神山鮎喰線沿いにある茅葺屋根の古民家
徳島市と神山町とを結ぶ徳島県道21号神山鮎喰線。吉野川水系の第一級河川である鮎喰川に沿って走るこの道はまた『四国八十八ヶ所』の第12番『焼山寺』から第13番『大日寺』へと至る“へんろ道”でもあります。その道に面して建つ入田地区の古民家が、地元の人々はもちろん、観光客や旅行者にも嬉しい複合施設に生まれ変わると聞き、さっそく訪れてみることにしました。
ゆっくり近づきながら眺めてみると、昔ながらの深い軒が趣きのある渋い建物です。表には色とりどりの鉢植えや庭石がたくさん置いてあるほか、綺麗なタイルが貼られた焼き物の窯のようなものも。壁には大きな窓が何枚もありますが、すりガラスで内部がよく見えません。
入口の横にある金属製の看板には、この家のアウトラインを象ったスタイリッシュなシンボルマークと“THE KANEYA”という店名が書かれていました。しかし、これだけの情報量では、まだまだ「?」マークが頭から離れませんよね。ここは何のお店なのでしょうか。さっそく中に入ってみましょう!
建物の良さを残しつつ現代風にアップデート
店内に入ってすぐの空間には、大小さまざまな観葉植物がお出迎え。このショップの正式名称は『ボタニカル&ステイ THE KANEYA』といいます。「もともとは地域に親しまれていた『かねや商店』という雑貨屋さんだったんです」と教えてくれたのは、入田地区で造園業を営むアイムスタイル株式会社の前田範泰社長。「できることなら、この家をそのまま残してほしい」という売り主の願いに応え、築130年(!)という茅葺屋根の古民家をアンテナショップとしてリノベーションする道を選びました。
最初はDIYで改装を進めていたものの、さすがに屋根や床などを自力で再生するのは限界が……。そこで、地元タウン誌と建築家がタッグを組んだ『ひょうたん島不動産』に相談し、古民家の良さを残しつつ空間そのものを現代風にアップデート。立派な大黒柱や太い梁、味わいのある建具などはそのまま、料理教室を開催できるように、キッチンなどの設備を追加しました。コンクリートの土間やレンガを積んだキッチンカウンターは、造園業で培った高いスキルを生かして自社で施工したものだそう。
左奥にはいろいろな用途に使用できる広いスペースを確保。かつて床の間だった場所に照明を仕込み、棚を置いて小さな商品のディスプレイに使うなど、店内のあちらこちらに目が留まります。カラフルで機能的なガーデニング用のウェアなどもあり、それらを見て回るだけでも面白いショップです。
外国人もOK。宿泊もできる『THE KANEYA』
奥へと進む通路の壁には、アイアンを中心とした金属製のガーデニング雑貨をディスプレイ。定番のものから個性的なめずらしいデザインのものまで揃っています。雰囲気のある庭づくりはもちろん、部屋やガレージのインテリアとして使ってみても良さそう。実用性の高いお土産としてチョイスするのも◎。
ショップスペースの奥にはシャワールームを完備した宿泊用の部屋があります。大小さまざまのグリーンや園芸用品を取り扱うだけではなく、旅館のように利用できる点が『ボタニカル&ステイ THE KANEYA』の大きな特長の一つ。英語が堪能なスタッフも在籍しているため、海外からの旅行者にもスムーズに対応できるとのことです。こうして『四国八十八ヶ所』の第12番『焼山寺』から第13番『大日寺』の間の“へんろ道”に新たな宿泊施設が生まれると、周辺地域の観光にも変化が出てくるかもしれませんね。
「夏はかき氷やビール、冬は焼き芋などを販売することも考えています。いろいろな人が気軽に立ち寄ってもらえる場所になれば」と前田社長。今後は店内の設備やスタッフの技能を生かして、フラワーアレンジメントや多肉植物の寄せ植え、陶芸や英会話、地域の農作物を使った料理教室なども計画しているとか。『四国八十八ヶ所』巡りや神山町への行き帰りに訪れてみてはいかがでしょう。美しいグリーンと親切なスタッフが温かく迎えてくれるはずです。
ボタニカル&ステイ THE KANEYA
住所/徳島県徳島市入田町笠木303
電話/090-4786-1000
営業時間/9:00~17:00
定休日/木曜日
http://www.aim-s.co.jp
瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志
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この記事を取材したフォトライター
重藤 貴志
徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq
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