく見つけてくれたわけですから、お店にいる間は精一杯楽しんでいってもらいたい。その意味では、僕自身も商品の一つなんですよ」。大北さんが目指すのは、主と客というよりも、店を介した友人同士のような関係なのかもしれません。

最初に注文したのは『ワタル珈琲』で「バイン・ミー」と一、二を争う人気の「サバサンド」。トルコはイスタンブールの名物として有名なサンドウィッチです。ギュッとレモンを搾ってから一口食べてみて、その美味しさにびっくり!
大北さんに味の秘訣を聞くと「塩分濃度45パーセントの塩水に13分間。それから一夜干しにした鯖をオリーブオイルでソテーするのが一番です」と教えてくれました。

絶品の呼び声が高い「酒粕チーズケーキ」

バイン・ミーやサバサンドなど、ちょっと変わったメニューを取り入れた理由を尋ねたところ「普通のカフェでは、なかなか人は来てくれませんから」と笑う大北さん。スウィーツでもその路線は健在です。
こちらの一番人気は徳島のタウン誌にも取り上げられた「酒粕のチーズケーキ」。いったい、どんな味わいなのでしょう。

……またまた驚きました。酒粕の芳醇な香りが濃厚なチーズと合わさって見事なバランス! 上にかけられた紅茶の葉「ラクサパンナ」も、発酵つながりで見事なアクセントになっています。練乳と三温糖を加えたふわふわの生クリームも優しい甘さ。これは大人の女性が笑顔を見せる上品なチーズケーキです。
酒粕の風味だけを残してアルコール分だけを飛ばす絶妙な火入れのおかげで、子供が食べても大丈夫。車の運転にも支障はありません。もちろん、丁寧に淹れられたコーヒーとの相性も抜群です。

移転準備が整うまでは、別館『うだつゲストハウスのどけや』の1階で営業していたという『ワタル珈琲』。2018年2月にこの場所でスタートしましたが、まだまだ店は始まったばかりです。
「あまり忙しくなりすぎると、僕自身がつまらなくなる。そうすると、店の売りが一つなくなってしまうんですよ」と笑う大北さん。今は無水カレーのグレードアップやクラシックなプリンも開発中だとか。

楽しい時間にすっかり長居してしまい、お店を出たのは夜の帳が降りる頃でした。行灯風のライトが照らす『うだつの町並み』も風情があります。徳島県西部を旅するときは、隠れ家のような『ワタル珈琲』にぜひ! きっと、大北さんの美味しいフードやスウィーツと面白いトークに夢中になるはずです。


ワタル珈琲
住所/徳島県美馬市脇町大字脇町87
電話/080-6286-8101
営業時間/11:00~18:00(L.O.17:00)
定休日/木曜日、ほか不定休
https://www.facebook.com/watarucoffee

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

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重藤 貴志

重藤 貴志

徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

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