たくさんのアリたちによって崩された砂の国旗。国境とはなんなのか、思わず考えさせられます。
(『ユーラシア』柳幸典)
鏡のように美しい「板」の正体は、廃油で満たしたプール。
(『物性Ⅰ』原口典之)
ウルトラマンがバンザイをし、日の丸を形づくっている。しかし、4分の3は鏡に映った虚像……。
(『バンザイ・コーナー』柳幸典)
ドキッとさせられるようなこれらの作品は、2012年の秋に広島県尾道市の離島にオープンした「ART BASE 百島」の企画展『十字路—CROSSROAD』(2014年9月13日〜開催中)で展示されているもの。
ART BASE 百島を立ち上げたのは、国際的な展覧会「ヴェネツィア・ビエンナーレ」のアペルト部門(若手部門)で、93年に日本人で初めて受賞した柳幸典氏。柳氏が若手アーティストの制作拠点を探していたところ、百島の廃校と出合い、ここを芸術家たちの「秘密基地」として再生したのだそう。
現在の企画展では、柳氏をはじめ、原口典之、石内都、ブルース・コナーといった、現代美術の巨匠たちの作品を観ることができます。国家のあり方や環境問題などを問う社会派の作品が並びますが、波の音しか聞こえない静かな島では、肩の力を抜いてアートと向き合うことができます。
会期中には、島の野菜を使ったランチを提供。島の人たちは普段からアーティストやスタッフと交流し、野菜をあげたり、ときには作品づくりを手伝ったりしているのだとか。
百島はかつて島全体に野菜や果物が育ち、3000人近い人が暮らしていたこともありました。しかし過疎化が進んだいま、人口は約530人にまで減少。そこへ現在、柳氏を含め、7名のメンバーが移住してきました。2014年8月には、彼らが中心となって30年ぶりに百島の納涼祭を復活さたのだとか。
廃校や空き家で芸術活動を行う一方で、自分たちも島の一員となって活性化に一役買う。それが「秘密基地」を守り、百島から世界へアートを発信するために大切なことなのです。
芸術の秋。新しいアートが誕生する小さな島へ、あなたも行ってみませんか?
ART BASE 百島
住所/広島県尾道市百島町1440
開館日時/下記連絡先までお問い合わせ下さい
アクセス/尾道港から高速艇またはフェリーで約30-40分→福田港(百島)
電話/0848-73-5105
HP/http://artbasemomoshima.jp/
Facebook/https://www.facebook.com/momoshima.artbase
瀬戸内Finderフォトライター 古川 いづみ
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この記事を取材したフォトライター
古川 いづみ
古川 いづみ/フォトライター 1982年生まれ、香川県出身。東京の制作会社で雑誌やWeb媒体の編集&ライティングにたずさわったのち、2012年、結婚を機に広島へ。現在、保育園へ通う息子の送り迎えをしながら仕事をしています。取材ネタは、もっぱら週末に家族で行くドライブで収集。好きな道は西条〜三次方面の375号線、好きな食べ物は宮島のあなごめしです♡