酒造りとともに地域文化の輪を広げる若き杜氏の挑戦/茨木酒造(兵庫県明石市)

明石市の西部に位置する江井島から魚住にかけての一帯は、300年以上前から酒造りが行われてきたところ。
東の酒どころである神戸の『灘』に対して、この辺りは『西灘』と呼ばれてきました。
毎年、明石の酒蔵では12月頃になると、ふくよかな麹の香りを漂わせた新酒が誕生します。

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ちょうど酒蔵から新酒の便りが届く頃、今年2016年に創業168年目を迎えるという老舗の蔵元、茨木酒造を訪問しました。
地元明石では、古くから親しまれている人気の銘柄『来楽』でおなじみの蔵元です。
ちょうどこの日開催されていた新酒の会には、どんな酒に仕上がったのかと心待ちにしている人たちが大勢詰めかけていました。

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新酒の会の始まりは酒蔵見学から。9代目杜氏である”酒蔵王子”こと茨木幹人さんの蔵案内からスタートです。
平成20年に兵庫県登録有形文化財に指定されたという、江戸末期の創業当時からの酒蔵を見学。
伝統的な酒蔵は、夏場の日差しを遮るために南側は土壁になっており、
北側は冬の厳しい寒風が入りやすいという機能的な構造になっているそうです。

「この地区は古くから酒造好適米の産地として知られる播磨平野にあって、
井戸水や季節風に恵まれたことから良質の酒が生産されるようになり、最盛期には70軒もの酒蔵があったそうです。
それも今ではわずか6軒。
とはいえ、一つの市で6蔵を有しているのは、酒造りの盛んだった頃の名残りがあるからなんです」と茨木さん。

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同蔵は、兵庫県の代表的な酒造好適米である山田錦を中心に高品質な酒米を使った酒造りにこだわっています。
「山田錦のような酒米には、粒の真ん中に『心白(しんぱく)』と呼ばれる白く濁った部分があります。
山田錦の心白はデンプンが柔らかく結合しているから菌が繁殖しやすく、良質の麹ができるという特徴があります。
だから山田錦から作られるお酒がおいしくなるんですよ」。
ルーペを使って山田錦の心白を観察したり、茨木さんの丁寧な説明にうんとうなずきながら聞き入る参加者たち。

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山田錦に関する豆知識から酒造りの工程説明、蔵におかれている設備や機器の説明、果ては大吟醸、純米吟醸、本醸造といった特定名称酒の区分の仕方に至るまで、幅広い日本酒の雑学に触れることができる蔵見学。知らない間に日本酒通になってしまいます。
そして蔵見学の最後には、ボコボコと発酵中の仕込みタンクを上から覗き込んで、
麹のフレッシュな香りを楽しむという貴重な体験もできました。

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「この蔵の年間醸造量は、一升瓶換算すると25000本くらい。大手酒造メーカーの瓶詰ラインなら、一時間か2時間くらいで終わる量をこの蔵では半年かけて作っています」と茨木さん。
米洗い・麹造り・発酵管理はもちろん、瓶詰・ラベル貼りまで、全ての工程を杜氏と蔵人の手で行う小仕込みだからこそ、人の感性が行き届いた酒になるのです。
江戸時代から連綿と続く酒造りが、今もこうして私たちの前で繰り広げられていることに深い感動を覚えました。

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蔵見学の後は、楽しい新酒の試飲会にも参加。
まずは、2015年全国新酒鑑評会で金賞に輝いたという『来楽 大吟醸35』からいただきます。
普通酒の10倍以上の時間をかけて県内産の山田錦を35%まで削ったという贅沢なお酒は、まさに至福の味わい。
いくらでも飲めそうなすっきりとした飲みやすさと香りのよさが特徴です。
続いて、しゅわしゅわとした炭酸ガスが心地よく舌を刺激する『来楽 活性にごり酒』、月下美人やアベリアなどの自然の花から抽出した花酵母を使ったフルーティーな純米吟醸『花乃蔵』などもいただきました。

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銘柄名の『来楽』は、 孔子の論語「朋あり 遠方より来たる また楽しからずや」に由来するとか。
『来楽』はその名の通り、友と酒を酌み交わすことの喜びを教えてくれるお酒です。
料理と一緒に味わうことで、料理と酒が互いに引き立て合い、食事が格段に楽しくなり自然と会話も弾みます。

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茨木酒造では、新酒の時期に限らず酒蔵を地域に開放し、日本酒の魅力を発信。
地酒の直売所がある建物の奥に広々としたイベントスペースを設け、新酒会はもちろん蕎麦を楽しむ会を催したり、落語家を招いての『酒蔵寄席』なども開催しています。
また、日本酒を味わうだけでは物足りないという人のために、蔵周辺の自家水田を使い、酒米の田植えから稲刈り、仕込み、酒搾りまで本物の日本酒造りが体験できる『元旦仕込みの会』といった取り組みも行っているのだとか。

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「日本酒を通じて、地域の方や日本酒を愛する方とのつながりをもっと広げていきたい」と語る茨木さん。35歳、若き杜氏の挑戦から、まだまだ目が離せません。

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茨木酒造合名会社
所在地/兵庫県明石市魚住町西岡1377
電話/078-946-0061
営業時間/9:00~18:00
定休日/火曜日
アクセス/山陽電鉄魚住より南西へ徒歩7分
HP/http://rairaku.jp/

【有料新酒試飲会】

期間/11月~3月末までの土日祝(但し、12月を除く)
時間/開始13:00、終了15:00
料金/1人1,000円(新酒の試飲と粕汁・湯豆腐のセット)
※予算に合わせて料理を追加することもできます。
受付は10名以上から。要予約。詳細はお問い合わせください。

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