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雲海を見るなら、現存12天守唯一の山城へ/備中松山城(岡山県高梁市)

雲海を見るなら、現存12天守唯一の山城へ/備中松山城(岡山県高梁市)

©️岡山県観光連盟

JR備中高梁(びっちゅうたかはし)駅から北方向に見える『臥牛山(がぎゅうざん)』、別名『おしろやま』。

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備中松山城は、その頂上付近に小さく見えています。江戸時代以前に建てられた天守が残る、全国に12ある貴重なお城のひとつです。

現存12天守のなかで山の地形を利用して築かれた『山城』はこの備中松山城ただひとつ。山城ならではの絶景も必見です。

天空の山城『備中松山城』を横から眺める

特に見応えがあるのが、雲海に浮かぶお城の姿。
備中松山城は雲海が見られるスポットとして人気なんです。

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雲海が発生するのは、9月下旬から4月上旬までの明け方から午前8時頃まで。前日の日中と当日の早朝の寒暖差が大きく、風がないなどの条件が整えば、濃い朝霧の間から備中松山城が浮かび上がる幻想的な風景に出会える可能性が高まります。

備中松山城と雲海との共演を観賞するには、防寒対策をして、お城が真横から見られるスポットへ向かうのがベストです。本丸から約1km離れたところに『雲海展望台(備中松山城展望台)』が設けられているので、展望デッキからシャッターチャンスを狙います。

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雲海は、行けば必ず見られるものではありません。
でも、たとえ雲海が発生しなくても、山の木立に囲まれて朝日を受ける備中松山城の姿はまさに絶景。紅葉の季節はこの美しさです。

備中松山城の起源は、鎌倉時代の1240年、地頭・秋庭重信(あきばしげのぶ)が築いた砦にさかのぼります。戦国時代までは戦を念頭に置いた難攻不落の城郭であり、江戸時代には城主が頻繁に変わりながらも、備中松山のシンボルであり続けました。

登城ハイキングで山城の防御を体感

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それでは、実際に備中松山城まで足を運んでみましょう。雲海展望台から天守までは徒歩でおよそ1時間かかります。アップダウンは少なく、途中に見事な吊り橋もあるので、おすすめです。

自動車の場合は、臥牛山8合目の『ふいご峠駐車場』へ。週末や繁忙期は車両規制があるので、5合目の『城まちステーション(城見橋公園)』で車を駐め、『ふいご峠駐車場』までの登城整理バス(有料シャトルバス)を利用します。公共交通機関を使うときは、JR備中高梁駅から乗り合いタクシーが便利です。

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『ふいご峠駐車場』から徒歩で約20分、700メートルで天守に到着です。

階段状に舗装されているところもあれば、ところどころ滑りやすい岩肌もあるので、歩きやすい靴を用意した方が良さそう。約20分の道のりとはいえ先の見えない山道ですから、100メートルごとに標識があって、着実に天守に近づいていることが分かるのは嬉しいですね。

眼下には、城下町が広がっています。急な西側の斜面が防御の要であったことが想像できます。

大河ドラマにも登場した圧倒的なスケール

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さらに登り進めると、そこに現れたのは、城内一の大きさを誇ったという大手門の跡。風化を免れた両脚の石垣と礎石が目の前にそそり立っています。自然の岩と人工の石垣が組み合わされており、特にスケールの大きさが感じられる見どころです。

山岳の地形を巧みに生かした備中松山城では、なかなか天守が見えません。直線では進むことができず、石垣の奥にまた石垣が続きます。

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この土塀の一部(写真奥)は江戸時代から残るもので、天守、二重櫓(やぐら)と並んで国の重要文化財に指定されています。

やっと見えた現存天守の内部へ

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見事な石垣を堪能しながら進むと、広々とした二の丸から、復元された櫓、本丸南御門の後方に現存天守が姿を現しました。ここで入城券を買って本丸へ。

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現存天守のなかでは高さ11メートルと最も小ぶりながら、自然の岩のうえに石垣で天守台を築き、その上に天守が建てられているため、堂々と大きく見えます。

晴れの日も曇りの日も変わらず美しい天守は1863年から残ると伝わりますが、明治・大正時代には荒れ放題になっていたのだとか。裏を返せば、不便な山頂にあったことが幸いして往時の姿が後世に残されたとも言えます。

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天守1階には籠城時に城主の居室になる『装束の間』や、天守内に切られることは珍しい囲炉裏があります。2階には神々を祀る御社壇(ごしゃだん)も残されていて、大変貴重です。

敵兵攻撃のために設けられた鉄砲狭間(ざま)から外を覗くと、こちらも現存する二重櫓が鮮やかに見えます。

旅の記念に猫城主『さんじゅーろー』と写真撮影

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登城記念スタンプを押すほかに、備中松山城に来たら忘れてはいけないのが猫城主『さんじゅーろー』に出会うこと。西日本豪雨災害の後に備中松山城に住み着くようになったオス猫で、2018年に城主に就任した人気者です。

のんびりとくつろぐお殿様との”謁見”は、雲海と同じくらいの癒やし効果があるかもしれません。山を登った先にある備中松山城ですから、帰りは下山が必要です。じゅうぶん注意して下山したら、備中の小京都・高梁の町並みをお楽しみに。引き続き、江戸時代の雰囲気が味わえますよ。

瀬戸内Finderフォトライター 堀まどか

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旅に出たとき一番気になるのはお天気ではないでしょうか。日本で一番雨の日が少ない、「晴れの国」岡山県。瀬戸内海特有の穏やかな気候は、農業や産業だけでなく岡山の文化も育ててきました。江戸時代からの町並みを残す美観地区、made in japanのジーンズが注目される繊維の街。鷲羽山から雄大に延びる瀬戸大橋や、牛窓から見下ろす瀬戸内海は息を飲むほどの美しさです。まさにハレの気分で岡山を歩いてみてください。