神山産クラフトビールで生み出す新たなつながりの場/KAMIYAMA BEER(徳島県名西郡神山町)

里山の一角に佇む『KAMIYAMA BEER』

徳島県の北東部、鮎喰川の上流域に位置する神山町。
都会のIT企業が数多くサテライトオフィスを設置するこの町はまた、県外からの移住者が魅力的なお店を次々とオープンする注目の地域でもあります。

人々が疲れを癒やす『神山温泉』から見える里山の一角に、いつの間にか新しい建物が建っていました。

ゆっくり歩いて近づいてみると、そこは壁一面に6メートルを超える巨大なアートが描かれた木造2階建ての建物。小さな看板には“KAMIYAMA BEER”と書かれていました。

ここはオランダから移住してきたご夫婦が、神山の人々とともにつくった小さなブリュワリー。オリジナルのクラフトビールを介して新たなつながりを生み出していく、地元はもちろん、観光客からも注目を集めつつある話題のスポットの一つです。

ここ『KAMIYAMA BEER』を運営しているのは、スウィーニー・マヌスさんとあべさやかさん。

黒ビールとパブの文化で知られるアイルランド出身のマヌスさんは、映像作家としてアーティストや企業などのプロモーション映像を多数制作。国連の仕事で世界各地を旅してきたキャリアの持ち主です。
奥さまのさやかさんは、絵画やインスタレーションなどを専門とする気鋭のアーティスト。『KAMIYAMA BEER』の壁に描かれた巨大なアートも彼女の作品です。

ずっとオランダのアムステルダムで暮らしていた二人が徳島県の神山町と接点を持ったのは、2013年の『アーティスト・イン・レジデンス』がきっかけ。以来、この町の「やったらええんちゃう」という心意気に惚れ込み、何度も足を運ぶようになったといいます。

神山という土地に根ざしたビールを

アムステルダムでビールの自家醸造をしていたマヌスさんが「神山町で地域の特色があるクラフトビールづくりを始めた」といえば、何の不思議もないように聞こえるかもしれません。しかし、オープンまでは山あり谷ありの険しい道の連続でした。

「2018年の4月に施行される改正酒造法でマイクロブリュワリーの開業は難しくなると聞いて。何もかも急ピッチで進めなければなりませんでした」とさやかさん。すだちと柚子の畑を切り拓いた場所に建物を建て、電気や水道を引き、カナダより醸造タンクを輸入。山のような書類と格闘し、クラウドファンディングで資金を調達するなど、ゼロからのスタートは想像を絶する苦労があったそう。

さやかさんは「周囲の人々が手を差し伸べてくれる神山だからこそ、何とか形になったんだと思います」とオープンに至るまでの怒涛の日々を振り返ります。その甲斐あって、明るい陽射しが降り注ぐタップルームは、とても居心地の良い空間になりました。

木造2階建ての『KAMIYAMA BEER』のコンセプトをデザインしたのは、二人の友人であるオランダ人のアーティストたち。実際の建設は神山町の大工さんが行っているため、和洋折衷ともいえる独特の雰囲気です。

晴れた日には2階のテラス席でクラフトビールを堪能してください。四季折々の美しさを見せる山々と上角谷川のせせらぎに包まれながら、ゆっくりと素晴らしい時間を過ごすことができますよ。

特別に1階のタップルーム横にある醸造所の中を見せていただきました。
取材したときは3基の醸造タンクがそれぞれ稼働中。マヌスさんが目指しているのは、地元の材料を使いながら、伝統的なヨーロピアンスタイルやアメリカンスタイルのビールに神山のテイストを融合させ、ここでしかつくることができないクラフトビールを生み出すこと。それはどのような味わいなのでしょうか……。

さまざまな人とつながる場所として

さやかさんの描くラベルが美しい『KAMIYAMA BEER』のクラフトビールをご紹介しましょう!

一番左の「シワシワエール」は『かま屋&かまパンストア』の自社農園で農業長を務める白桃 薫さんの家に代々伝えられた神山在来種の小麦を使用。名前の由来は徳島の方言である阿波弁の“しわしわ(ゆっくり)”から。

隣の「デイドリーム」は、季節ごとにホップとフレーバーが変化する神山の柑橘類を加えたフルーティーなIPA(インディアン・ペール・エール)。

中央の「バーレイムーン」は日本語で“十五夜の月”。ベルジアン・モルトとアメリカン・ホップによる豊かな香りとほのかな苦味が織りなす爽やかさが特長です。

その右の「ウッドランダー」は、ブリュワリー建設の際に伐採した梅の古木を用いたエクストラ・スタウト。甘い香りとコーヒーフレーバーのような滑らかな口当たりはデザートビールとしても◎。

これら4種類に加えて10月に登場したのが、一番右に置かれた季節限定の「シンデレラ」です。ウィスキーの醸造に使用されるピート(泥炭)で燻製した大麦麦芽と神山の無花果を合わせた独特の味は、レギュラーにしてほしい美味しさでした。

週末の2日間だけオープンしているタップルームではビールにぴったりの軽食も提供。特におすすめしたいのが、オランダで人気のホットサンド「トスティー」です。

今回はエメンタルチーズに生ハム、ピーマンを挟んだものをチョイス。神山のベーカリー『MORIGCHOWDER』のライ麦パンも、主張の強い具材にも負けないしっかりした味で、シェアしようにも奪い合いになること間違いなし!
具材も時期によって変わるので、何度でも訪れる楽しみがあります。平日でもスタッフが作業していれば、ボトルビールの購入はできるため、Facebookページをこまめにチェックしてみてください。

マヌスさんとさやかさんが信じているのは“乾杯は世界をつなぐ”という美味しいビールの持つ可能性。この『KAMIYAMA BEER』がさまざまな人たちと出会う場所になればと考えています。

「私たちが暮らしていたアムステルダムは本当に遊び心にあふれた場所。その経験を神山に馴染むような形でブリュワリーへと反映していけたら」。これからはもっと生産量を増やしつつ、さらにクオリティーの高いクラフトビールをつくりたいと二人は教えてくれました。

2018年12月16日には『豆ちよ焙煎所』などが出店した『クリスマスマーケット』を開催。神山町の内外から多くの人が足を運んで笑顔になったそうです。

これからの進化も楽しみな神山のブリュワリー『KAMIYAMA BEER』。オリジナルのクラフトビールはお土産にしても、きっと喜ばれるはずです。


KAMIYAMA BEER
住所/徳島県名西郡神山町神領字西上角280-1
営業時間/タップルームは土日のみ 12:00~20:00(スタッフがいるときはボトルビール販売可)
定休日/不定休
駐車場/あり
https://www.facebook.com/kamiyamabeer

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

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重藤 貴志

重藤 貴志

徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

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