“アウトフィッター”と一緒に徳島の自然を満喫しよう!/Trip 四国の川の案内人(徳島県美馬郡)

剣山の入り口にある拠点へ向かって

標高1,955mと西日本で2番目の高さを誇り、いわゆる“日本百名山”の一つとしても名高い徳島の剣山。ここへ向かうルートである貞光川沿いの国道438号線をしばらく車で上がっていきます。徳島に住んでいても、なかなか訪れることのないエリアだけに、今から訪れる場所が楽しみで仕方ありません。

到着したのは一般的な家よりも少し大きめの建物。入り口の近くには薪がいっぱい積んであります。小さな看板に書いてあるのは『Trip 四国の川の案内人』という文字。こちらは徳島の自然を心から楽しむサポートをしてくれる“アウトフィッター”の事務所です。さて、どんなところなのでしょうか。

『Trip 四国の川の案内人』は牛尾 健さん、愛子さんご夫妻が営む“アウトフィッター”の事務所です。日本では聞き慣れないアウトフィッターを一言で説明すると「人々をアウトドアの環境にフィットさせていく」職業。欧米ではよく知られた表現だそうですが、日本でいえば“アウトドアガイド”に相当するでしょうか。

兵庫県出身の健さん、地元つるぎ町出身の愛子さんは、二人とも幼い頃から自然に親しみ、2010年に『Trip 四国の川の案内人』をオープン。以来、プロフェッショナルとして、幅広い世代の人々が四国の山と川を心ゆくまで楽しむためのお手伝いをしています。
この建物はかつて農業用モノレールや農機具を扱っていた会社の事務所兼倉庫で、剣山への入り口という立地と広い空間があることが気に入っているそう。

野遊びのプロだからこそ見えてくる徳島

「中学生くらいからだったと思います。一人で山に登り、海で釣りをすることが一番の楽しみでした」と静かに話す牛尾さん。
学生時代から山と川を専門とするアウトドアガイドになりたいと考えていたそうで、本格的に登山を始めた高校時代には四国の川を見るために自転車で周遊。大学時代には日本を代表するアウトドアメーカーの一つでアルバイトを開始し、リバーガイドとして経験を積んでいきました。

「吉野川によく来るようになって。この川でガイドができるスキルがあれば、どこでもやっていけるんじゃないかなと思いました」。牛尾さんがプロのアウトドアガイドやアウトフィッターの重要性を痛感したのは、海外の山を登るようになってからだそう。
アメリカやオーストラリア、メキシコ、グァテマラ……。どこの国でも、自然のなかへ入っていくには、現地に精通した優秀なガイドのサポートが不可欠だったといいます。

大学卒業後はそのままアルバイトをしていたアウトドアメーカーに就職。登山ツアーやラフティングの企画とガイドをしながら、約10年にわたって徳島の山と川を体感する暮らしをしていました。

「独立してからはバックパッキングツアーという商品を販売してはいますが、本当に見てもらいたいのは、その“過程”に当たる部分です。人が住む都市と周辺の自然とをつなげた物語を体感し、自然のなかに入っていって楽しんでほしい。そのために必要な知識や技術をサポートするのが、僕たちの役目だと思っています」と牛尾さん。

出番を待つさまざまなタイプのツーリングカヤック。一艇一艇、色や形が異なりますが、どれも牛尾さんにとっては大切な道具。そこに漂う風格は数々のツアーで使い込まれてきた年月を物語ります。

「川は四国が一番いいと思っています。水も綺麗ですし、それぞれに個性がある。実際に暮らすようになってからは、より身近な存在になりましたが、何度行っても飽きることはありません」。牛尾さんはカヌーイスト・作家として知られる野田知佑さんのファン。その野田さんが1990年代の終わり頃、徳島の日和佐に移住したことも、四国の自然の豊かさの証明の一つだといえるのではないでしょうか。

「コロナ禍の今は難しくなってしまいましたが、日本各地はもちろん、世界各国へ旅に出て、現地で感じた“情報”や“想い”をツアーにフィードバックする。僕たちなりの“四国”そして“徳島”を提案しているつもりです」。

楽しみながら追求していくアウトドアの本質

『Trip 四国の川の案内人』では使っているギアやウェア選びにもテーマを持っています。それは”ヨーロッパ目線のアメリカアウトドア”ともいうべきもの。決して面積が広いわけではないのに、複雑で多様な自然と地形を持つ日本のフィールドを、どのように楽しんでいくかを大切にしています。

写真はフィンランド発のアウトドアブランド『SAVOTTA』のバックパック。
フィンランド国防軍とも提携を結んでおり、デザイン性の高さに加えて抜群の機能性を誇ります。同ブランドのバックパックとサウナテントのプロモーションムービーの制作に牛尾さんたちが協力。撮影はどちらも剣山で行われたそうです。

フィールドで必要なものがあれば、自分の手で道具をつくりだすことも。
こちらは先端を藍で染めているインディアンヘッドパドル。牛尾さんが自分の手で削り出したもので、カナディアンカヌーに乗るときに使うためにつくったのだそう。

「1970 年代にアメリカ西海岸で文化として始まってから約50年近くが経過したアウトドアの世界ですが、特に日本では2000年代前半にカジュアル化・アパレル化が進みました。そのため“そっと自然のなかへ入って行き、そこでの時間を楽しみながら自分を感じること”が薄れてきているような気がします」と牛尾さん。

自分の知識と技術を駆使して危険を回避しながら、ありのままの自然を楽しんでいく。アウトドアの本質を問い直すタイミングなのかもしれません。

こちらは香川の槇塚鉄工所さんがつくった鋳鉄の小さな焙煎用の手鍋。ツアー中の休憩や目的地で焚き火でコーヒー豆を焙煎し、美味しいコーヒーを飲むためのもの。牛尾さんの“焚き火コーヒー”を目当てにツアーに参加するというファンも出てきており、その腕前は折り紙つきです。

一年を通じて徳島の自然と文化を満喫しよう

『Trip 四国の川の案内人』は四国の山と川を案内してくれるアウトフィッター。「冬のハイクツアー」の一番人気は「剣山系スノーピクニック」です。
四国・徳島には暖かいイメージがありますが、四国山地は本格的な雪山体験ができる南限でもあり、標高が上がっていくに従って冬の様相は雪国に変わります。雪の積もった剣山系の山々をスノーシューで歩く体験は、忘れられないものになるでしょう。天候次第では信じられない絶景と出会うことができるかも!

そのほかにも、本格的な「雪の剣山登山」や冬季限定の「秘境の坪尻駅ハイキング&谷のサウナ」など、多彩なツアーが揃っています。

雪のない時期には「剣山系&源流お任せハイキング」も。

つるぎ町の観光や道中の集落に寄り道したり、このあたりの山々に多い巨樹のもとを訪れるほか、ルートによっては牛尾さんたちが発見したとっておきのスポットへ向かうこともあるそうです。
源流の綺麗な水で淹れる“焚き火コーヒー”の味は、決して都会では味わえないもの。初心者でもしっかりハイキングのノウハウと楽しさを味わえるでしょう。

そして、夏の渓谷を楽しむ「リバートレッキング」も見逃せません。

実は2015年に瀬戸内Finderでも「穴吹川フロートキャニオニングツアー」をご紹介しているのですが、それも牛尾さんたちが企画したもの。
日本一の渓流と呼び声の高い穴吹川をはじめ、プロだからこそ知っている数々のポイントで、安全に楽しく滑り降りることができるはずです。

雄大な自然のなか、全力で楽しんだ後は、牛尾さんが淹れてくれる“焚き火コーヒー”が最高です。夏の暑い時期だったら、この写真のように川の浅瀬に浸かりながら飲むなんてことも。特注の手鍋で焙煎し、シェラカップに注がれた“焚き火コーヒー”は疲れも吹っ飛びます。

小さな子供から大人まで、幅広い世代に向けたツアーを用意している『Trip 四国の川の案内人』。2021年3月には事務所内のショップスペースを大きく拡大。
「サスティナブルでずっと使えるいいものをフィールドから」をテーマにセレクトしたアウトドア関連のツールを販売しているそうです。「これからは利便性をできるだけ廃して、手のかかる“人間の無力さ”を体感できるツアーもやってみたいですね」と笑う牛尾さん。

家にいながらにしてインターネットでさまざまな情報が得られる今、五感をフル活用するアウトドアの経験は大いに注目されています。あなたも山や海との付き合い方を学びながら、少人数で四国・徳島の素晴らしい自然と文化を満喫してみませんか。きっと新たな発見があるに違いありません。


Trip 四国の川の案内人
住所/徳島県美馬郡つるぎ町貞光字皆瀬川向122
電話/0883-68-8022
※各種ツアーに関してはお問い合わせください。
https://trip-yoshinogawa.com

瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志

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重藤 貴志

重藤 貴志

徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

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