グルメ・おみやげ

日本伝統の食が息づく、グルメな東播磨注目の5つの老舗

日本伝統の食が息づく、グルメな東播磨注目の5つの老舗

明石市、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町の3市2町、70万人以上が暮らす東播磨地域は瀬戸内海に面し、加古川流域に播州平野が広がる豊かな地域です。

東播磨地域には日本の食卓に欠かせない味を守り、地元の人に信頼され、その舌を満足させてきた生産者がいます。

①(有)高松清太夫老舗(加古川市)

代表的なのが、戦国時代に創業した(有)高松清太夫老舗です。創業以来400年余り、鶴林寺のそばで糀、味噌、甘酒を作り続け、江戸時代初めには姫路藩主池田輝政公から糀(こうじ)製造業取締役を命じられています。

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味噌を自宅で作る家庭が多かったときは、各家庭から持ち込まれる米を糀に育てて引き渡す“糀屋”としての役割が大きかったという老舗。

毎朝5時30分から270kgの米を蒸し、気温や湿度の変化を読み取り、経験を頼りに手作業で管理していくと、その漢字が示すとおり、米に白い花が咲いたような美しい糀が仕上がります。

特に甘酒用の糀は、独自製法で粒が口に残らない仕上がりなのだそう。

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味噌をお店で買うことが一般的になった今では、(有)高松清太夫老舗を『純生・天然醸造高松味噌』のメーカーとして知る人も増えています。

その味噌のもとになるのは、兵庫県産のお米を使った米糀と丸大豆と粗塩のみ。夏までには仕込みを終え、8ヶ月から1年ほど寝かせたものを出荷します。

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『純生・天然醸造高松味噌』は(有)高松清太夫老舗の事務所や近隣のスーパーで販売されているほか、加古川市内では給食に使われるなど、市民にとっては当たり前の懐かしい味です。
加古川名物『恵幸川(えこがわ)鍋』のベースに必ず使われ、『加古川ギュッとメシ』の牛肉の漬け込みタレとして選ばれることも多いのだとか。

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高松味噌が特別な味噌であることは、まず袋を開ければ分かります。米糀独特の深く、なんとも言えない甘い香りが鼻の奥を刺激するのです。定番のお味噌汁を作ると、どんな具を入れても格別の一杯になります。

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こだわりの原材料を持ち込んで、減塩味噌などの好みの味噌作りを毎年依頼する人も多く、高松さんはお客さんの嗜好を把握して調整しながらそれぞれの味噌を造っています。

無添加自然発酵のため、蔵と一般家庭はもちろん、蔵の中でどこに味噌を置いて寝かせるかによっても、その味や香りはまったく違うものになるのだそう。

400年という時を経ても、人々に支持され続ける安定したおいしさを提供するため、高松さんはその腕を磨き続けています。

②茨木酒造 来楽(明石市)

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明石市は古くから神戸の『灘』に対して『西灘』と呼ばれ、酒造りの条件が整った土地でした。

まず、『寺水』と呼ばれる名水と播磨平野の良質な米。瀬戸内の温暖な気候と、冬に西から吹く厳しい季節風は仕込みにも適しています。
造酒屋の数は江戸時代に徐々に増え、明治の最盛期には、明石に60を超える酒蔵が立ち並んでいました。

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江戸時代末期、1848年に魚住で創業した茨木酒造は、瀬戸川沿いに広大な敷地を持ち、明治期に建てられた精米所や蔵、大正期の瓶詰め場や洋館などの貴重な建築物が当時の面影を今に伝えています。

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大学で醸造学を学んだ9代目蔵元が杜氏になり、現在は蔵人と2人で仕込みを行っているという茨木酒造。大がかりな機械を入れず、米を洗う作業から手作業でおこないます。

人の目が届く範囲で、170年の伝統に基づく昔ながらの手造りを続けています。

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ひんやりとした蔵には、たくさんのタンクが並んでいます。タンク内で醪(もろみ)の発酵が始まると、シュワシュワ、プチプチとマグマのように炭酸ガスが発生します。タンクに入って約3週間で発酵は終了し、醪を搾る上槽、ろ過、火入れ(生原酒は除く)を経て日本酒はいよいよ瓶詰めされていきます。

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茨木酒造の代表銘柄『来楽』のなかでも、日常的に飲みやすいお酒が『来楽 純米吟醸』です。

これは市内の飲食店から寄せられた「地元の白身魚に合う」定番の良酒を求める声に応えて開発されました。麹米に山田錦、掛米に五百万石といういずれも兵庫県産の原料米を使った、キレの良さが印象的な仕上がりのお酒です。

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茨木さんは、酒造りにおいて、完成したお酒が食卓に上った先のことを意識しています。それは、「日本酒は日本食ならではの口中調味に向いている」から。口の中で、白いご飯に味のあるおかずを合わせて調味するように、日本酒を口に含み肴をつまんで調味することで、豊かな味わいが生まれます。

明石は、日本有数の豊かな漁場で育った魚が、水揚げ後すぐ市場に並ぶ町です。良い食べ物がある明石で地元の料理に寄り添った酒造りをすることで、食との立ち位置を考えながら互いに技術や質を高めていけると考えているのだそう。

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市内の酒蔵が6軒に減ってしまった今、酒蔵の存在が明石の豊かな食文化のひとつの根拠になることを願い、茨木酒造は高い技術を駆使したアイデアいっぱいのお酒を世に送り出しています。

魚住の夕日を見がてら、そんな地酒を買いに足を伸ばしてみてはいかがですか。

③キング醸造(加古郡稲美町)

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『日の出みりん』と料理酒のメーカーとして全国に知られるキング醸造は、稲美町で1900年(明治33年)に創業し、周囲にため池が広がる創業の地に現在も本社を置いています。

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主力商品の『日の出みりん』は創業翌年から『日の出白味淋』として販売を始めた超ロングセラー商品です。

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キング醸造が長年の企業活動を支える地元稲美町への恩返しとして企画し、稲美町の米農家さんの協力を仰いで開発したのが『稲美町産純米本みりん』です。

2017年秋の販売開始から、「1度使うと元のみりんに戻れない」と好評です。

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まず気が付くのは、琥珀のように輝く美しい色。原材料は稲美町内の契約農家さんが育てたもち米、米麹、そして醸造アルコールです。糖類などを加えない昔ながらの製法で、2ヶ月ほどの糖化・熟成期間を経ると、蒸したもち米由来の甘みが引き出され、深いコクが生まれます。

お酒が飲める人は、加熱調理しないでそのままなめてみると、まろやかな甘さに驚くはず。煮物に使えば味が均一によく染み、上品な甘みと旨味が加わって料理の腕が一段上がったような気さえします。これは、おすすめです。

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せっかく地元の稲美町でお米とみりんを作るからにはと、キング醸造では親子を対象にしたもち米の田植えや稲刈り体験、みりんの勉強会、料理教室もおこなっています。醸造調味料がより身近に感じられる取り組みですね。

④松井食品(加古郡播磨町)

日本の食卓には大豆製品も欠かせません。海に面した播磨町で、大正時代から続く大豆加工業を営む松井食品には、安心して食べられる豆腐や湯葉を求めるお客さんが次々とやってきます。

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特に人気が高いのは大豆の甘みを直に感じられるおぼろ豆腐や、濃厚豆乳に生湯葉が入った『とろ湯葉』です。

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ちょうどバブルが弾けた頃に、おいしくて体によい大豆製品を届けたいと一心発起したという松井社長は、製造過程で兵庫県産サチユタカを中心とする国産大豆のみを使用。消泡剤(大豆の加熱により自然に出る泡を消すために使われる食品添加物)は使っていません。凝固剤には、伊豆大島で古来の塩作りに取り組む生産者のにがりを選んでいます。

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同じ頃、丹波産黒大豆を使った湯葉づくりに挑戦したことをきっかけに、黒大豆の種皮の栄養価を知り、そのポテンシャルに驚いたのだそう。

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松井さんは丹波黒煮汁の生産を手始めに、丹波黒甘煮や丹波黒納豆の開発に次々と取り組み、健康志向の高い全国の人に兵庫県の恵みを届けています。大粒の黒豆納豆はごはんに乗せるよりも1粒ひと粒おつまみとしていただくのが最高です。

健康のためと肩肘張らず、まずは地域の上質なものを選んでみると食卓が豊かになりますね。

⑤西海醤油(明石市)

1868年(明治元年)に明石の海に面した魚住で創業した西海(にしうみ)醤油は、鮮度抜群の魚介類が豊富な町で、地域の食卓に欠かせない醤油を造ってきました。

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大豆と小麦がゆっくり旨味を醸し出す昔ながらの天然醸造濃口醤油のほかに、魚住で昔から親しまれており、定番だと言うのが菊印の濃口醤油。西海醤油のシンボルマークから『マルジュー醤油』とも呼ばれています。少し甘めに仕上げてあり、魚の煮付けに最適な醤油なのだそうです。

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日本の食環境の変化を受けて、近年は醤油屋ならではの新しい商品開発にも取り組んでいます。

特に、天然醸造醤油をベースに、鰹、昆布、椎茸の出汁、粉砕したエビ、地元特産の明石海苔などを合わせた『味付のり醤油』は、英国豪華客船・クイーンエリザベス号の食卓に上るなど、人気が高まっています。

キャップを開けると磯の香りがふわっと立ち上り、天然醸造醤油ならではの甘みに加えて海苔や出汁の旨味がぎゅっと詰まった、かなり濃厚な味わいです。

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お刺身や冷奴にかけたり、パスタと和えたりすると、海苔が食材にからまって味がつきやすく、少しの量で贅沢な一品が完成します。卵焼きや卵かけご飯といった日常的な卵料理に使っても、かけるだけで素材の甘味が引き立ち、ワンランク上の味わいに。

一本常備しておくと、料理の幅が広がりそうです。

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西海醤油は地元のおいしい食材を「地元の醤油でよりおいしく」したいと『地産地醤』を掲げています。地域の特産品を購入するときは、地元の醤油も一緒に購入すると、地域の“舌”により近付けることでしょう。

いつも口にしている物の出どころや造り手の顔がわかると、料理や食事の時間を一層大切にする気持ちが生まれます。東播磨、ひいては日本の食卓を支えてきた伝統の味をどんどん食事に取り入れてみてくださいね。

※感染症対策に配慮した上で撮影を実施しています。

瀬戸内Finderフォトライター 堀まどか

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