ようこそ!猫たちが迎える徳島初のブックホテルへ/みかん農家の宿 あおとくる&古書ブン(徳島県勝浦郡勝浦町)

勝浦町の『みかん農家の宿 あおとくる』

徳島県の東部、勝浦川の中流域に位置する勝浦町は、四方を山に囲まれた盆地のまち。県内有数のみかんの産地として知られており、秋から冬にかけては、山裾に美しく色づくみかんが風物詩となります。

また、勝浦町といえば、2018年に節目となる第30回を迎えた『ビッグひなまつり』も有名。日本全国から何万体ものひな人形が集まる大イベントは一見の価値があります。

そんな勝浦町の山道を走っていくと、今回の目的地『みかん農家の宿 あおとくる』の看板を発見。
山の中腹を切り拓いた場所に建てられた大きな家は、築100年以上が経過している立派な古民家です。
駐車場に車を停めて納屋の横にある母屋の玄関に立つと、そこにはみかんと同じ鮮やかな橙色に染められた暖簾が掛けられていました。

みかんを収穫する手を止めて出迎えてくれたのは、2016年に東京から貯蔵みかん農家の後継者として移住した石川 翔さん・美緒さん夫妻。

「自分たちの生活環境や仕事のスタイルを考え直していた時期に『移住マッチングフェア』で勝浦町のことを知りました」という翔さんの言葉に「夫婦で同じ仕事をしたいと考えた結果、地方だったら叶えられる気がして」と続ける美緒さん。

農業をベースに自分たちのやりたいことを無理せず進める二人が最初に選んだのがゲストハウス。
繁忙期の11月から3月を除けば、割と時間が自由になるため、世界中から旅人を迎える“みかん農家の宿”をスタートしたそうです。

温かいおもてなしはオーナーの方針?

印象的な宿の名前は、二匹の猫の名前を合わせたもの。写真の右側に写っている方がオーナーの“あお”。左側が2018年2月に急逝した名誉副オーナー兼NECOM(ネコム)セキュリティ担当の“くる”。

石川さん夫妻はあくまでもオーナー代理であり、愛らしい猫たちのお世話係でもあるといいます。

「友達の家に遊びに来た感覚になってもらえれば」という石川さん夫妻の思いのもと、一日に一組だけを受け入れる『みかん農家の宿 あおとくる』。最大4名まで宿泊できるため、ファミリーで訪れるお客さんもいらっしゃるとか。

ゲストルームとして開放されている1階の広間は、気持ちの良い陽射しが室内に降り注ぐ快適な空間です。築100年以上の古民家ですが、気になるバス・トイレなどの水回りは最新式に改装。無料wi-fiも完備されており、何不自由なく大自然のなかで過ごすことができるでしょう。

最大の特徴は、何と言っても温かいおもてなし。四季折々の畑で収穫した野菜を使った食事やバーベキューなど、自分も農家の一員になったような宿泊体験が人気を呼んでいます。

フランス・オーストラリア・タイ・中国・香港・マカオなど、さまざまな国の人たちが訪れたそうですが、特に二人の印象に残っているのはオーストラリアから新婚旅行でやってきたカップル。美緒さんが鶏の唐揚げのつくり方を教えてあげたところ、気になっていた本を後からプレゼントしてくれるなど、とても仲良くなったとか。こうした経験ができるのは、ゲストハウスを経営する醍醐味だと石川さん夫妻は教えてくれました。

予約制古書店『古書ブン』にもぜひ!

2018年8月31日『みかん農家の宿 あおとくる』にオープンしたのが『古書ブン』です。
香川県高松市の『なタ書』に触発されて生まれた予約制の古書店で、店長は猫の“ブン”が務めています。2018年の夏には栽培している無農薬のすだち1キロと書籍5冊を交換するという企画で話題を呼びました。

「とにかく二人とも本が好きなので、こんな企画も面白いかなと思って」と翔さん。ほぼTwitterのみの告知でしたが、北海道から東京、大阪、徳島などから約100冊が届いたそう。美緒さんも「お会いしたことのない方々ばかりでしたが、お送りいただいた本から人柄を想像するのも楽しかったです」と笑顔で話してくれました。

土間の壁面が本棚になっている『古書ブン』では、猫・食・自然・農業・アウトドア・旅・物語・アート・デザインといったジャンルからセレクトされた本が並びます。

嬉しいのは勝浦流イタリアンカフェ『Salotto』から仕入れたコーヒーや自家製の梅シロップでつくる梅ジュース、上勝晩茶のほか、3種のナッツとごまの焼き餅など、美味しいドリンクやおやつも注文できるところ。
また、一角には全国各地の浜辺に漂着した陶器やガラスの欠片からつくるハンドメイドの美しいアクセサリーも並んでいます。

予約制の古書店ですから、誰にも邪魔されることなく、ゆっくり落ち着いて自分だけの一冊を選ぶことができますよ。

そして『みかん農家の宿 あおとくる』は、2003年に伊藤洋志氏が設立したセミプロ集団『全国床張り協会』の徳島支部でもあります。

せっかく憧れの古民家に移住したものの、しばらく空き家だったこともあり、母屋の傷みは相当なレベルに達していました。そんなとき、自分たちで床を張る技術を習得するために参加した『全国床張り協会』の床張り合宿は本当に楽しかったとか。

「全国的に空き家は増えていますが、自分たちで床を張る技術を習得すれば、いろいろな家具もつくれるようになりますよ」と翔さん。実際に『みかん農家の宿 あおとくる』の床も、畳を剥がして二泊三日の床貼り合宿からスタートし、二人でコツコツと作業を続けて完成! ここに泊まったときは、DIYについての話も盛り上がりそう。

「長く泊まっていただけると嬉しいですね。それだけ仲良くなれますから」と美緒さん。二匹の猫たちが迎える徳島初のブックホテル、ぜひ宿泊してみてください。心温まるおもてなしが受けられます。


みかん農家の宿 あおとくる&古書ブン
住所/徳島県勝浦郡勝浦町三溪林25
チェックイン16:00 チェックアウト11:00
電話/090-5525-6299
営業時間/要問い合わせ(※11月~3月までは繁忙期)
宿泊/1泊・1名8,000円(夕食・ワンドリンク付、朝食付)
https://aotokuru.com
予約サイト https://www.airbnb.jp/rooms/23046615

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

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重藤 貴志

重藤 貴志

徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

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