丹下健三と今治の深い縁
世界的な建築家の丹下健三氏。国立代々木競技場(旧国立屋内総合競技場)や新・旧東京都庁、フジテレビ本社ビルなど名だたる建築物を手がけ、瀬戸内地域でも、広島の平和記念公園や香川県庁舎東館などは有名です。
そして愛媛県今治市は、丹下建築の宝庫なのです。
1913(大正2)年に大阪府で生まれた丹下氏は、小・中学生時代を父親の故郷である今治市で過ごしました。のちに今治市名誉市民の称号が贈られたほど丹下氏と今治市のつながりは深く、彼が手がけた建築物が市内に8つもあります。
スポット 1
今治市のシンボル『今治市庁舎』
まずは今治市庁舎。本館、第1別館、第2別館と並び建つ3つの建物は、いずれも丹下氏の設計です。
左奥の3階建ての低い本館が1958(昭和33)年、すぐ右の10階建ての第1別館が1972(昭和47)年、12階建ての第2別館が1994(平成6)年に建てられました。
本館は横に長く伸びるスタイル。右奥に見える別館は、本館とは対照的に縦長く上に伸びています。第1別館と第2別館はよく似た兄弟のよう。
本館をよく見ると、足元の三角形から上へ伸びる外壁が斜めに切れ込む斬新なデザインです。
スポット 2
あちこちから見たい『今治市公会堂』
市庁舎の敷地内には他に2つも丹下建築があります。
まず市庁舎に向かって右手の『今治市公会堂』。コンサートや式典などに使われます。市庁舎本館と同じ1958(昭和33)年の建築です。
敷地外の歩道から見ると、側面は折り紙を蛇腹に折ったようにギザギザです。
正面入り口側から見ると大きな箱型。
見る角度で印象がガラッと変わる面白い建物です。
スポット 3
アーティスティックな『今治市民会館』
そして公会堂の正面には1965(昭和40)年築の『今治市民会館』。会議や研修で使われます。
2階の一面すべてがガラス窓で、枠がアミダくじのようなラインを描いています。その上にのる横一文字の分厚い屋根も印象的。
こちらも側面はまた違った表情です。
市庁舎本館、公会堂、市民会館の3つの建物がコの字型に並び、どれも高さを抑えた重厚なコンクリート造り。調和した一つの大きな集合体という様相を呈しています。丹下建築という共通項で存在感を放つ、今治の顔ともいえる場所です。
今治市役所・今治市公会堂・今治市民会館
住所/愛媛県今治市別宮町1-4-1
電話/0898-32-5200(今治市役所)・0898-36-1610(今治市公会堂・今治市民会館)
開庁時間/8:30〜17:15(土日祝・年末年始閉庁)
駐車場/有り
https://www.city.imabari.ehime.jp
最寄り駅/JR今治駅
スポット 4
『愛媛信用金庫』にも丹下建築が
同じ頃に建てられた別の建物も見てみましょう。愛媛信用金庫の二つの支店です。
こちらは今治支店。1960(昭和35)年の竣工です。横長いラインは市庁舎本館と似た雰囲気。
どっしり乗った屋根や箱を伏せたような側面の形は、市民会館や公会堂も思い起こさせます。
そして1967(昭和42)年竣工の常盤町支店。公会堂の正面のような大きな四角で縁取られ、前面ガラスにアミダくじのような枠は市民会館の窓のよう。ちなみに営業時間外はガラス部分がシャッターで見えないのでご注意を。
今治支店から常盤町支店までは約1km(徒歩で約15分)の距離です。
愛媛信用金庫 今治支店
住所/愛媛県今治市常盤町4-1-15
愛媛信用金庫 常盤町支店
住所/愛媛県今治市常盤町6-6-8
スポット 5
『今治地域地場産業振興センター』に見る丹下らしさ
少し新しい時代のものも。1985(昭和60)年竣工の今治地域地場産業振興センターです。貸しホールや会議室のほか、タオルや漆器、銘菓など今治の特産品が買えるショップがあります。
ホールがある円筒状の建物を両脇から四角いビルが挟みます。
この頃の丹下建築には四角と丸の組み合わせがよく見られるようになり、時代ごとの丹下氏の個性がここにも見て取れます。
今治地域地場産業振興センター
住所/愛媛県今治市旭町2-3-5
電話/0898-32-3337
ショップ開館時間/9:00〜18:00
休館日/年末年始(12/29〜1/3)
駐車場/有り
http://izc.or.jp
スポット 6
建物以外は希少? 『徳富蘆花文学碑』
建物以外のものもあります。
1984(昭和59)年につくられた、明治時代の小説家・徳富蘆花(とくとみろか)の文学碑。
三角のギザギザに、今治市公会堂の面影が。
今治港の「みなと交流センター」通称「「はーばりー」の裏手海側にあります。徳富蘆花は今治に滞在したことがあり、キリスト教の伝道をしながら教会が運営する今治英学校で教師をしていたのだそうです。
徳富蘆花記念碑
住所/愛媛県今治市片原町1 今治港ふれあいマリン広場
いかがですか? 今治市の丹下建築は市の中心部に集約しています。ぜひ全部、一気に巡ってみてくださいね。
瀬戸内Finderフォトライター 矢野智子
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この記事を取材したフォトライター
矢野 智子
1970年、愛媛県今治市生まれ。松山市在住。 大学時代を京都で過ごした後愛媛に戻り、システムエンジニアとして年の半分以上は県外出張という旅人のような生活を20年近く続けました。 退職後、愛媛を紹介する本を友人と作ったことをきっかけに、自分の「夢」と愛媛の魅力を再発見。地元出版社で編集のイロハを学び、現在は自らを「ことばのデザイナー」と称しフリーで活動中。書く、作る、伝えることに力をそそいでいます。
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