駅弁も復活!にし阿波を体感するトロッコ列車乗車レポート/藍よしのがわトロッコ(徳島県徳島市)

トロッコ列車で人気の“にし阿波”へ出発!

客席に窓ガラスがないオープンタイプの“トロッコ列車”をご存じですか? 北海道の釧路湿原や富山県の黒部渓谷、京都の嵯峨野などで走っているため、もしかすると乗車経験がある方もいらっしゃるかもしれませんね。
徳島県でも四国の観光を元気にするJR四国の『おでかけ。四国家』キャンペーン第2弾として、2020年10月10日より【藍よしのがわトロッコ】の運転が開始。10月初旬には香川県の高松駅と徳島県の徳島駅・阿波池田駅で車両展示会が開催され、多くの鉄道ファンが詰めかけました。今回は10月8日に実施されたプレス向け試乗会の様子をお伝えします。

当日は朝から雨が降りしきる残念な天気でしたが、その悪天候をものともせず、徳島駅には多くの報道関係者が集合(!)。【藍よしのがわトロッコ】が到着する2番ホームには、テレビ局や雑誌社のカメラマンが早くもカメラを設置して待ち構えています。機材の準備を終えてまもなくすると、遠くから藍色の列車が近づいてくるのが見えました!

【藍よしのがわトロッコ】の先頭車両は、2019年まで観光列車『志国高知 幕末維新号』として使用されていた「キクハ32-501」。左側から少しずつ藍色が濃くなっているのがわかりますか?これは木綿の布地を染めては干し、干しては染めることで少しずつ濃さを増し、年月の経過とともに冴え冴えとしてくる藍の美しさを表現したもの。車体には漢字で「藍」と書かれたヘッドマークと、アルファベットの“Ai”を阿波踊りの躍動感に見立てたシンボルマーク、3本のラインと絞り染めがモチーフの水玉模様が入ってます。

報道関係者以外にも、スマートフォンのカメラを構える駅の利用者や遠巻きで見守る家族連れもちらほらと。【藍よしのがわトロッコ】が到着した2番ホームは、いつもとは違う楽しげな雰囲気に包まれていました。

10時34分、いよいよ出発! 先頭のトロッコ車両に乗車できるのは石井駅からとなるため、最初に乗り込んだのは2両目にあたる普通車両の「キハ185-20」です。列車が動き出すと同時に【藍よしのがわトロッコ】デザインの特製団扇を振って、たくさんの駅員の方々が見送ってくれました。

4人掛けボックスシートで感じる吉野川の風

徳島駅から阿波池田駅へと向かう下り便の列車名は『さとめぐみの風』。ネーミングには「吉野川の恵みにより育まれた里山の景観や暮らしを感じてもらいたい」という思いが込められているそう。車窓からは徳島市のシンボルである眉山も見えますが、残念ながら今回は雨に煙る姿しか拝むことができませんでした。すっきりと晴れた日であれば、山名の由来となった“眉の形”が確認できるはずです。

徳島駅から約10分強。石井駅を過ぎるとトロッコ列車への乗車が可能になります。車内のアナウンスを受けて、さっそく各社の取材チームも行動を開始! ちなみに、普通車両の「キハ185-20」には、連結部分近くにトイレと洗面所が備えつけられているため、小さなお子さんを連れていっても安心です。

トロッコ車両は通路の左右に4人掛けのボックスシートを配置。美しい景観を眺める邪魔にならないように、できるだけ柱を減らした天井までオープンな設計とあって、普通の列車とは比べ物にならない抜群の開放感です。構造上、雨や風を避けられる場所がないため、乗車する際には防寒具や雨具は準備しておいた方がいいでしょう。

地元在住の書家によるヘッドマークにも注目!

【藍よしのがわトロッコ】の沿線マップにも注目。
題字とシンボルマーク、列車名を囲むように配置されているのは、俗に藍四十八色ともいわれる膨大なグラデーションのうちの十色。ほんのり青い「藍白(あいじろ)」や緑がかった「水浅葱(みずあさぎ)」、夜空のような深さを感じる「納戸(なんど)」など、一つひとつを眺めているだけでも、伝統的な藍染めという世界の奥行きを垣間見ることができます。

沿線マップの中面では、徳島駅から阿波池田駅までのルートと、その沿線にある印象的なスポットが紹介されています。各所で流れる車内のアナウンスと合わせれば、自分たちがどこを通過中か確認するだけではなく、徳島について一段と詳しく知ることができるでしょう。以前、こちらの記事でご紹介した『学駅』も通りますよ。
また、徳島県西部の特産品『千年のかくれんぼブランド』についても、代表的な商品が掲載されているため、お土産選びにも役立つのではないでしょうか。

11時45分に穴吹駅で停車した際、あらためて【藍よしのがわトロッコ】のヘッドマークを撮影。こちらは阿南市在住の書家・天羽汕景さんが手掛けたものです。天羽さんは徳島を拠点に多方面で活躍。2019年にはルーヴル美術館で開催された『Societe Nationale des Beaux-Arts』サロン展に作品が選出されるなど、国際的にも注目を集める書家の一人です。今回は特別にコメントをいただきました!

「列車のヘッドデザインに書家が起用されるのは初めてとのこと。大きな責任を感じつつも楽しみながら取り組むことができました。トロッコのコンセプトやデザインからポイントを抽出し、限られた画数で表現していく過程は、私自身にとっても新しい挑戦です。なかなか形が決まらず、デザイナーの方とイメージを共有しながら完成形を探っていきました。一画目のスッと伸びた線は、トロッコ列車が風を切って徳島の自然の中を走っているイメージ。車体にも流線が描かれていますが、私が書いた曲線もまた、風の流れであり、吉野川の流れでもあります。子供さんにも楽しんでもらいたいという思いを込め、凜としたシャープな雰囲気ではなく、文字の中に空気を含むような丸みのある伸びやかな雰囲気を大切にしました」。

天羽さんによれば、この「藍」という文字は、徳島産の藍の色素を摘出してつくられた純粋な藍墨を使って書いたものだそう。【藍よしのがわトロッコ】に乗るときには、ぜひ美しいヘッドマークにも注目してみてください。

たっぷりの“阿波尾鶏”が嬉しい特製の駅弁

更にしばらく進んだところで車内販売のデモが実施されました。今回は残念ながら商品の購入はできませんでしたが、ちょっと覗いてみたところ、ケースの中には魅力的な品物がいっぱい!
徳島の地酒や半田素麺(まだ一部地域でしか発売されていないインスタント麺も!)、阿波藍を使ったお菓子やマスクなど、旅行土産にぴったりなアイテムが揃っていました。地元タウン誌のスタッフが販売を担当しているので、徳島に関する質問にもバッチリ答えてくれるはず。
(車内販売はワゴンにて行う場合があります)

吉野川に沿って徳島駅から阿波池田駅へと向かう『さとめぐみの風』を予約するときには、右側の座席を確保しておくことをお勧めします。いわゆる“日本三大暴れ川”の一つとして数えられ、関東地方を流れる利根川(坂東太郎)、九州地方を流れる筑後川(筑紫次郎)と並んで“四国三郎(しこくさぶろう)”の異名を持つ雄大な吉野川の流れは必見。場所ごとにさまざまな表情を見せてくれるでしょう。

鉄道の旅における楽しみといえば、やはり駅弁は欠かせません。
実は沖縄県を除く46の都道府県のうち、徳島県は唯一の“駅弁がない県”となっていたのですが、この【藍よしのがわトロッコ】の運行をきっかけに駅弁が復活!
鳴門金時を使った銘菓『鳴門うず芋』などで知られる栗尾商店が、以前に貞光駅で販売していた『阿波尾鶏とりめし』を約4年ぶりにアレンジし『阿波尾鶏トロッコ駅弁』として生まれ変わりました。下り便『さとめぐみの風』の限定販売で価格は1,000円(税込)。乗車4日前までに予約が必要です。

蓋を開けてみると、そこには色とりどりのおかずがぎっしり! メイン料理は地鶏生産量日本一を誇る徳島の地鶏“阿波尾鶏”の塩焼き。弾力のある鶏肉は、噛みしめるごとにコクのある旨味が口の中に広がります。すだちと美馬市特産の唐辛子を使った“みまからドレッシング”で味に変化がつけられるのも嬉しいポイント。ごはんの上にはそぼろと炒り卵が乗せられているほか、祖谷地方の郷土料理“でこまわし”を思わせるじゃがいもの味噌田楽、ひじき煮や切干大根、きゅうりの漬物と紅生姜が入っています。ボリュームたっぷりで食べごたえのある徳島らしい駅弁でした。

阿波池田の歴史と大地を知るガイドツアー

列車は13時過ぎに終点の阿波池田駅に到着。駅員の方々や地元の関係者による温かい出迎えに手を振って応えます。約2時間30分のショートトリップでしたが、ここから13時32分発の【南風9号】に乗車すると、大歩危駅14時21分発の観光列車【四国まんなか千年ものがたり(そらの郷紀行)】に乗り継ぐことができるそう。さらに鉄道で旅を続けられるプランが用意してあるのは有り難いですね。

折り返しの上り便『かちどきの風』の発車時間までは約1時間半。地元の観光ボランティアの方々が“みよしジオガイド”として案内してくれるツアーに参加してみてはいかがでしょうか。
トロッコ列車の運行に合わせて『池田の歴史と大地のつながりを知るツアー』が企画されており、プレス向け試乗会でも体験することができました。あいにくの天気でしたが、この地で美味しい日本酒をつくり続ける『三芳菊』の大きなネオンサインが掲げられたアーケードから出発! 途中にはJR四国がオープンした簡易宿所『4S STAY 阿波池田駅前』があります。宿泊する場合は、こちらを予約してみては?

幕末から明治にかけて刻みたばこで栄えた阿波池田には、どこか懐かしい古き良き町並みが残っています。「うだつが上がる」という言葉に使われていることで知られる“うだつ(卯建)”という防火壁が残っている家もあちらこちらに。“みよしジオガイド”の方々の説明はとてもわかりやすく、ところどころで新しい発見があり、どんどんこの町に対する興味が湧いてきます。

阿波池田駅から徒歩10分。高台を登ったところにある諏訪神社の境内から眼下に広がる町並みを眺めます。四国山地や讃岐山脈などの山々の間に吉野川が流れるという大地について学びながら、独特の地層や岩石などの特徴を聞いていると、あっという間に時間が経っていきました。

旧家を改装した地域交流拠点施設でひと休み

『池田の歴史と大地のつながりを知るツアー』のラストは、三好市地域交流拠点施設『真鍋屋(愛称:MINDE)』のカフェレストラン『MINDE KITCHEN』へ。このトロッコ列車の運行に合わせて企画された特別セットをいただきながらひと休みします。

築100年以上の古民家と蔵を改装した『真鍋屋(愛称:MINDE)』は、幕末から池田における刻みたばこ製造業の発展に大きく寄与した真鍋家が所有していましたが、1997年に刻みたばこの『まちかど資料館』として改装・公開。2018年に三好市へ無償で譲渡され、地域交流拠点施設として生まれ変わりました。
愛称である“MINDE”とは「寄ってみんで?」「来てみんで?」「食べてみんで?」など、地元でよく使われる味わい深い方言から名づけられたもの。商人の町ならではの 「ちょっと気軽に~してみない?」というニュアンスを含んでいる言葉だけに、ぴったりのネーミングだといえるでしょう。

約230年前の阿波池田の古地図を見ながらいただいたのは、地酒またはビールと『三好野菜のアヒージョ』が楽しめる『ちょい飲みセット』。熱々のオリーブオイルで大ぶりの鶏肉と地元で採れた新鮮な椎茸と茄子が煮込んであり、トッピングされた白菜菜が絶妙なアクセントになっています。一緒に飲むお酒は三好市の芳水酒造による『芳水』。アヒージョの強い味わいに負けないどころか、その相性の良さにびっくり! 風雨で冷え切った身体に沁みわたる美味しさでした。
小腹が空いたけれど、お酒が飲めない人には、フライドポテトとフライドセットにソフトドリンクが付く『ハッピーセット』、甘味が欲しい人には、手づくりデザートとソフトドリンクが嬉しい『デザートセット』もチョイス可能。どれもここでしか味わうことができないので、グループで訪れた際には、異なるメニューを選んでシェアしてみてはいかがでしょうか。

阿波池田駅14時39分発の上り便『かちどきの風』に乗って徳島駅へ。2番ホームに到着したときには、すっかり夕方になっていました。
徳島県西部への列車旅を気軽に楽しむことができる【藍よしのがわトロッコ】。10月の乗車率が96.7パーセント、11月の乗車率が98.7パーセントと大好評につき、11月4日に「12月の運転日を追加設定」という嬉しい発表がありました。また、学駅の入場券5枚とお守り袋をセットにした「合格祈願きっぷ」が 12月19 日と20 日限定で車内販売されるそう。

2016年に農林水産省から「食と農の景勝地」に、2019年には「世界農業遺産」に認定されるなど“にし阿波”地域は、国内外から大きな注目を集めています。あなたもトロッコ列車で旅に出てみませんか? きっと、忘れられない思い出をつくることができるはずです。


藍よしのがわトロッコ
電話/0570-00-4592(受付時間8:00~20:00)
四国旅客鉄道株式会社
https://www.jr-shikoku.co.jp/01_trainbus/event_train/yoshino_torokko.html

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

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重藤 貴志

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徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

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