大崎上島の文化と歴史を伝える、瀬戸内の豪商が建てた大邸宅/大望月邸・海と島の歴史資料館(広島県大崎上島町)

大崎上島の豪商が建てた廻船問屋の邸宅

瀬戸内海に浮かぶ大崎上島の北西部に、明治時代初期(1875年)に6年の歳月をかけて建てられた『大望月邸(おおもちづきてい)』があります。
建築した望月東之助は、江戸時代末期から明治時代にかけて海運・造船・塩田・酒造業で活躍した豪商で、瀬戸内海でも有数の廻船問屋の邸宅でした。

正門をくぐって敷地の中に入ると、大きな母屋と蔵がドーンと横たわり、白壁づくりの長屋門の先には庭園も見えます。
現在の大望月邸は、廻船問屋だった豪商の屋敷をできる限りかつての姿のまま保存・改修した上で、大崎上島の文化と歴史を伝える貴重な品々や資料を展示する『海と島の歴史資料館』として公開されています。

大望月邸の展示コーナーは大きく4つのゾーンに分かれていて、母屋の入口には(1)情報発信する『間』ゾーン、隣接する蔵には(2)歴史を知る『蔵』ゾーンがあります。

『間』ゾーンでは、大崎上島の勇壮な海の祭典『櫂伝馬競漕』に関する模型や関連資料、また島の北側に回遊してくる国の天然記念物『スナメリ』の生態などについて解説する展示があります。ちなみに『櫂伝馬』とは小型木造船のことで、14人の漕手が太鼓に合わせて櫂(かい)をこいで操船します。
『蔵』ゾーンでは、海運や造船業で栄えた大崎上島に残る文化財や美術品の数々、内務大臣をつとめた望月圭介をはじめ大正・昭和期にかけて多くの政治家を輩出した望月家に関する資料が展示されています。

順路としては、最初に『蔵』ゾーンを見学するのがオススメ。映像や模型・パネルで建物の構造や保存・改修の様子を知ることができ、次の座敷ゾーンを見学する際のガイダンス的な内容になっています。

まるで忍者屋敷!?大望月邸には謎の隠し部屋も

次は(3)体感する『座』ゾーンへ。
広大な畳敷きの座敷を自分の足で歩いて、豪商の気分を体感できる空間で、ふすまが何重にも続く優雅な大広間は一見の価値あり!

2階に上がると、屋根や柱の構造も間近に見られます。
先ほどご紹介した『蔵』ゾーンのビデオにも解説があるのですが、木組みの連結部は通称『地獄ほぞ』という様式が採用され、クサビを巧みに使って木材同士が抜けないような仕組みになっています。

この建物は船大工によって建てられたといわれ、屋根を支える部分は『船枻造り(せがいつくり)』という和船の技術が使われています。平成に入ってから改修された箇所もありますが、江戸時代から明治にかけての建築技術の粋を間近に見られます。

『座』ゾーンを隅々までくまなく歩いていると、最奥の部屋に隠し階段を発見!
この階段はどこに通じているのでしょうか? 忍者屋敷のような仕掛けにワクワクします。

さっそく階段を登っていくと、こんな隠し部屋が…
他の部屋とは明らかに雰囲気が違いますが、いったいどんな目的でこの隠し部屋が設けられたのか、謎のままです。

ちなみに、右下に見えている青い箱は懸硯(かけすずり)といい、江戸時代から明治時代にかけて船頭が和船に乗船する際に持ち込んだ金庫のようなもので、金銭や往来手形など重要書類を中に入れ、入港すると船宿へ持参していました。

大望月邸の日本庭園は、心安らぐ癒やしの空間

こちらは(4)交流の『庭』ゾーン。
白砂の庭は回遊でき、座敷からも庭園が望め、縁側から眺める落ち着いた雰囲気の日本庭園にホッと心を休めることができます。

日本庭園の片隅には茶室も設けられています。
大望月邸の北側には桜の木が多く、春にはさくら祭りも開催され、琴や篠笛の演奏、抹茶のお茶席で心安らぐひとときを過ごせます。

いかがでしたか? 大望月邸(海と島の歴史資料館)は、櫂伝馬に代表される大崎上島の伝統文化や、かつて栄華を極めた豪商たちの佇まいを今に伝える貴重な施設です。

大崎上島は広島県南部の瀬戸内海に浮かぶ離島で、橋は架かっていませんが、竹原やしまなみ海道・大三島などから定期航路が就航しています。アクセスは比較的便利な島ですので、ぜひ訪れてみてください!


大望月邸(海と島の歴史資料館)
住所/広島県豊田郡大崎上島町東野2721-1
電話/0846-67-3229
営業時間/9:00~17:00(入館は16:30まで)
入場料/一般200円 18歳以下100円 小学生以下は無料
定休日/月曜日(祝日の場合翌日)、月末日、年始年末
駐車場/あり(無料)
http://osakikamijima-kanko.moon.bindcloud.jp/navi/travel/Intellectual/oomochiduki-tei.html

瀬戸内Finderフォトライター 松岡広宣

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松岡 広宣

松岡 広宣/フォトライター 1974年生まれ、兵庫県西宮市出身、西宮市在住。メディアポリス株式会社 代表取締役。 ソーラー発電付きエコキャンピングカー【ソーラーキング号】で全国各地を訪れながら、日本の美しい風景をハイビジョン映像で撮影しています。 できうる限り全国くまなく歩き回って、貴重な日本の自然や風景を映像として後世に残していきたいと考えています。 日本全国を旅していますが、もちろん、地元の瀬戸内も大好きです! 「癒しの国 日本.TV」 ~ 日本全国を「癒しの映像」でバーチャル旅行 http://www.healing-japan.tv/

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