「その島には日本最大の海賊が住んでおり、そこに大きい城を構え多数の部下や地所や船舶を有し、強大な勢力を有していた」
1586年(安土桃山時代)、瀬戸内海を西へ航海していた宣教師ルイス・フロイスがある島に近づいた時のことを記した一文です。
みなさん、昔日本に海賊がいたことをご存知でしょうか?
瀬戸内のほぼ中央、芸予諸島を拠点に周辺航路を支配し、『日本最大の海賊』と称された『村上海賊』が、2016年に日本遺産として認定されました。
この絵は、村上海賊『村上景親』の肖像画です。
『海賊』と聞くと、船を襲い理不尽に金品を略奪する姿を想像する方が多いかもしれませんが、村上海賊は違います。
因島(広島県尾道市)、能島(愛媛県今治市)、来島(愛媛県今治市)に本拠を置き、領内のあちこちに城を築き関所を設け、大名や商人の警護をしたり、水先案内をするなど、海の安全を保障し、瀬戸内海の交易・流通の秩序を支えていました。
村上海賊が本拠を置いていた芸予諸島は、南北に島々が密集し、海はまるで運河のよう。一見穏やかに見える海ですが、日本三大潮流の来島海峡を筆頭に、最大10ノットの潮流があり、大潮の時には干潮・満潮の高低差が3m以上にもなる海の難所。
そんな芸予諸島には、村上海賊たちの足跡が今も色濃く残っています。
村上海賊の記憶をよみがえらせるストーリーは、42の文化遺産から構成されています。
そこで村上海賊の足跡をたどりながら、シリーズで42のストーリーをご紹介していきたいと思います。
村上海賊ストーリー構成文化財①大三島
村上海賊が本拠を置いた『芸予諸島』。
大三島はそのほぼ中央に位置し、古来より『神の島』と呼ばれていました。
この島には、村上海賊が氏神として崇めた大山祇神社があり、神社の後方にある神の山『鷲ヶ頭山』へ登ると、海賊が生きた時代から変わらない美しい海や島々を見ることができます。
海賊たちは、どんな思いでこの美しい海を見ていたのでしょう。
神々しい空気が漂う岩山、数々の歴史が刻まれた海、このまま600年前へタイムスリップしそうです。
村上海賊ストーリー構成文化財②大山祇神社
山を下り、次に向かうのは、伊予の国(愛媛県)一宮、大三島に鎮座する大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)。
村上海賊が氏神として崇めていた大山祇神社は、歴代の朝廷や武将など、歴史上に名前を残す多くの人たちがさまざまな思いを胸に訪れた神社で、国宝・重要文化財の指定をうけた日本の甲冑の多くが集まっています。もちろん、村上海賊の武将たちも多く訪れた場所です。
瀬戸内海の小さな島に鎮座する神社ですが、『日本総鎮守』として日本を守っているのです。
境内にある樹齢約2600年の大楠。
伝説では、今から約2600年前、ここに初めて神様を祀った乎千命(おちのみこと)が植えたと伝わります。
また本殿裏には、楠の原生林があり荘厳な雰囲気漂います。
楠は1年中緑の葉をつけ、枯れることがない常緑樹。
自然と人間の命は同じで、「繋がっている」と考えた昔の人たちは、枯れることのない、人間の命より何倍も何百倍も生きるこの木にとても神聖なもの(永遠の命)を感じていました。
村上海賊が生きた時代にもあった乎千命御手植の楠、今も「この楠と一緒に写真を撮ると、長生きができる」と伝わります。
海賊たちもこの楠に『永遠』を重ね合わせていたのかもしれません。
大山祇神社拝殿。
大山祇神社の拝殿とこの後ろにある本殿は、どちらも室町時代(1427年)に再建されたものと言われ、国の重要文化財に指定されています。
村上海賊は、とても高い教養や文化力があったと言います。
同社には、文安二年(1445年)より万治三年(1660年)の間に奉納された法楽連歌が原装のまま残っており、その中に村上海賊が自らの思いを詠み連ねたものがあります。
大山祇神社の周囲を流れる『御手洗川』の側にある『宝篋印塔(ほうきょういんとう)』。
この宝篋印塔は、鎌倉時代末期につくられた日本有数のもので、尾道の大工『念心(ねんしん)』の銘が刻まれています。
尾道と今治は当時から南北の交流があり、この宝篋印塔がつくられました。
この宝篋印塔はとても珍しい形をしていて、中央のものだけ他と形が違う所があります。
また中央に置かれた宝篋印塔は、日本にただ一つしかない形だと言われます。
間違い探しのようですが、両側に置かれたものとどこが違うかよ~く見てみてください。
写真だと少しわかりにくいので、ぜひ実際に行って見ていただきたいなと思いますが、答えは…
一番上にある丸い玉(宝珠)の下にある花のようなものを請花(うけばな)と言いますが、中央の請花だけが花が下を向いているのがおわかりでしょうか?
両サイドの宝篋印塔は、花が上を向いています。通常、請花は上を向いているそうなのですが、なぜか大山祇神社につくられたこの宝篋印塔だけが下を向いていて、研究者の間でも謎だと言われています。
瀬戸内海の小さな島に通常なら存在するはずもない、高度な技術でつくられた宝篋印塔です。
村上海賊台頭前夜の芸予諸島には、職人などを介した活発な南北交流があり、このことが村上海賊が芸予諸島で台頭した歴史的背景の一つであろうと考えられています。
この山は、大山祇神社の後方、大蛇の伝説が伝わる『安神山』。
ここで村上海賊も見たであろう神の山を見ながら、ちょっと一息。
ご当地グルメをご紹介します!
神社のすぐ隣にある、『せとうち茶屋』では、地元産の食材を使ったソフトクリームが人気。
私が食べたのは、期間限定の『デコポンソフト』です。
みかんの味がしっかりして、とっても美味しい♪
ちなみに、一番人気は『しまレモン』を使った『レモンソフト』。
大三島と言えば柑橘!
ぜひぜひ、ご賞味ください。
美味しいご当地グルメを味わいながら、村上海賊のストーリーを巡る旅。
次回は、日本最古の水軍城跡がある小さな島からスタートです!
大山祇神社
所在地/愛媛県今治市大三島町宮浦3327
電話/0897-82-0019
営業時間/17:00 閉門
定休日/無休
駐車場/無(最寄:藤公園市営駐車場・無料50台)
http://www.go-shimanami.jp/spot/?a=226
せとうち茶屋大三島
所在地/愛媛県今治市大三島町宮浦5119-2
電話/0897-82-0677
営業時間/9:00〜17:00
定休日/無休
駐車場/有
http://suigun.co.jp/setocya/index.html
瀬戸内Finderフォトライター 大橋麻輝
この記事が役に立ったらいいね!してね
関連キーワード
関連記事
Hashtags
旬のキーワード