日本人の営みがつくった原風景へ。「鉄」と「コメ」の里山に建つ築250年の古民家に泊まる旅/せとうち古民家ステイズHiroshima 長者屋(広島県庄原市)

庄原市は広島県内でも有数の穀倉地帯です。1,200m級の中国山地の間を縫い、山からの豊かな水を用いた稲作が盛んに行われています。

庄原市中心部から車でおよそ40分のところにある三河内(みつがいち)は、美しい里山の風景を今に残すエリア。ここに2019年秋、築250年の古民家を一棟貸しの宿泊施設にリノベーションした「長者屋」がオープンしました。

茅葺き屋根の重厚な農家──その歴史や趣を尊重しながら、ラグジュアリーな宿泊体験ができるよう現代風にリノベーションされています。

なんという重厚感。江戸時代の農家を体験する

玄関から入る時、250年という長い年月の重みを感じて「お邪魔します」と思わず言ってしまいました。入り口の土間は三和土をあえて補修せずに残しています。

入り口の隣はかつて牛を飼っていた部屋。これが「ヒストリールーム」という名前で保存されており、今後地元の歴史などを展示するギャラリーとして利用される予定です。人間と牛が同じ屋根の下に暮らす。牛が、農耕を中心とする暮らしにとってどれほど大切だったのかが、現代人の私たちにも理解できる気がします。かつてここで暮らした人々の気配が見えるようです。

味わいを活かしつつ、快適に過ごせる古民家

靴を脱いで小上がりから床に上がると、新旧がうまく調和した生活空間が広がっています。ふた間の和室からは三河内の大らかな田園風景と中国山地を一望でき、奥にはダブルベッド2台の寝室があります。

キッチンはアイランド型になっており、調理しながらカウンター越しに対面できます。囲炉裏は周囲が掘られ、外国人のゲストにも使用しやすいつくりです(安全上、火気の使用はできません)。

日中も夜も、ここは都会の喧騒から逃れて静かに過ごせる特別な場所。広い浴室では照明を消して、行灯のほのかな光のなかゆったりとお湯に浸かりましょう。湯船の水音と虫の音、あなたの呼吸の音以外は何も聞こえません。

この静寂の中で、長者屋の夜は更けていきます。そう、ここでは落ち着いた大人の過ごし方が合っている気がするのです。

美しい三河内の棚田風景を散策してみよう

おすすめは早朝の散歩。食事をとる前に少し歩いてみましょう。寒暖の差によって幻想的な朝霧が出るときもあります。

お地蔵さんが朝露に濡れて静かに立っていました。刻まれた文字は読めませんでしたが、相当に古いものでしょう。安らかに過ごせるように祈った昔の人々が残したものです。

日中には、備え付けられている電動バイク(レンタル)でのどかな田舎道を軽くツーリング。このE-BIKEは本格的なマウンテンバイク型で、急な坂道でもスイスイいける優れものです。林道沿いに少し漕ぎ上がると、盆地に広がる美しい水田の風景を一望できます。

「鉄の王国」中国山地の中心から

この景色、実はかつてここに脈々と生きた人々の営みがつくったもの。このあたりの土壌は鉄器の材料となる鉄分が多く含まれており、江戸時代には「鉄穴(かんな)流し」による砂鉄の採取が盛んでした。鉄穴流しとは、山を削った土を水路に流して粉砕し、土と砂鉄の比重差を利用して水流の力で砂鉄を取り出す手法です。山が削られ、下流には土砂が堆積します。こうしてこの山間部に平地が生まれ、そこが田畑として利用されてきたのです。

「鉄穴残丘」のことも少し。平地のところどころにこんもりとした小さな林が見えるでしょう。これが鉄穴残丘。鉄を取るために山を削った際に、地盤が硬かったり、祠や墓などの神聖なものがあったりするなどの理由で削り残された場所。もともと山だった名残です。どうです、長者屋の縁側から見える景色が変わって見えるでしょう。

鉄とコメの大地、庄原。250年の古民家「長者屋」に泊まって、人々の生とともに刻まれた歴史に思いを馳せてみませんか。


せとうち古民家ステイズHiroshima 長者屋
住所/広島県庄原市比和町三河内1528
電話/0824-72-3385([一社]庄原観光推進機構)
宿形態/バケーションレンタル(1棟貸し切り1組限定) 
最大定員/8名
料金/定価48,000円(貸切料)+1名4,000円(中学生以上、素泊まり)+税

※小学生1名あたり1,000円+税
※キャンセルポリシー 予約日の7日前からキャンセル料100%
※季節により別途割引価格のご案内などがあることがあります。

※アクセスや注意点、細かい設備についてはウェブサイトをご確認ください。
※近隣の観光情報については庄原観光サイト「庄原観光ナビ」まで

 
〈せとうち古民家ステイズHiroshima〉長者屋
https://cominca-stays.jp/

瀬戸内Finder編集部

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