ル・コルドン・ブルー神戸校で人気のフランス人シェフ講師に、瀬戸内をイメージしたお料理を作ってもらった!

創立120年の伝統を誇るフランス料理の名門校ル・コルドン・ブルーの神戸校にお邪魔したこの日、料理シェフ講師を務めるジュリアン・ペクルさんが手に取ったのは、瀬戸内の食材としても親しまれる鯛とレモン。

「ちょっと何か作りましょうか」

いつもは生徒さんが学ぶ実演教室で、それにオリーブ、じゃがいも、トマト、ハーブを合わせて、瀬戸内と故郷の地中海をイメージしながらル・コルドン・ブルーらしいフランス料理に仕上げてくださいました。

完成したのがこちら。『鯛のブレゼ~トマト、ジャガイモ、エルブ・ド・プロヴァンス(プロバンス風ハーブ)を合わせて~』まさに芸術的な色彩、味の調和、さわやかな香りに酔ってしまいそう。

ジュリアンさんは2013年の『瀬戸内シェフズラボ』、2014年の『瀬戸内シェフズサミット』に参加し、多方面で活躍する料理人・シェフ・パティシエのみなさんと瀬戸内各地の優れた食材を発見したと言います。

特に、シェフズラボで気になったのは広島・大長(おおちょう)のレモン。フランス南部、ラングドック=ルシヨン地方のアレスという小さな町で生まれ、その後ニース近郊のマントンに移り住んだというジュリアンさん。マントンは毎年2月~3月に開かれるレモン祭りで有名で、広島ではたわわに実るかんきつ類を目にして子どもの頃の良い思い出が蘇ったそうです。

2014年秋に訪れた岡山・真鍋島でも瀬戸内の風景がコルシカ島など地中海地域を彷彿とさせるものだったと振り返ります。来日のきっかけをうかがうと、日本に興味があったため3か月間日本に滞在したとのこと。一般的な観光地巡りにとどまらず、「日本の農業を知りたい」と沖縄ではさつまいもやしいたけの収穫をボランティアで手伝い、帰国後日本で暮らしてみたいと思うようになったそうです。ル・コルドン・ブルーのパリ校で面接を受け、その3週間後には再び日本行の飛行機に乗っていました。

現在は合気道、剣道、日本語を学び、日本の文化に深い関心を寄せます。こちらの包丁は気に入ったので野菜など何を切るのにもよく使っているそうです。調理するときに一番身近な「友達のような存在」である道具を、丁寧に手入れする大切さを強調します。

この日は鯛に合わせる食材を観察し、すべて丸い形だからと薄い輪切りにしていきます。底にじゃがいもを敷き詰めたら、その他の色鮮やかな食材もバットに広げ、ハーブを散らします。これだけでも、なんとも美しい。

魚の骨やあら、白ワインなどを煮込んで作るフュメ(フランス料理の出汁)を加えたら、鯛のフィレを並べ、南仏カマルグのフルールド・セル(塩の花:天然塩田の水面に表れる高品質の結晶)で味付け。水を加え、オリーブオイルをたっぷりかけてオーブンへ。

鯛に火が通ったら取り出します。じゃがいもを柔らかくし、ソースの濃度を高めるため、残りは鍋に移して加熱。レモンの香りが詰まったソースは黄味がかり、ぐつぐつとおいしそうな音が教室に響きます。

料理で大切なことを1)配合すなわちレシピ、2)テクニック、3)愛情・解釈・意思であるとジュリアンさんは説明します。

ジュリアンさんが理解する瀬戸内料理の精神は、その土地の食材を生かした料理。シェフズラボでは、初めて知ったという広島・賀茂鶴酒造の酒粕を生かして、セルベルドカニュというフロマージュブランを使った料理に酒粕とみかんの酸味を加えたアレンジを披露しました。取材中にも味の組み合わせをいくつも思いつきます。「レモンの代わりにみかんを使うなら、じゃがいもとキャビアが合うかな」

生徒さんに馴染みのない土地の料理を教える難しさを感じながらも、「食材が使われる背景を説明しながら、時間はかかっても繰り返し伝えること」が重要だと言います。「それと、好奇心をかきたてるような伝え方」が大切。世界にまだ知られていない瀬戸内の豊かな食材も、個人の好奇心に訴えればその魅力が伝わるのではないかと話してくださいました。

「そんなに簡単に手に入ってはつまらないでしょう。自分から探しに行くことも大切です」

鯛のブレゼの出来上がりはというと、言うまでもなく完璧な美味しさ。レモンの酸味とほのかな苦みが口いっぱいに広がってトマトやじゃがいもの甘さが引き立ち、絶妙の火加減で仕上げられた鯛が弾けるような舌触りです。星付きレストランでシェフをされていたジュリアンさんのお料理がレストランで食べられないのはなんだかもったいないような気がしてしまうほど。

まるでル・コルドン・ブルー神戸校の体験教室のようになった午後。エネルギー、情熱、好奇心とユーモアにあふれ、素晴らしい技術と冷静な観察力を持つジュリアンさんに学べば、いつかこんな芸術のような一皿がふるまえるようになるかも。夢が膨らみます。


◆ル・コルドン・ブルー 神戸校
Webサイト/http://cordonbleu.edu/kobe/debut/jp
住所/兵庫県神戸市中央区播磨町45 ザ・フォーティフィフス6・7F
フリーダイヤル/0120-138-221

話し手:ル・コルドン・ブルー神戸校 シェフ講師 ジュリアン・ペクルさん
仏日通訳:ル・コルドン・ブルー神戸校 吉川幸希さん

瀬戸内Finderフォトライター 堀まどか

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堀 まどか

堀 まどか

堀 まどか/フォトライター 兵庫県生まれ、在住。実務翻訳、外国人起業家支援、通訳案内士(英語)、そしてフォトライター。 ネットマーケティングの外資系スタートアップで進行管理や顧客サポートを担当。 2011年から、フジサンケイビジネスアイ掲載の週刊コラム『ITビジネス最前線』を英日翻訳しています。 日常の風景や旅先で出会った人の表情など、心に触れるものを写真におさめています。瀬戸内のスポット、暮らしぶり、季節感、食を私目線で切り取ります。 写真ブログ http://riderv328.tumblr.com ツイッター https://twitter.com/Riderv328

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