徳島の木の伝統や文化を楽しむ体験型美術館/徳島木のおもちゃ美術館(徳島県板野郡板野町)

ワクワクする「木育のこみち」を通って美術館へ

郷土の自然や文化と遊びが融合した交流型ミュージアムである、おもちゃ美術館。
家族を中心とした多世代の交流をはじめ、森林文化の継承と木育の促進、そして地域の人々が活躍できる機会を創造する施設として、全国各地で設立が進められています。

『徳島木のおもちゃ美術館』は、その一つとして2021年10月にオープンしました。実は「県立」のおもちゃ美術館としては、全国で初めての施設なんです。

『徳島木のおもちゃ美術館』がつくられたのは、地元の子どもたちが大好きな『あすたむらんど徳島』。
緑あふれる広い敷地内に「子ども科学館」や「プラネタリウム」などのほか、さまざまな遊具が設置されています。

正面入口から続く「木育のこみち」を歩いていくと、やがて美術館の建物が見えてきます。

エントランスを入ってびっくり! 大木を横倒しにしたようなカウンターに目を奪われました。思わず、手で撫でてみると、ツヤツヤしていて最高の触り心地です。

ちなみに、この右側にはオフィシャルショップがあり、安心して使用できる木のおもちゃとオリジナルグッズが販売されています。

エントランス脇にある靴箱&荷物入れで準備を整えたら「鎮守の杜トンネル」を抜けて「あさん農村舞台」と名付けられた最初のエリアへ。

ここは徳島に数多く残る農村舞台をモチーフにしており、一段上がったステージではおもちゃ学芸員と一緒に積み木で遊ぶことができます。

ときには伝統芸能の一つである阿波人形浄瑠璃の公演が行われるなど、実際に舞台としても活用されているそうですよ。

その横にあるつるし雛が美しい空間は「遊山箱(ゆさんばこ)」を使っておままごとができる場所。

「遊山箱」とは、徳島に伝わる子ども用の小さな手提げ重箱のこと。かつては春の節句には御馳走を詰めてもらい、野山へ遊びに行く習慣がありました。
杢張りと呼ばれる木工技術でつくられており、大正から昭和戦前頃までは、どこの家庭にもあったそう。

年に一度のハレの日に使う三段重ねの重箱は、そのサイズ感と美しい塗装が特徴とされており、近年では古き良き木製の生活道具として見直される動きも出てきています。

 
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徳島の名所を模したプレイスポットの数々

続いて訪れたのは「里山ひろば」です。

徳島市のシンボルである「眉山」を約300分の1スケールで再現しているほか、周囲には小さな卵型の木球で満たされた「吉野川」があります。
その総数は何と約5万個! 綺麗に磨かれていて痛くないため、この中を喜んで歩く子どもたちの姿も見られました。

ここでシークレットな情報を一つ。

実は「吉野川」を流れる卵型の木球の中には、同じくらいの大きさのドングリがこっそり隠されています。全部でおよそ100個しか存在しないため、頑張って探してみてください。
スタッフの方から教えてもらったのですが、意外と見つけるのは難しいと思います。

一番奥には「ゼロ・ウェイスト」宣言で知られる上勝町にある「樫原の棚田」を模したプレイフィールドがありました。

「里山ひろば」は、県内各地の象徴的な風景が県産材でつくられているため、子どもと一緒に遊びながら学ぶことができる点も、大きなポイントになっています。

 
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>ゴミ問題の解決を循環型経済と共同経済から学ぶ宿泊体験施設/上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY(徳島県勝浦郡上勝町)

子供から大人まで五感を通じて木の良さを体験!

県産材である「徳島すぎ」の巨木が印象的な「ごっこフォレスト」は『徳島木のおもちゃ美術館』で一番高さと広さのあるエリア。

階段を上がっていく上のフロアにはロープを編んでつくった「かずら橋」や「渦潮すべり台」があり、螺旋状に巨木の中を滑り降りることができるようになっています。

ふもとにある「山の仕事」は、木の伐採から搬出、加工といった一連の流れを、5つのカテゴリーで表現した木製のからくり。

山から切り出された木が赤ちゃんのためのおもちゃになるまでの物語が描かれており、親子で森の循環を楽しみながら知ることができるようになっています。

「収穫遊びごっこ」ができるコーナーでは、椎茸を栽培するためのほだ木があり、いろいろな大きさの椎茸が収穫できます。

なかにはとても巨大なものや、どう見ても毒キノコのような色のものも。そのほか、すだちや柚子、葡萄や筍なども穫れるため、徳島の豊かな山の恵みを体感してください。

「ごっこフォレスト」の奥にある「うだつのまち」は、美馬市脇町にある重要伝統的建造物群保存地区を模したデザインです。

ちゃんと2階に「うだつ」があるところが大きな見所。建物の内部には徳島の木工職人がつくった新しいおもちゃがあったり、昔懐かしいカラフルなけん玉やこまなどが展示されています。

 
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こちらの壁一面に飾られている「ジスイズヴィークル」は、ウォールナットやオーク、チェリーやアッシュなど、さまざまな樹種でつくられた小さな木のクルマ。
滑らかな曲線と鮮やかな木目は、洗練されたインテリアとしても人気を集めています。

「機械だから宿すことのできる美しさ」と「手仕事が生む柔らかさ」を掛け合わせたものづくりをモットーとする県内の小石製作所が手掛けた木のおもちゃです。

全国有数の森林県の魅力を発信するミュージアム

まだまだ『徳島木のおもちゃ美術館』には足を踏み入れていないエリアがあります。

こちらは約2,000名のおもちゃコンサルタントが厳選した世界中の良質なおもちゃが一堂に会する「グッド・トイひろば」。
どれも自由に遊ぶことができる上、おもちゃ学芸員が常駐しているため、すぐに質問可能です。

さまざまな工具が揃った「木育こうぼう」では、木を使ったさまざまな体験イベントを開催。

子どもの手をヒノキ板に写し取って切り抜く木の手型や数種類の県産材から好きな木を選んでストラップをつくるなど、楽しみながらものづくりに参加できる貴重な機会を生み出しています。

阿波人形浄瑠璃の木偶をはじめとする徳島の伝統工芸品が目を引く「企画展示ひろば」には、東京おもちゃ美術館の収蔵品の一部も展示。

独自の木工文化に支えられてきた徳島という土地の歴史の一端に触れることができます。

また、メインのフロアとはガラスによって分けられているのが、3歳未満の乳幼児とその保護者を対象とした「赤ちゃん木育ひろば」です。

小さな赤ちゃんたちでも安心して遊ぶことができる空間と遊具、大きめのおもちゃがいっぱい置いてあり、藍染めのタペストリーが印象的です。

いかがだったでしょうか。

ここで取り上げたところ以外にも「テーブルサッカーフィールド」や世界中のボードゲームが集められた「ゲームひろば」など、魅力的なエリアが数多くそろう『徳島木のおもちゃ美術館』。
昔から林業が盛んな徳島は、県土の約4分の3を森林が占める全国有数の“森林県”でもあります。使用している木材の約99パーセントが徳島県産材であり、「0歳から100歳まで楽しめる」というコンセプトどおり、幅広い世代が笑顔になる体験型ミュージアムに、ぜひ足を運んでみてください。

レアな“すだちくん”キーホルダーも待っています。

 
瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志


徳島木のおもちゃ美術館
住所/徳島県板野郡板野町那東字キビガ谷45-22
電話/088-672-1122(9:30~16:30)
定休日/水曜日(祝日の場合は営業、翌日休館)
料金/一日券(一般:800円、小中学生:300円、小学生未満は無料)
駐車場/あり(無料)
カード決済不可(オフィシャルショップは可)
https://www.tokushima-toymuseum.com

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重藤 貴志

重藤 貴志

徳島で暮らしているインタヴュアー/ライター/コピーライターです。屋号は“Signature”。新聞広告をはじめ、書籍や雑誌、ウェブサイトなど、幅広い媒体で仕事をしています。生まれ育ちは東京ですが、縁あって徳島に移り住みました。県外出身者の視点から見た徳島の魅力を中心に、瀬戸内のさまざまな情報を紹介していきます。 Twitter https://twitter.com/Siqoqtaq

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