胸がときめくカワイイ砥部焼!/スギウラ工房(愛媛県伊予郡砥部町)

江戸時代から続く愛媛県の『砥部焼』

つややかな白磁に藍色の呉須(ごす)が映える『砥部焼』。
その歴史は江戸時代から続き、愛媛県指定の無形文化財で、国の伝統工芸品にも指定されています。

産地の砥部町は愛媛県の真ん中あたり。
松山市の南に隣接し、町に入ると国道33号線の中央分離帯につぼ型の砥部焼のモニュメントが列をなす焼き物の町です。現在は100近い数の砥部焼の窯元があります。

 

変わらぬ伝統も新たな世界もそれぞれの魅力

町の高台に窯元が軒を並べる『陶里ヶ丘』で、『スギウラ工房』を訪ねました。
迎えてくれたのは杉浦綾さん。毎日の食卓を楽しく彩る器などを主に手がけています。

昔ながらの伝統的な砥部焼は、ぽってりと分厚くて大胆な絵柄というイメージですが、近年はさまざまな個性が光る新しいものもみられるようになりました。

杉浦さんが作る器にも、独自の感性が遺憾なく発揮されています。全体のフォルムも描かれた筆のタッチも独特の軽やかさがあり、硬く焼かれた磁器でありながら柔らかさを感じます。

黄色や赤の明るい色、描かれた鳥や人などのモチーフもかわいらしくて、眺めているだけで思わず笑顔に。

気持ちが伝わる絵のあたたかみ 

杉浦さんの絵は、定規で引いたようなキッチリした直線や円ではなく、手書きならではの揺れや不規則さを含んだ線。そこには確かに人の息遣いや手の温もりがあり、優しさが溢れ出してきます。

雲のような模様がふわふわ浮かんでいたり、小さな点や線がたくさん並んでいたり、日本古来の和柄とポップな雰囲気が同居していて、飽きることなく見入ってしまいます。

器の外側と内側に違った模様が施された器には「料理をする立場からすると、両側に模様があれば楽しいなと思って」と杉浦さん。同感です! 盛り付ける時も食べる時も、一層楽しく幸せな時間を過ごせそうです。

杉浦さんは、制作の全工程の中で一番好きな作業は絵付けだといいます。
絵付けの様子を見ると、筆運びは想像よりも遥かにスピーディーで、スイスイと軽快です。細かい線引きに見ているこちらが思わず息をつめてしまいましたが、当の杉浦さんは「話しながらでも平気ですよ」と笑顔。何も考えずにどんどん描けるのだとか。

「細かくびっしり描くことも、全く苦じゃないんです」と話す杉浦さんは、子どもの頃から源氏物語や着物の柄のような古いものが好きで、古典文様などを自分なりに崩したりしながら今の絵に行き着いたそう。

絵柄でどんどん埋め尽くされていくお皿を見ながら、杉浦さんの『好き』という気持ちがそのまま絵に反映されて、私たちに伝わっているのだなと思い至りました。

板からかたちづくられる器たち 

杉浦さんのもう一つの大きな個性は、その造形です。
砥部焼はろくろで成形するのが一般的ですが、杉浦さんはろくろを使わず、すべて『タタラ』と呼ばれる板状の土で作ります。タタラを丸く曲げて筒状にしたり、石膏で作った型に押し当てたりして、さまざまな形を作るのです。板の形状がベースということがよくわかる、パッチワークのような平たいお皿もあります。

自作の型を見せていただきました。曲線で雲のような形、ブロックを積み上げたような形など、杉浦さんらしさが垣間見えます。

厚みが抑えられているのも印象的です。杉浦さん曰く、「自分ならこれくらいが使いやすいかな」という厚さだそう。確かに、触れるのも恐る恐るというほど薄かったり、あまりにどっしり持ち重りがしすぎたりする食器だと、日常使いにすることをためらいそうですが、この厚みなら気軽に使えそうです。

「ずっとしまったままで使われないのは悲しい。自分の作るものがそうならないように、たくさん使ってもらえるように」という杉浦さんの言葉通り、日常の中でどんどん使いたいものです。

いつも暮らしと共にある、砥部焼の魅力 

改めて砥部焼の魅力を杉浦さんに尋ねてみました。
「やっぱり、民芸であることでしょうね」と杉浦さん。「人が使うことに特化していて、いつも人の生活に寄り添っています。骨の髄まで民芸。その精神が行き渡っていることが魅力ですね」。

とっても丈夫で食洗機も電子レンジもOKな砥部焼は、日常づかいにピッタリ。我が家でも日常的に愛用していますが、多少乱暴に扱っても気にならないほど丈夫です。使うほどにどんどん好きになり、暮らしの中にしっかり根を下ろしていることを日々実感します。

愛媛を訪れたらぜひお気に入りの砥部焼を見つけて、毎日使って愛を深めてくださいね。


スギウラ工房
住所/愛媛県伊予郡砥部町五本松885-7
電話/089-962-6608
https://sugiurakoubow.blogspot.com
Instagram @a.sugiurakoubow
※工房見学および工房での小売販売は行っていません。上記サイト掲載の「取扱店」にてお買い求めください。

瀬戸内Finderフォトライター 矢野智子

※感染症対策に配慮した上で撮影を実施しています。

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矢野 智子

矢野 智子

1970年、愛媛県今治市生まれ。松山市在住。 大学時代を京都で過ごした後愛媛に戻り、システムエンジニアとして年の半分以上は県外出張という旅人のような生活を20年近く続けました。 退職後、愛媛を紹介する本を友人と作ったことをきっかけに、自分の「夢」と愛媛の魅力を再発見。地元出版社で編集のイロハを学び、現在は自らを「ことばのデザイナー」と称しフリーで活動中。書く、作る、伝えることに力をそそいでいます。

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