土曜日のみ営業!鳴門の女性職人が手づくりする幻のチーズ/阿波ナチュラルチーズ工房 チーズの灯(徳島県鳴門市)

『阿波ナチュラルチーズ工房 チーズの灯』

総務省統計局が出している2017年のデータを見ると、チーズの消費量が多い都道府県は、1位が神奈川県、2位が埼玉県、3位が東京都。残念ながら徳島県は46位と振るわず……。もしかすると、あまりチーズを食べない土地柄かもしれません。

逆にそんな地域だからこそ、本格的なチーズ工房の存在は貴重なもの。それが2018年5月、鳴門市にオープンした『阿波ナチュラルチーズ工房 チーズの灯』です。

お店の扉を開けると、そこは小さなカウンターとショーケース、レジスターがあるだけの小さな空間。壁に飾られた“FROMAGE”という文字がなければ、ここがチーズを販売するショップとはわからないかも。

それもそのはず。こちらはもともと工房として借りた場所であり、週に一度だけ直接販売を行うお店としてオープンすることにしたのだそう。

ショーケースに入れられた商品を撮影するため、土曜日の開店時間前にお邪魔しましたが、何と約30分前から数組のお客さまが駐車場で待機(!)。5分ほど前から並びはじめ、開店と同時にどの種類のチーズも飛ぶように売れていく様子は圧巻。
それからも、入れ替わり立ち替わりさまざまな世代のお客さまが訪れ、あれよあれよと言う間にチーズは減っていき、この日はお昼を待たずに完売となりました。

女性職人が手づくりする4種類のチーズ

お店が落ち着いたところで、あらためて店主の清水亜希子さんにお話を伺っていきます。

「チーズづくりに興味を持ったきっかけは、中学生の頃に観たドキュメンタリー番組。同じミルクからさまざまな種類の味が異なるチーズができるのが面白いなと思ったんです」。
動物が好きだったこともあり、大学で畜産学を学んだ後は動物病院に勤務。働き続けるなか、本を借りに訪れた図書館で、ふと手に取ったのがチーズづくりの本でした。
「そこで記憶が蘇ってきて、やはりチーズをつくる仕事を目指そうと決意しました」。

一念発起した清水さんは北海道の共働学舎新得農場で4年間にわたってチーズ職人として修業。徳島に戻ってきて、地元である鳴門市で『阿波ナチュラルチーズ工房 チーズの灯』を起業したそうです。

『阿波ナチュラルチーズ工房 チーズの灯』のラインアップは4種類。

軽い酸味がある「フロマージュブラン」はジャムや蜂蜜などを添えてヨーグルトのように食べられるチーズ。
塩を加えていない生乳のみでつくられた「モッツァレラ」はプリプリとした食感と新鮮な味わいが特長。
ちょっと珍しい「牛乳豆腐」は牛乳をホエーで固めたもの。木綿豆腐に似た食感で、洋食だけではなく和食にもぴったりです。
そして、酵母を使って熟成させたクリーミーな「しらさぎ」。いずれも清水さんが心を込めてつくっています。

既に多くのファンがいる『阿波ナチュラルチーズ工房 チーズの灯』。お店の壁にはお客さまの一人が手掛けた「モッツァレラのレシピ」が貼り出されていました。
トマトと合わせ、オリーブオイルと塩・胡椒で味を整える「カプレーゼ」が定番ですが、ここにはそれ以外の12種類ものレシピを掲載。実際に試したものの中から美味しかったメニューが厳選されており、どれもつくってみたくなるものばかり。
清水さんも「こんなにいっぱい試していただけて、とても嬉しかったです」と笑顔で話してくれました。

一番人気は酵母熟成の「しらさぎ」

『阿波ナチュラルチーズ工房 チーズの灯』のチーズは、すべて徳島市国府町にある酪農家『ラックファーム』から仕入れた牛乳で製造。酪農ヘルパーとしても働いている清水さんは、こちらの土づくりからこだわった自給飼料や丁寧な乳牛の世話を知り「ここのフレッシュな牛乳でチーズをつくりたい!」と熱心に頼み込んだそう。

「季節によって味が変わるんです。夏はあっさり、冬は濃厚。その違いも楽しんでもらえれば」。チーズが苦手な人にも胸を張っておすすめできるものを目指しているとのことです。

そして、清水さんの自信作であり、一番人気の「しらさぎ」は、酵母を使って2週間ほど熟成させて完成する酸凝固タイプのチーズ。クリーミーで癖のない味わいは、そのまま食べるのはもちろん、料理に使ってもバッチリの美味しさ。
ワインのお供にたっぷりの蜂蜜と黒胡椒を振ってみましたが、ついつい飲みすぎてしまいました。
週に80個ほど生産されていますが、あっという間に売り切れるのも納得です。

「しらさぎ」というネーミングは吉野川に架かる「しらさぎ大橋」からいただいたもの。
チーズの本場であるヨーロッパでは生産地域の名前をつけた商品が多く、清水さんは「河川が多い徳島の橋の名前をつけよう」と考えたそう。開発中の第二弾、第三弾も、いろいろな橋の名前が登場する予定となっています。
「これからは、ハードをはじめ、セミハードやウォッシュタイプなど、いろいろなチーズをつくっていきたいですね。たとえば、ここ鳴門の地酒を醸す酵母を使ったチーズができたら最高です」。

インターネットでの通信販売などはせず“街のチーズ屋さん”として、週に一度だけオープンするお店と県内数カ所の産直市のみで展開する『阿波ナチュラルチーズ工房 チーズの灯』。
土曜日のみの営業ですが、徳島へ観光で訪れた際にはぜひ。きっと、その美味しさにびっくりするはずです。


阿波ナチュラルチーズ工房 チーズの灯
住所/徳島県鳴門市撫養町木津623-5
電話/080-4039-6723
営業時間/土曜日のみ営業10:00~19:00(売り切れ次第終了)
駐車場/あり

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

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重藤 貴志

重藤 貴志

徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

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