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万葉の昔から「鞆の浦」が和歌に詠まれ、絵師に描かれ、朝鮮通信使をはじめ古人に愛された理由のひとつに、その景観の美しさが挙がることは間違いありません。
水面に湛えた色を刻々と移ろわせる瀬戸内の海、そこに浮かぶ大小の島々や船、寺社建築が溶け込む趣ある町並み……。鞆の浦には、ここにしか存在しない唯一無二の美があります。
朝鮮通信使に「日東第一形勝(対馬から江戸までの間で最も美しい景勝地)」と絶賛された美しい眺めが、今も昔も旅人の心を温かく癒やします。
対潮楼 – “対馬から江戸までの間で最も美しい”と讃美された眺望
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「日東第一形勝」。
鞆の浦の景観の美しさを語る上で、決して外すことのできない言葉です。
1711年、鞆の浦に立ち寄った朝鮮通信使の李邦彦(イバンホン)は、客殿として使われていた『福禅寺』の客殿からの景色を「日東第一形勝」と讃えました。1748年には朝鮮通信使の正使・洪景海(ホンケヒ)が、瀬戸内を眺望する座敷を「対潮楼(たいちょうろう)」と名付け、息子に書を残させました。
対潮楼から望むは、朱塗りの弁天堂が建つ弁天島、その背後にゆったりと横たわる仙酔島です。
かの十返舎一九が『厳島参詣膝栗毛』の中で「青畳敷きたるやふな備後沖居ながらおがむ神の恵みに」と詠んだように、まるで青々とした新しい畳を敷き詰めたような穏やかな瀬戸内海を眺めることができます。
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弁天島 – 朱塗りの弁天堂と九重の塔婆が建つ無人島
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朱塗りの弁天堂が建っていることから弁天島と呼ばれていますが、正式な名前は百貫島といいます。弁天堂には「福徳ヲ授ケ海上ノ安穏ヲ守護スル」という弁才天が祠られ、漁師たちの守り神として慕われています。また、「文永八年六月廿五日」(1271年)の建立とされる九重石層(元来は十一層)、『弁天島塔婆』は広島県重要文化財にも指定されています。
絶壁の小さな無人島に朱塗りのお堂と塔婆がそびえる姿は、まことに雅やか。
まるで絵巻物のような風景に人々は心を癒やし、慶び、永久の歴史を想うのです。
医王寺・太子殿 – 鞆の浦を一望できる絶景の高台
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鞆の浦の「鞆」とは、弓を射る際に手首に巻き付ける道具のこと。
まるで鞆のように湾曲した地形だという所以から鞆の浦という地名がついたといわれています。
そんな鞆の浦の町を一望するなら、町の西側、後山(うしろやま)の山腹にある『医王寺』を訪れてみましょう。医王寺に登るまでも少し歩くのですが、境内から山側に登る階段を更に15分ほど登ります。
息を切らして登った先に待つのは『太子殿(たいしでん)』、そして息をのむほどの絶景!
鞆の町並みはもちろん、弁天島や仙酔島、果ては四国連山まで見渡すことができます。
地元の人々には日の出スポットとして知られているほか、昼間の真っ青な海と空の景色、郷愁を漂わせる夕暮れ、夜の控えめで幻想的な夜景も言葉では言い表せないほど。
延々と続く階段に一瞬ひるんでしまいますが、挑む価値は十分にありますよ。
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→坂道の先には絶景という名のご褒美が!「医王寺」
→石段の先に待つのは鞆の浦を見渡す最高の絶景 – 医王寺(太子殿)
阿伏兎観音 – 海上にそびえる美しき観音堂
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鞆の浦から西に4kmほど行った阿伏兎(あぶと)岬にそびえる朱塗りのお堂。
『阿伏兎観音』は、海に突き出すように積み上げられた石垣の上に建つ臨済宗の寺院です。
建設は1570年頃といわれ、観音堂は国の重要文化財にも指定されています。
客殿から階段廊下を進めば、眼下に波しぶきを上げる『磐台寺観音堂』にたどり着きます。
そこから望むは穏やかな瀬戸内海。ああ絶景かな、絶景かな……。
石垣に備えられた手すりが低いため、ちょっとスリリング。その分、つま先から広がる雄大な海景を望むことができますよ。
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→絶壁にそびえる朱塗りの観音堂「阿伏兎観音」
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VISIT鞆の浦は、日本遺産に登録されたストーリー「瀬戸の夕凪が包む国内随一の近世港町〜セピア色の港町に日常が溶け込む鞆の浦〜」を紹介するとともに、そこに暮らす人々の美しい日常を国内外に向けて発信するメディアです。
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