子どもたちの健やかな成長を祈る遊山箱
桜の季節。あたたかな春の日、お花見がてらお弁当を持って、ピクニックにでも行ってみようか……という気分になるのは、いつの時代も同じではないでしょうか。
かつての徳島には、“遊山(ゆさん)”という風習がありました。
遊山とは「子どもたちがお弁当を持ってピクニックに出かける日」とでもいいましょうか、この風習の元となっているのは旧の桃の節句(現在の4月3日頃)に行われていた田の神さまを迎える行事。
山の近くに住む子は山へ、海の近くに住む子は海へ行き、子ども達が野山を駆けまわることで、神様も一緒に里へ降りて来てくれるといわれ、稲作を始める前の大切な習わしだったようです。
その遊山に欠かせないのが、子ども用の三段重ねのお弁当箱「遊山箱(ゆさんばこ)」。
お弁当には巻き寿司やういろう、煮染めが入っていて、空になるとまた詰めてもらえるブッフェ形式。おかわりは自分の家以外でもOKという、おおらかさが古き良き時代を物語ります。
小さな箱に木工職人が技をギュッと集めて
この風習は江戸時代から昭和の中頃まで行われていましたが、高度経済成長と共に失われ、今では徳島県を代表する工芸品として知られています。
徳島県は木工業が盛んな土地で、箪笥や鏡台、仏壇などの大型家具の生産が行われていました。遊山箱は、そうした木工職人たちが技術を磨くために作られたもの。釘などを使わずに組み上げる指物(さしもの)の技術は、この小さな遊山箱にもいかされています。
今も遊山箱を作り続けている『江淵鏡台店』の代表 江淵達人さん。創業約100年の老舗の木工所で、木地から塗装、仕立てまでの加工を一貫して行っているため、デザイナーや企業などから試作を頼まれることもしばしば。
和家具の修理やリメイクなど、思い入れのある家具の修理やオリジナル家具のオーダーも受け付けています。
絵付け体験も実施中!
自分だけのオリジナル遊山箱を作ろう♪
工場に併設されたギャラリーでは和箪笥や鏡台、遊山箱などが展示販売されていて、徳島の藍で染めた藍染め遊山箱もあり。その他、徳島独自の文化、遊山箱を多くの人に知ってもらおうと、遊山箱の絵付け体験も実施しています。所要時間は約4時間、対象は小学生以上、親子での参加も歓迎です。
現在では食べ物だけでなく、アクセサリーや小物入れとして活用するなど、思い思いの使い方で親しまれている遊山箱。徳島を訪れた際には、ぜひ手に取ってみてください。
江淵鏡台店
住所/徳島県徳島市末広1丁目1-40
電話/088-622-1314
絵付け体験/1名4,000円(税込) ※要予約(不定期開催)
https://www.ebuchi-kyoudai.com
瀬戸内Finderフォトライター 飛田 久美仔
※感染症対策に配慮した上で撮影を実施しています。
この記事が役に立ったらいいね!してね
関連キーワード
関連記事
この記事を取材したフォトライター
飛田 久美仔
飛田久美仔(とびたくみこ) 1973年生まれ。 徳島県在住。 徳島県の出版社で10年以上勤務し、月刊誌の編集長を務める傍ら、MOOKや企業のパンフレット、HPなどの制作に携わる。2014年12月よりフリーのライター兼編集者に。美味しいもの、楽しいこと、新しいものはいち早く知りたいタイプ。自分史や自費出版の編集、電子書籍なども気軽にご相談を! 2015年4月より地域おこし協力隊として、移住対策と地域資源の活用がライフワーク。
Hashtags
旬のキーワード