愛媛・南予を巡る、2泊3日の究極の癒やし旅(前編)/愛媛県喜多郡内子町、大洲市

愛媛県の南予地方。温暖でのんびりした愛媛のなかでも、さらに人もまちもゆったりしつつ、自然にあふれ、町並みや伝統など古きものを大切にした味わいのあるエリアなのです。公共交通機関も現金払いが少なくない南予をめぐる、お得で、便利な交通のツールをご存じですか?

それが、3日間6,000円で対象区間のJR、バスが乗り放題の「えひめ いやしの南予 デジタルフリーパス」(問合せ先:JR四国電話案内センター tel. 0570-00-4592[8:00~20:00年中無休])。スマートフォンの簡単な操作で、駅員さん、乗務員さんに画面を見せるだけのスマホ“パス”です。2020年12月31日までの期間限定ということで、さっそく、3日間の南予旅を堪能してきました!
※デジタルフリーパスは2020年12月末をもって終了しています

えひめ いやしの南予 デジタルフリーパス
https://www.jr-shikoku.co.jp/nanyofreepass

旅のはじまりは、JR松山駅から。構内に掲示された専用ポスターの赤い丸に、スマホの画面上部をスッとすべらせるだけで『フリーパス』の画面に導いてくれました。

スマホ上で決済し、ものの1分で操作は終了。駅員さんに画面を見せて、特急へ乗り込みました。

内子の古民家『下芳我邸』で地元の食材とおもてなしを味わう

車窓の景色は街から里山へ。約30分後、JR内子駅へ到着しました。伝統工芸をはじめ、文化が豊かな山のまちは、自然や風情のある建物を観ながら、てくてくと歩くのがぴったり。まずは腹ごしらえとお邪魔したのは、明治半ばに建てられた元造り酒屋の『蕎麦とつみ草料理 下芳我邸(しもはがてい)』です 。

名物のお蕎麦とおにぎり、“地物野菜”の天ぷらがつく『野遊び弁当』(1,750円)をいただきました。地元のそば粉を使った、二八の麺は香りと食感が最高! 内子の野菜を使った素朴な料理が朱のお盆に映えます。淡く繊細な味付けから、おだしや調味料のこだわりが伝わってきました。

下芳我邸のお膳には、毎朝、スタッフさんが摘んでくる野の草の一輪挿しが、必ず添えられているんです。なんとも、ささやかで温かい“サービス”。南予の風土を象徴しているような気がします。

蕎麦 つみ草料理 下芳我邸
住所/愛媛県喜多郡内子町内子1946
電話/0893-44-6171
営業時間/11:00~15:00(L.O.14:30)
定休日/水・木
http://www.shimohagatei.com

内子町は江戸時代後期から明治時代にかけて木蝋(もくろう)の生産で栄えました。当時の面影を今に伝えるのが、八日市・護国地区の町並みです。白い漆喰と黄土の壁が連なる登り坂をゆっくりと歩く。ここに暮らす人たちの、景観を守るための日々の努力と想いの証しを両脇に歩くと、タイムスリップしたかのような感覚になります。

『古民家ゲストハウス&バー 内子晴れ』でのんびりステイ

内子のまちに惹かれ、県外から移り住んできた人たちも多く、彼らは伝統のまちに新しい風を起こしています。その一つが、南予旅の初日のステイ先に選んだ『古民家ゲストハウス&バー 内子晴れ』。オーナーの山内大輔さんは、築100年以上の民家を2017年、ゲストハウスにして、国内外から人が集まる場所へと変えました。

土間から続く、畳の居間。秋が深まれば、こたつに愛媛名物のみかんが旅人を待ち受けます。『暖』づくしのこの環境で、やったのは仕事(笑)。旅先ではいつもと違う感性が働くのか、はかどるわけです。内子晴れは10時から17時までコワーキング利用もできます。フリードリンク付きで1,500円。17時からチェックインできるので、コワーキング→宿泊とリレーをすれば、とっても便利◎

古民家ゲストハウス&バー 内子晴れ
住所/愛媛県喜多郡内子町内子3025
1泊1名4,000円(税込)IN 17:00 / OUT 10:00
カフェ11:00〜15:00、バー18:00〜22:00、コワーキング10:00〜17:00
定休日/月・火曜日
https://uchikobare.jp

木蝋のほかにも、いろんな手仕事が残っている内子。その一つが『大洲和紙』です。こもってばかりではもったいない!少し足を伸ばして、五十崎(いかざき)と呼ばれる和紙の産地を目指しました。

和紙をつくる人とつかう人をつなぐユニット『neki』

ここは、大洲和紙を中心に和紙の魅力を発信する『neki』。もともと内子晴れの近くにありましたが、戦後にできた元家具屋さんの建物で2020年4月に再オープンしました。営むのは、大洲和紙に魅せられた酒井真弓さんと青山優歩(すぐほ)さんのユニット。2人とも移住組です。

nekiでは、酒井さんがセレクトした和紙の小物や、大洲和紙を販売。もうすぐ、だれもが手軽に手漉き和紙にトライできる小さな工房も誕生します。

紙をつくる人・酒井さんと、紙をつかってプロダクトやロゴデザインなどを手がける青山さん。「紙をつくる人と、つかう人が交流できる場にしていきたい」とお二人。

店奥には青山さんプロデュースの『ゆるやか文庫』があり、じっくりと本を読んだり、古書を買えたりします。言われてみれば、本は読み物である前に、紙を使った一つのプロダクト。この文庫は、紙の違いを愉しむ場でもあるのです。

和紙のまちで、いろんな角度から紙に触れて、感じて、体験する。南予旅の記憶にずっと刻まれつづけるであろう、ゆるやかな、滋味深いひとときでした。

neki-和紙とあそぶ、和紙と暮らす
Instagram @neki_washi
※「neki-和紙とあそぶ、和紙と暮らす」は閉業しました。(2022年10月現在)

ゆるやか文庫
Instagram @yuruyakabunko

住所/愛媛県喜多郡内子町只海甲456 みそぎの里2階
営業日/土、第2・第4日曜
営業時間/11:00~17:00
※イベント等で臨時休業あり。Instagram参照

内子の野菜のおいしさを知る!『GOOD MORNING FARM』

歩みは止まりませんよー。寒暖の差や空気や水の清さから、内子はとにかく野菜がおいしいのです。内子の野菜を堪能するのにオススメなのが、ピクルスやオイル漬けなどの瓶詰め専門店『GOOD MORNING FARM』です。

壁一面に並ぶ小瓶たちは、オブジェにしておきたいほどにキュート。県内外で大人気なのです。そういえば、代表の齊藤美香さんも移住者。内子の野菜のおいしさに驚き、多くの人に知ってほしいと始めました。

添加物を使わない瓶は、スパイスが効いた酒のアテにもなるピクルスから、そのままおかずになるもの、オイル漬けと、同じ瓶の世界でも野菜の生かし方がさまざま。そしてどれもこれも、規則正しく美しく小瓶におさまっています。お土産にもとっても喜ばれるのでたくさん購入しましたよ。

GOOD MORNING FARM
住所/愛媛県喜多郡内子町五十崎甲1221-3
電話/0893-23-9691
営業時間/8:30~17:00
定休日/土・日・祝
https://www.goodmorningfarm.com

 

内子はこのほか、お惣菜のおいしいお魚屋さん、パン屋さんと、“おいしい商店”がそろうので、まち歩きがてら、『内子セレクション』を集めました。お宿の内子晴れには、四国を中心としたマイクロブルワリー(小さいビール醸造所)のクラフトビールも揃うというおあつらえ向き。ささやかだけれども、心もお腹も満たされる内子の夜は深まっていきます。

2日目は、デジタルパスの本領発揮。JR内子駅から、JR伊予大洲駅へ。大洲市内は路線バスを使って移動します。電車もバスも、スマホをみせるだけ。現金払いが多い南予では、本当に便利さを実感できますよ。

ミシュランの星もつく大洲・名勝の臥龍山荘

大洲城のふもとにまちが広がる城下町、大洲。その名勝といえば、『臥龍山荘』です。明治時代、木蝋貿易に成功した豪商・河内寅次郎が、「余生を地元で過ごしたい」と、10年かけて築いた別荘です。

大工の息遣いや想いが伝わってくる建築物、周囲の景色と庭園が描く風景の美しさ。圧巻は、肱川の絶壁に立つ『不老庵』です。ゆっくりと歳月を刻んで完成した住まいはその分、時代を超えても、見るものをうっとりとさせるおもむきに溢れています。

完成からわずか2年後に、この世を去った寅次郎。ここで過ごした時間はほんのすこしでしたが、贅と手間を尽くしたこの建物は、このまちの人たちが大切に受け継いでいます。

臥龍山荘
住所/愛媛県大洲市大洲411-2
電話/0893-24-3759
営業時間/9:00~17:00(札止め16:30)
無休
http://www.garyusanso.jp

古民家の生かし方が秀逸。『商舗・廊 村上邸』で喫茶時間

臥龍山荘から歩いて、『おはなはん通り』へ。江戸時代の町割と家並が忠実に残されている通りには、古民家を生かした宿や飲食店が点在しています。その中でも2020年オープンした『商舗・廊 村上邸』は築170年の、豪商・村上一族の旧邸宅。人と場所をつなぐために仕掛けるイベントや空間のグレードで注目を集めるスポットです。

土間で靴を脱ぎ、右奥に進むと、中庭を望むカフェスペースがあります。テーブル、棚、照明など、この空間に置かれたものは旧邸宅の雰囲気になじみつつも、洗練されたものばかり。

『オリジナルぜんざい』(飲み物付き1,000円)は、自家製餡、白玉、コーヒーゼリーにココナッツミルクがかかる、オリエンタルな甘味。これまで経験したこのないやさしい甘みの奥行きに、目を見張りました。

「かつてたくさんの人が行き来していた建物なので、どれだけ長居しても大丈夫です。建物が喜んでくれていますから」と“邸守”の磯野百会さん。提供するすべてに抜かりがない。そう表現するとピリっとしてそうですが、この空間の包容力は、古民家が持つ力であり、“邸守”のおもてなしの心の表れ、なのでしょうね。

商舗・廊 村上邸
住所/愛媛県大洲市大洲450
電話/0893-57-9771
営業時間/12:00~18:00
定休日/月・火
http://murakami-tei.com

内子、そして、大洲。「古き」を大事にするまちの、それぞれの魅力を堪能したところで、電車を乗りついで、南予旅のハイライトと言うべき、渓谷にひっそりと佇むとっておきのお宿へと向かいます。旅は後編へ。どうぞご期待ください。

瀬戸内Finderフォトライター ハタノエリ

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ハタノ エリ

ハタノ エリ

1978年宮崎県生まれ。愛媛県松山市在住。 新聞記者のちフリーライター。 日常にも、おもてなしの心があふれる愛媛。2年前、この地を離れても忘れられず、2017年春、戻ってきました!訪れたらきっと、大好きになる。そんな確信があるからこそ、誰かの「愛媛行き」を、グッと後押しする記事を書いていきたい。

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